【この記事の要点】
- 冷え性の相談は、婦人科が得意な先生が受けることが多い一方、自律神経の乱れから手先が冷える方もいます。
- 漢方薬局の初回で聞かれるのは、①冷える場所 ②冷える時間帯 ③のぼせの有無、の3つです。
- 冷えで病院が調べるのは甲状腺・貧血・血流の3つ。凍傷になっている場合は、漢方薬局より先に病院へ。
- よくある勘違いは飲み物です。コーヒーなど苦味のあるものは、東洋医学では体を冷やす側とされています。
- 監修:石田 友里 先生(くら石・静岡県掛川市)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)
「足先が氷みたいに冷たくて、布団に入っても眠れない」
「顔は熱いのに、足だけ冷たい。これも冷え性なの?」
冷えの相談は、冬になると漢方薬局で増えます。ただ、相談に来る方の数は、実はそれほど多くありません。
結論から言うと、冷えの相談は婦人科が得意な先生が受けることが多く、自律神経の相談から入る方もいます。
この記事では、冷えの出方で変わる相談の入口と、初回で伝えたい3つのことを整理します。
病院ではどう見るか|冷えで調べる検査と、先に受診したい状態
冷えそのものは病名ではないため、病院では「冷えの裏に別の病気がないか」を調べます。
代表的なのは、甲状腺・貧血・血流の3つです。
甲状腺機能と貧血の血液検査
甲状腺ホルモンが少ないと、体の熱を作る力が落ちて冷えやすくなるとされています。血液検査でTSHやFT4という値を見ます。
貧血では、血液が運ぶ酸素が減って手足が冷えることがあります。ヘモグロビンや、鉄の貯金にあたるフェリチンを調べます。
これらが原因なら、甲状腺ホルモン薬や鉄剤など、病院のお薬で対応する流れになります。
血流の検査|閉塞性動脈硬化症とレイノー現象
足の冷えに「歩くと足が痛み、休むと楽になる」が重なるときは、閉塞性動脈硬化症(足の動脈が細くなる病気)を疑います。
足首と腕の血圧を比べるABI検査で、足の血流を調べることがあります。
寒さで指先が白くなり、紫から赤へと色が変わるのはレイノー現象と呼ばれ、膠原病が隠れていることもあるとされています。
凍傷になっていたら、先に病院へ
皮膚の色が白や紫に変わって感覚がない、水ぶくれがあるときは凍傷の可能性があります。先に病院へ。
漢方薬局でも、凍傷まで進んでいる方には、相談より先に受診をおすすめしています。
検査で異常がなかった、または病院の薬を続けても冷えが残る。そこからが漢方薬局の出番です。
【石田 友里 先生からのアドバイス】
婦人科の相談で冷えを聞くときは、生理との関係を見ています。生理前に冷えが強くなるのか、生理中は楽なのか。
のぼせがあるかどうかも、見立てを分ける大事な手がかりです。顔は熱いのに足が冷たい方は少なくありません。
「冷えは体質だから」とあきらめず、どこが・いつ冷えるのかを、そのまま言葉にして伝えてください。
東洋医学ではどう見るか|陽虚・血虚・気滞、冷えの3つの見方
東洋医学では、冷えを「温める力」「血の量」「巡り」の3つの面から見ます。見立てが違えば、入口も変わります。
陽虚|温める力が足りない冷え
陽虚(ようきょ=体を温める力そのものが足りない状態)では、全身やお腹が冷え、朝が弱く、温めると楽になるのが特徴とされています。
体力や内臓の働きの相談を多く受ける先生が、見ることの多いタイプです。
血虚|末端まで届かない冷え
血虚(けっきょ=血が足りず、末端まで栄養が届きにくい状態)では、手足の先が冷え、顔色が白い、生理の量が少ないなどが重なります。
生理と一緒に冷えが動くタイプは、婦人科が得意な先生の相談室で多く見られます。
気滞|巡りが止まって手先が冷える
