煎じ薬で相談したい人の薬局の選び方|扱う店・扱わない店の見分け方と聞きたい4つのこと

【この記事の要点】

  • 煎じ薬(せんじぐすり=刻んだ生薬を煮出して飲む漢方薬)は、扱う漢方薬局と扱わない漢方薬局があります。
  • 病院や調剤薬局で出る漢方薬はほとんどがエキス剤(医療用漢方製剤)で、煎じ薬を保険で出す医療機関は限られています。
  • 相談で聞きたいことは4つ。煎じ薬の扱いの有無、受け取る形、日数と費用、忙しい日や旅行中の続け方です。
  • 煎じ薬の費用は「1日分の値段」で聞くと比べやすく、1週間5,000円前後からが一つの目安とされています。
  • 監修:林 泰太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/石田 友里 先生(漢方薬局 くら石・静岡県掛川市)

「煎じ薬で相談したいけれど、近所の漢方薬局で扱っているのか分からない」

「電話で何を聞けばいいのか分からず、予約の一歩が踏み出せない」

煎じ薬は、刻んだ生薬を煮出して飲む形の漢方薬です。扱う店と扱わない店があり、店によって渡し方も違います。

結論から言うと、予約の前に「煎じ薬を扱っていますか」と一言聞くだけで、店選びの迷いは大きく減ります。

この記事では、扱う店と扱わない店の見分け方と、相談で聞きたい4つのことを整理します。煎じ方そのものには触れません。

病院・調剤薬局ではどうなっているか|出てくる漢方薬はほぼエキス剤

病院で処方される漢方薬は、ほとんどがエキス剤(医療用漢方製剤)です。

エキス剤は、生薬を煮出した液を濃縮して乾かし、顆粒や錠剤にしたものです。保険の対象になっている処方は約150種類とされています。

調剤薬局は処方せんにもとづいて、メーカーの製品をそのまま渡します。生薬を刻んで組み合わせる場面は、ほとんどありません。

煎じ薬を保険で出す医療機関は限られる

生薬そのものにも保険の値段(薬価)が付いていて、医師が生薬を処方すること自体はできます。

ただ、生薬を在庫して量る手間がかかるため、煎じ薬を保険で出す医療機関や調剤薬局は、ごく一部にとどまるとされています。

病院で「煎じ薬は出せません」と言われても、珍しいことではありません。

保険の有無で変わること

保険のエキス剤は、処方せんに書かれた製品を、決まった量で受け取る形です。

漢方薬局の煎じ薬は保険の対象外で、価格は店ごとに決まります。そのぶん、生薬の種類や量を相談しながら細かく変えやすいとされています。

どちらが上という話ではありません。受け取り方と自由度が違う、と考えると選びやすくなります。

【林 泰太郎 先生からのアドバイス】

私の薬局では煎じ薬をお勧めしていて、煎じ薬を選んで帰られる方が6〜7割です。

煎じ薬を扱うには、生薬の在庫と、量って刻む手間がかかります。扱わない店があるのも自然なことです。

扱っているかどうかは、電話で聞けばすぐ分かります。遠慮せず、最初に聞いてみてください。

煎じ薬が生活に合うかどうかも、相談の中で一緒に考えます。

東洋医学ではどう見るか|煎じ薬は「一人ずつ組み合わせを変えやすい形」

東洋医学では、同じ症状でも、証(しょう=体質と今の状態を合わせた見立て)によって用いる生薬の組み合わせが変わると考えます。

煎じ薬は生薬を一つずつ量って組み合わせるため、その人に合わせて生薬を足したり引いたりしやすい形とされています。

たとえば、冷えが強い方には温める性質の生薬を少し増やす、といった調整が、相談のたびにできます。

エキス剤は処方の内容が決まっているため、調整は「別の処方に変える」「2種類を組み合わせる」が中心になります。

