【この記事の要点】
- 木の芽時(きのめどき)とは、冬から春へ移る2月下旬〜4月ごろを指す言葉です。
- この時期はイライラ・寝つきの悪さ・気分の落ち込みが重なりやすいと言われています。
- 医療機関では自律神経の乱れとして扱われるほか、甲状腺や貧血など別の原因がないかを確かめます。
- 東洋医学では、気のめぐりを調える「肝(かん)」が高ぶりやすい季節と考えられています。
- 監修:竹部 晃之 先生(いわい薬局/埼玉県さいたま市)/石田 友里 先生(くら石/静岡県掛川市)
「春になると、なぜか毎年しんどい」。
暖かくなって過ごしやすいはずなのに、気持ちが落ち着かない。
小さなことでイライラして、夜は目がさえてしまう。朝は起きられない。
こうした不調が春に集まる時期を、昔から「木の芽時(きのめどき)」と呼んできました。
この記事では、西洋医学の見方と東洋医学の見方を、順番に並べて整理します。
病院ではどう見るか|検査・体の中で起きていること・使われるお薬
体の中で何が起きているとされているか
春の不調は、多くの場合自律神経(じりつしんけい)の乱れとして説明されます。
自律神経とは、体温や心拍、眠りなどを自動で調整している神経のことです。
春は1日の寒暖差が大きく、気圧も変わりやすい季節にあたります。
加えて、日照時間が急に伸び、進学・異動など生活が変わる時期とも重なります。
環境の変化に体が追いつかず、調整の負担が増えると考えられています。
医療機関で行われる一般的な検査
病院では、まず似た症状が出る別の原因がないかを確かめることがあります。
よく行われるのは血液検査です。見ている項目の例を挙げます。
- 甲状腺ホルモン(TSH・FT4など):甲状腺の働きでも、動悸やイライラが出ることがあるため
- 貧血の項目(ヘモグロビン・フェリチン):だるさや集中力の低下と重なりやすいため
- 女性ホルモンの状態:年代によっては、月経周期や更年期の影響を確かめるため
これらに異常がなければ、自律神経の乱れとして経過を見る流れが一般的です。
使われるお薬
つらさの中心がどこにあるかによって、選ばれる薬は変わります。
眠れないことが中心なら睡眠を助ける薬、不安が強ければ抗不安薬が使われることがあります。
病院でも漢方薬が処方されることがあり、その場合は健康保険が使えます。
気分の落ち込みが長く続く場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
竹部 晃之 先生(いわい薬局/埼玉県さいたま市)のコラム
メンタルのご相談で多いのが、「病院に行くほどではない気がする」という言葉です。
ただ、春の不調は本人がいちばん理由を説明しにくい種類のものです。
私は、眠りと食欲の2つをまず伺うようにしています。ここが崩れていると土台が揺らぎます。
がんばって前向きになろうとせず、まず休める形をつくるところから始めてください。
東洋医学ではどう見るか|春は「肝」が高ぶる季節
東洋医学では、春の不調を「肝(かん)」の高ぶりとして捉えます。
ここでいう肝は、臓器の肝臓そのものではありません。
気(き=体を動かすエネルギー)のめぐりを調え、感情の高ぶりを収める働きを指します。
春は草木が一気に伸びる季節で、体の中の気も上へ向かいやすいと考えられています。
その勢いを肝が受け止めきれないと、上半身に症状が集まりやすいとされます。
頭に血がのぼる感じ、目の疲れ、肩や首のこわばりは、その代表例です。
春の不調を3つのタイプで比べる
| タイプ | 出やすい状態 | 東洋医学での見方 |
|---|---|---|
| 高ぶり型 | イライラ・目の充血・寝つけない | 気が上に向かい、下りてこない |
| 詰まり型 | ため息・のどのつかえ・お腹の張り | 気のめぐりが途中で滞っている |
| 消耗型 | 落ち込み・朝起きられない・食欲が出ない | 気や血(けつ)が足りず、支えきれない |
表のとおり、同じ「春がつらい」でも高ぶりと消耗では向きが逆になります。
気のめぐりの滞りに着目して柴胡(さいこ)を含む処方が、高ぶりに着目して抑肝散などが用いられることがあります。
ただし「この症状にはこれ」と1対1で決まるものではありません。
体質に合えば、変化を感じる方もいます。合わない場合は組み立てを見直していきます。
