【この記事の要点】
- 冬の膝・腰の痛みは、痛みの相談を多く受ける先生が入口です。膝は、膝の痛みを得意分野に挙げる先生もいます。
- 初回で伝えるのは、①痛む場所と動き ②病院の診断と痛み止めの使い方 ③運動量と食事の実際、の3つです。
- 腫れて熱をもつ・しびれ・力が入らない・排尿の異常・転んだあとの痛みは、漢方薬局より先に整形外科へ。
- よくある勘違いは「運動している」「牛乳でカルシウムは足りている」。相談現場では海藻類と骨ごと小魚をすすめることが多いです。
- 監修:前原 信太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/石田 友里 先生(漢方薬局 くら石・静岡県掛川市)
「寒くなってから、膝の痛みが増えてきた。病院では年齢のせいと言われたけれど」
「腰が痛くて、朝の立ち上がりがつらい。痛み止めは飲んでいる」
冬になると、漢方薬局には「冬になって痛みが増えてきた」という相談が増えます。多いのは膝と腰です。
結論から言うと、冬の膝・腰の痛みは、痛みの相談を多く受ける先生に相談するのが入口です。
この記事では、初回で伝える3つのことと、相談現場で多い勘違いを整理します。
病院ではどう見るか|整形外科の検査・よく言われる診断名・使われる薬
膝や腰の痛みで病院に行くと、整形外科で骨・関節・神経・炎症の有無を調べます。
レントゲン・MRI・血液検査で見ていること
レントゲンでは、骨の変形や関節のすき間の狭さ(膝の軟骨のすり減り)を見ます。
MRIでは、レントゲンに写らない椎間板・神経・半月板・筋肉の状態を見ます。
血液検査は、関節リウマチや痛風のように、関節に炎症を起こす病気を除外するために行われます。
腫れて熱をもつ、しびれる、足に力が入らない、排尿の調子がおかしい、転んだあとに痛い。こうしたときは、漢方薬局より先に整形外科へ。
よく言われる診断名|変形性膝関節症・椎間板ヘルニア・筋筋膜性腰痛
膝では、変形性膝関節症(関節の軟骨がすり減り、動き始めに痛みが出やすい状態)と言われることが多いです。
腰では、腰椎椎間板ヘルニア(背骨のクッションが飛び出して神経に触れる状態)がよく挙がります。
画像に大きな異常がないときは、筋筋膜性腰痛(筋肉やその膜が原因とされる腰痛)と説明されることもあります。
使われる薬|痛み止め・湿布・ヒアルロン酸注射
病院では、痛み止め(NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛薬。ロキソニンなど)や湿布が使われます。膝には、関節の中にヒアルロン酸を注射する方法もあります。
痛み止めは、痛みをしのいで動ける時間を作ってくれる、頼りになるお薬です。
一方で、長く使っていると慣れて、手応えが弱くなったと感じる方もいます。気をつけながら使うことが大切です。
眠れない相談と同じで、調子が上向いてきたら減らせるとよいとされます。減らすかどうかは、病院の先生と相談してください。
「年齢のせい」「ヘルニア」と言われた方へ
病院の診断は検査で分かった事実で、否定する必要はありません。
ただ、年齢のせいと言われても、年齢は関係ないこともあります。同じ年齢でも、痛む方と痛まない方がいるからです。
ヘルニアと言われても、実際に痛みを出しているのは腰の筋肉のこともあります。
漢方薬局では、診断名をそのまま受け取ったうえで、筋肉や体の使い方が関わっていないかも聞きます。
【前原 信太郎 先生からのアドバイス】
痛みの相談で初回に見ているのは、どの動きで痛むかと、その方の体の使い方です。
階段の下りで膝が痛むのか、椅子から立ち上がる瞬間に腰が痛むのか。動きが分かると、負担のかかり方が見えてきます。