どちらが向くかは「体の状態」と「生活」で決まる

煎じ薬が合う方もいれば、エキス剤のほうが続けやすい方もいます。

大切なのは形の優劣ではなく、今の体の状態に合った内容を、続けられる形で受け取ることです。

粉薬(エキス剤)と煎じ薬の違いそのものは、記事の最後に紹介する別の記事で詳しく整理しています。

煎じ薬の相談で先生が見ているところ

煎じ薬を考えている方には、朝の時間、家族の反応、仕事の忙しさなど、生活の様子を聞くことが多いとされています。

体に合う内容を考えたうえで、「この生活なら煎じ薬で続けられるか」を一緒に見ているからです。

煎じ薬を扱う店の形の比較表|手間と相談で聞くこと

店で用意している形 自宅での手間 相談で聞くこと
刻み生薬(自分で煎じる) 毎日または数日ごとに煮出す手間がある 道具は要るか、何日分ずつ受け取るか
パック煎じ(1回分ずつ袋詰め) 量る手間がなく、煮出す手間だけ 1日分の値段、パックの保管のしかた
煎じ代行(店で煮出して液体で渡す) 自宅での手間はほとんどない 対応しているか、受け取りや郵送の頻度
エキス剤のみ(粉・錠剤) 手間はいちばん少ない 煎じ薬を希望するとき、紹介先はあるか

まとめると、自宅の手間が少ない形ほど、店がその形に対応しているかを先に聞く必要があるということです。

店によって用意している形は違います。表の右の列を、そのまま相談で聞いてみてください。

【石田 友里 先生からのアドバイス】

不妊や更年期の相談では、体の状態が月ごとに変わる方が多くいらっしゃいます。

そうしたとき、煎じ薬は生薬の足し引きで、変化に合わせやすい形だと感じています。

ただ、仕事や育児で忙しい方には、エキス剤やパックの形で続ける道も一緒に考えます。

「どの形なら続けられそうか」を、遠慮なく相談で話してください。

煎じ薬で相談するときに聞きたい4つのこと

ここからは、予約や初回の相談で聞いておきたいことを、順番に見ていきます。

1. 煎じ薬を扱っているか(扱わない店・エキス剤だけの店もある)

最初に聞きたいのは、煎じ薬を扱っているかどうかです。漢方薬局でも、エキス剤だけを扱う店は少なくありません。

ホームページに「煎じ薬」「生薬」「刻み」の言葉があるかが手がかりになります。

店内に生薬の引き出し(百味箪笥=ひゃくみだんす)や煎じ器の写真があれば、扱っている可能性が高いと考えられます。

はっきりしないときは、予約の電話やLINEで「煎じ薬での相談はできますか」と一言添えるのが早い方法です。

扱っていない店でも、相談そのものは受けられます。煎じ薬を強く希望する場合は、その希望を先に伝えておきます。

2. 受け取る形(刻み生薬・パック煎じ・煎じ器・煎じ代行)

煎じ薬を扱う店でも、渡し方は一つではありません。

刻んだ生薬をそのまま渡す店、1回分ずつパックにして渡す店、店で煮出して液体で渡す店があります。

自動で煮出す煎じ器を貸し出したり販売したりする店もあり、手間の感じ方は、この形で大きく変わります。

「どんな形で受け取れますか」と聞き、自分の生活に合う形があるかを確かめてください。

3. 日数と費用の聞き方(1日分の値段と、最初は何日分から始めるか)

費用は、「1日分でいくらですか」と聞くと、店どうしを比べやすくなります。

煎じ薬は生薬の種類や量で値段が変わります。1週間で5,000円前後から始まる店が多いとされています。

最初は1〜2週間分から始めて、体の様子を見てから日数を伸ばす店が多いとされています。

相談料がかかるか、生薬の内容が変わると値段がどう動くかも、合わせて聞いておくと迷いません。

4. 続け方の相談(忙しい日の切り替え・旅行中はエキス剤に替えられるか)