石田 友里 先生(くら石/静岡県掛川市)のコラム
春のご相談は、気づくと人生相談のようになることもあります。
お子さんの進学、ご自身の異動、ご家族の介護。春は環境が動く季節だからです。
体だけを見ても、その方が置かれている状況が分からないと、見立てがぶれてしまいます。
合気道でも、力を入れる前に姿勢を整えます。春の養生も、まず整える順番が大切です。
自宅でできるセルフケア・食養生
食べもの:酸味と香りを少しずつ
東洋医学では、春の肝には酸味と、香りのある野菜が合うとされています。
柑橘、酢の物、梅干し。香りなら春菊、セロリ、三つ葉、しそ、みょうがです。
たくさん食べる必要はありません。ひと品足す程度で構いません。
過ごし方:朝の光と、寝る前の30分
起きたらカーテンを開けて、外の光を目に入れてください。眠りのリズムの土台になります。
夜は、寝る30分前にスマートフォンを手放すだけでも変わることがあります。
息を吐く時間を長くする深呼吸も、気を下ろす助けになると考えられています。
春は予定を詰めすぎないことも、立派な養生のひとつです。
春のゆらぎセルフチェック
次の6つのうち、いくつあてはまるか数えてみてください。
- 毎年、同じ時期に同じような不調が出る
- 小さなことでイライラする日が増えた
- 布団に入っても、頭の中の考えごとが止まらない
- ため息が増えた、のどに何かつかえる感じがある
- 朝、起き上がるまでに時間がかかる
- 肩や首がこわばり、目が疲れやすい
3つ以上あてはまるなら、季節の影響を受けている可能性を考えてよいでしょう。
ただし、落ち込みや眠れない状態が2週間以上続くときは、医療機関にご相談ください。
この記事の監修
記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出
2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。
・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」
という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
よくある質問
木の芽時とは、いつごろのことですか?
一般に、冬から春へ移る2月下旬から4月ごろを指します。草木が芽吹く時期と重なることからこう呼ばれてきました。寒暖差が大きく、生活環境も変わりやすいため、心身のゆらぎが出やすい時期とされています。
春のイライラや不眠は、病院と漢方薬局のどちらに相談すべきですか?
落ち込みや不眠が2週間以上続く場合、日常生活に支障が出ている場合は、まず医療機関にご相談ください。検査で異常がなく、毎年同じ時期に繰り返すタイプの不調であれば、体質から見直す相談も選択肢になります。
病院の薬を飲みながら、漢方薬を使ってもいいですか?
併用している方は多くいます。その場合はお薬手帳を持参し、飲んでいる薬をすべて伝えてください。あわせて、漢方薬を使っていることをかかりつけの医師にも伝えておくと安心です。自己判断で病院の薬をやめないでください。
五月病とは何が違いますか?
木の芽時は2月下旬から4月、五月病は連休明けごろに話題になる不調で、時期がずれます。木の芽時は季節の変化そのもの、五月病は新しい環境での緊張が緩んだあとに出やすいと言われています。背景が重なることもあります。
春が来る前から準備できることはありますか?
毎年つらくなる方は、1月から2月のうちに相談を始める方もいます。体質を整えるという考え方は時間がかかるため、症状が出てからより、少し前から取りかかるほうがゆとりを持って進められます。
まとめ
- 木の芽時は2月下旬〜4月。寒暖差と環境の変化が重なり、心身がゆらぎやすい時期です。
- 病院では別の原因を先に確かめる。甲状腺・貧血・女性ホルモンなどを血液検査で見ます。
- 東洋医学では「肝」の高ぶり。気が上に向かい、上半身に症状が集まりやすくなります。
- タイプは高ぶり・詰まり・消耗の3つ。向きが逆なので、同じ対処では合わないことがあります。
相談先を探すときは
感情と体のつながりや、連休明けの不調については、次の記事もあわせてご覧ください。




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