「年齢のせい」で終わらせず、動きと使い方を一緒にたどるのが、相談の入口だと考えています。痛む動きは、その場で見せていただいて構いません。
東洋医学ではどう見るか|寒・湿・血の巡り・腎で見る冬の痛み
東洋医学では、冬に増える痛みを「冷え」「湿」「血の巡り」「腎」の4つの面から見ます。
寒(かん=体を冷やす外からの力)が入ると、体はこわばり、巡りが滞って痛みが出やすいとされています。冷えると悪化する痛みは、ここを疑います。
湿(しつ=体にたまった余分な水分)が重なると、重だるい痛みになり、雨や雪の前に強くなる方がいます。
血の巡りが滞る瘀血(おけつ)では、同じ場所がずきずきと痛み、夜に強くなるとされています。
腎(じん=東洋医学で骨や足腰の力に関わるとされる働き)が弱ると、腰や膝に力が入りにくく、冷えやすくなると考えられています。
同じ冬の膝の痛みでも、冷えると悪化するのか、天気で変わるのか、動き始めが痛いのかで見立てが変わります。
痛みの出方で見る|病院で見ることと漢方薬局が聞くことの比較表
| 痛みの出方 | 病院で見ること | 漢方薬局が聞くこと |
|---|---|---|
| 冷えると悪化する | レントゲンでの骨・関節の変化、血流 | 冷える場所と時間帯、温めると楽になるか |
| 動き始めが痛い(朝・立ち上がり・階段) | 関節の状態、MRIでの椎間板 | 痛む動きと体の使い方、運動量の実際 |
| 天気で変わる重だるい痛み | 炎症の有無(血液検査)、神経の圧迫 | 湿やむくみ、雨の前の体調 |
表のとおり、病院は画像や血液で「中で何が起きているか」を見ます。漢方薬局は「どんなときに痛むか」と暮らしの中身を聞きます。
【石田 友里 先生からのアドバイス】
膝の相談で「年齢のせい」と言われた方には、年齢は変えられないけれど、膝への負担のかけ方は変えられるとお伝えしています。
同じ年齢でも、痛みなく歩いている方はたくさんいます。年齢だけで片づけるのは早いと考えています。
冬は、冷えと運動不足が重なりやすい季節です。膝を温めることと、無理なく動くことを一緒に考えます。
冬の膝・腰の痛みの相談で初回に伝える3つのこと
漢方薬局の初回相談で聞かれるのは、次の3つです。
1. どこが・いつから・どんな動きで痛むか
まず、膝か腰か、両方か。そして「冬になって増えた」のか、前からあって冬に強くなったのかを伝えます。
朝か夕方か、階段か立ち上がりか、歩き始めか座っているときか。痛む動きが分かるほど、見立てが進みます。
冷えると悪化する、雨や雪の前に重くなる、温めると楽になる。天気との関係もそのまま伝えてください。
2. 病院の診断と痛み止めの使い方
病院で言われた診断名を、そのまま伝えてください。「変形性膝関節症」「ヘルニア」「年齢のせい」でも構いません。
飲んでいる痛み止めの名前と、1日に何回、どのくらいの期間飲んでいるかも大切な情報です。湿布や注射も同じです。
長く使って手応えが変わったと感じるかも伝えてください。減らすかどうかは主治医と決めることですが、その相談の材料を一緒に整えられます。
3. 運動量と食事の実際
「運動している」の中身を、週に何回・1回何分で伝えてください。実際の運動量が思ったより少ないことは、相談現場でよくあります。
食事では、カルシウムを何でとっているかを聞かれます。牛乳だけに頼っていないかが一つの目安です。
冬の痛みの相談で多い勘違い|「運動している」「牛乳でカルシウム」
冬の膝・腰の相談では、2つの勘違いがよく見られます。
勘違い1:「運動しているんだけど」
「運動しているのに痛い」と話す方に運動量を聞くと、実はあまり運動していないことが多いのが、相談現場の実感です。
動かないと筋肉が落ち、膝や腰を支える力が弱まるとされています。思い込まず、まず回数と時間を数えてみてください。