煎じ薬は毎日の手間があるため、続け方を先に相談しておくことが大切です。

忙しい日や出張・旅行のときに、同じ考え方のエキス剤に一時的に切り替えられるかを聞いておきます。

煎じ薬とエキス剤を組み合わせる形を用意している店もあり、対応は店ごとに違います。

続けられるか不安があれば、それも正直に伝えてください。形を変える提案が出ることもあります。

自宅でできる準備|相談の前に確かめたい生活のこと

煎じ薬を扱う店が見つかったら、相談の前に自宅の様子を少し見ておくと、話が早く進みます。

  • キッチンに立てる時間帯:朝か夜か、どちらに時間が取れるかを伝えると、受け取る形の相談がしやすい
  • 鍋・コンロ・保存の場所:道具や保管の相談につながる。無ければパックや代行の形を聞く
  • 家族の反応:煎じ薬の匂いは家の中に広がる。同居の家族が気にしないかも伝える
  • 月の予算のだいたいの線:1日分の値段を聞いたときに、その場で判断できる
  • 出張や旅行の予定:切り替えの相談を、最初の相談のときにできる

食養生の面では、相談の前から冷たい飲み物を減らし、温かい食事を意識しておくと、体の状態が伝わりやすくなるとされています。

煎じ薬が生活に合うか分かるセルフチェック

次の項目に、いくつ当てはまるか数えてみてください。

  • 毎日、だいたい同じ時間に薬を用意できる
  • 自宅のキッチンを、ほぼ毎日使っている
  • 薬の匂いや味に、強い抵抗はない
  • 1週間5,000円前後の費用を、数か月は続けられる
  • 出張や旅行は、月に1〜2回まで

3つ以上当てはまれば、煎じ薬を相談の候補に入れてよいと考えられます。

当てはまらない項目が多くても、パック煎じや煎じ代行で解決できることがあります。相談で伝えてみてください。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表

調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。

・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」

という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。

記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)

合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。

・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」

という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。

時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

煎じ薬はどこで買えますか?

生薬を扱う漢方薬局で、相談のうえ受け取るのが一般的です。ドラッグストアや調剤薬局では、ほとんど扱っていません。

電話やホームページで「煎じ薬を扱っているか」を確かめてから訪ねてください。

煎じ薬は保険で出してもらえますか?

保険で生薬を処方する医療機関はありますが、数は限られています。病院で出る漢方薬のほとんどはエキス剤です。

漢方薬局の煎じ薬は保険の対象外で、価格は店ごとに決まります。

煎じ薬は1日いくらくらいですか?

生薬の種類と量で変わりますが、1週間で5,000円前後からが一つの目安とされています。

「1日分でいくらか」と聞くと、店どうしを比べやすくなります。

煎じ薬を扱っていない漢方薬局もありますか?

あります。エキス剤だけを扱う漢方薬局は少なくありません。

煎じ薬を希望する場合は、予約のときに「煎じ薬での相談はできますか」と伝えてください。

煎じ薬とエキス剤は途中で切り替えられますか?

店によっては、忙しい時期や旅行中にエキス剤へ切り替える対応をしています。

対応は店ごとに違うので、最初の相談で聞いておくと迷いません。

まとめ

  • 煎じ薬は、扱う漢方薬局と扱わない漢方薬局があります。予約の前に「扱っていますか」と聞くのが早い方法です。
  • 病院や調剤薬局で出る漢方薬はほとんどがエキス剤で、煎じ薬を保険で出す医療機関は限られています。
  • 相談で聞きたいことは、扱いの有無・受け取る形・日数と費用・続け方の4つです。
  • 費用は「1日分の値段」で聞き、忙しい日や旅行中の切り替えも最初に相談しておきましょう。

相談先を探すときは

漢方百名店では、煎じ薬の相談を受けている店を含め、全国の漢方薬局を紹介しています。

粉薬と煎じ薬の違い、得意分野で選ぶ基準、費用の相場、飲み方のギモンもあわせて参考にしてください。

煎じ薬で相談したい方は、まず「煎じ薬を扱っていますか」の一言から、近くの漢方薬局に連絡してみてください。