勘違い2:「牛乳を飲んでいるからカルシウムはたっぷり」
「牛乳を毎日飲んでいる」と話す方も多くいます。ただ、牛乳だけで足りているとは言えないことが多いとされます。
相談現場ですすめることが多いのは、海藻類がいちばん、次に骨ごと食べられる小魚です。
わかめ・ひじき・昆布と、しらす・煮干しなどを、毎日の食事に少しずつ足す考え方です。牛乳をやめる必要はありません。
自宅でできるセルフケア・食養生
海藻と骨ごと小魚、温かい食事
毎日の食事に、海藻類と骨ごと食べられる小魚を一品足してみてください。みそ汁にわかめ、ご飯にしらす、で十分です。
冬は温かい食事を基本にします。冷たい飲み物や、サラダだけの食事が続くと、体が冷えやすいとされています。
※食材の性質は東洋医学の考え方で、感じ方には個人差があります。
膝・腰を冷やさない
膝掛けや腹巻き、レッグウォーマーで、膝と腰まわりを冷やさないようにします。冷えは痛みを強める側とされています。
運動量を1週間、正直に記録する
「運動している」の中身を、1週間メモしてみてください。「月・散歩20分」「水・なし」のように、ないときは「なし」と書きます。
相談に行く前の準備ができているかセルフチェック
初回相談の前に、次の5項目を確かめてください。
- 病院で言われた診断名を、そのまま言える
- 飲んでいる痛み止めの名前と、1日の回数・使っている期間が分かる
- どの動きで痛むかを言える(朝・階段・立ち上がり・冷えたとき)
- 運動の実際を、週に何回・1回何分で答えられる
- カルシウムを何でとっているか、牛乳以外も含めて思い出せる
3つ以上当てはまれば、初回で伝えることはそろっています。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
冬になると膝や腰が痛くなるのはなぜですか?
東洋医学では、冷え(寒)で体がこわばり、巡りが滞ることで痛みが出やすいとされています。寒いと動く量が落ちることも関わると考えられています。
膝の痛みは漢方薬局で相談できますか?
相談できます。痛みの相談を多く受ける先生や、膝の痛みを得意分野に挙げる先生が目安です。
診断名があっても、痛み止めを飲んでいても相談できます。
年齢のせいと言われた膝の痛みは、もうどうにもなりませんか?
年齢は関係ないこともあるとされています。漢方薬局では、診断を否定せず、体の使い方や運動量、冷えも含めて聞きます。
痛み止めを飲みながら漢方薬局に相談してもいいですか?
かまいません。飲んでいる痛み止めの名前と、1日の回数を初回で伝えてください。
減らすかどうかは主治医と決めることで、漢方薬局はその材料を一緒に整える役割です。
カルシウムは牛乳で足りますか?
牛乳だけでは足りているとは言えないことが多いとされます。
相談現場では、海藻類と骨ごと食べられる小魚を足すことをすすめるのが一般的です。
まとめ
- 冬の膝・腰の痛みは、痛みの相談を多く受ける先生へ。膝は、膝の痛みを得意分野に挙げる先生もいます。
- 初回で伝えるのは、痛む場所と動き・診断と痛み止めの使い方・運動量と食事の実際の3つです。
- 「運動している」「牛乳でカルシウム」は勘違いが多い項目。海藻類と骨ごと小魚を足す考え方がすすめられています。
- 腫れて熱をもつ・しびれ・力が入らない・排尿の異常・転んだあとの痛みは、先に整形外科へ。
相談先を探すときは
漢方百名店では、痛みの相談を多く受ける先生のいる漢方薬局を、全国から紹介しています。
冬の関節の相談は、都市部より地方の漢方薬局に多い傾向があるとされます。掲載店には地方の店も多いので、関西のガイドも参考にしてください。


診断名と痛み止めの名前、1週間の運動の記録。この3つを持って、近くの漢方薬局で相談してみてください。