気滞(きたい=気の流れが滞った状態)では、緊張やストレスで手先がさっと冷たくなる方がいます。温める力はあるのに、末端まで届いていない状態です。
自律神経の乱れから手先が冷える方は、このタイプを考えることがあります。体の中心は温かいのに、指先だけ冷たいのが目印です。
冷えの入口で変わる相談先の比較表
| 相談の入口 | よくある冷えの出方 | 相談で伝えること |
|---|---|---|
| 婦人科が得意な先生 | 足先の冷え・冷えのぼせ。生理の前後で強さが変わる | 生理周期との関係、のぼせの有無、PMSや更年期の症状 |
| 自律神経・メンタルが得意な先生 | 緊張やストレスで手先が冷える。寝つきが悪い | 冷える場面(人前・仕事中)、眠り、気分の波 |
| 内臓・体力の相談が得意な先生 | お腹や全身が冷える。朝が弱く、下痢しやすい | 食欲・便通、疲れやすさ、温めると楽になるか |
表を見ると、同じ「冷え」でも、生理・ストレス・胃腸のどれと一緒に動くかで相談の入口が変わることが分かります。
【北浦 久貴 先生からのアドバイス】
自律神経の相談では、「手先が冷たい」という言葉がよく出てきます。緊張したとき、人前に出るとき、と場面が決まっていることが多いのです。
いつ・どんな場面で冷えるかが分かると、温めるだけでなく、巡りを整える方向で考えられます。
不安や眠りの相談と一緒に、冷えのことも話していただいて構いません。切り分けは私たちの仕事です。
冷えの相談で初回に伝える3つのこと
漢方薬局の初回相談で、冷えについて聞かれるのはこの3つです。先にメモしておくと、相談がスムーズに進みます。
1. 冷える場所|「ここが冷える」と指で示す
相談に来る方の多くは「ここが冷える」と、場所を言葉にします。足先・手先の冷えがいちばん多く、お腹や腰、全身という方もいます。
足先・手先の冷えか、お腹や全身の冷えかで、見立ての方向が変わります。
手先と足先の両方か、片方だけかも、そのまま伝えてください。左右で差があれば、それも手がかりです。
2. 冷える時間帯|朝・夕方・入浴後・寝るとき
一日のうち、いつ冷えが強いかを思い出してください。朝起きたとき、夕方の仕事終わり、お風呂から出たあと、布団に入ったとき。
入浴後にすぐ冷えるのか、寝るときだけ足が冷たいのかで、体の温め方の見方が違います。
季節による差も伝えたいところです。冬だけなのか、夏のクーラーでも冷えるのかは、相談の進め方に関わります。
3. のぼせの有無|顔は熱いのに足が冷たい
「冷え性」と聞くと全身が冷たいイメージですが、相談ではのぼせを伴う方がかなりいます。
顔は熱いのに足が冷たい、上半身は汗をかくのに足先は氷のよう。これが「冷えのぼせ」で、相談でよく出る訴えの一つです。
のぼせがあるかないかで、温める方向だけでよいのか、巡りを整える方向を考えるのかが分かれます。
「のぼせ」の自覚がなくても、顔がほてる・頭に汗をかく・夜に足だけ布団から出して寝る、があれば伝えてください。
冷えの相談で多い勘違い|「温かいコーヒーなら大丈夫」
冷えの相談で、いちばん多い勘違いは食べ物・飲み物です。中でも、コーヒーが好きな方が多く見られます。
「温かいコーヒーなら体が温まる」と思っている方が少なくありません。
ところが東洋医学では、コーヒーなど苦味のあるものは、体を冷やす側に働くとされています。温度より、味の性質で見る考え方です。
そのため、冷えの相談では苦味のある食材を控えてもらうことが多くあります。コーヒーのほか、緑茶、ゴーヤ、苦い葉野菜などです。
やめるかどうかは、相談の中で決めればよいことです。まずは毎日何を飲んでいるか、杯数まで含めて伝えることが先です。
自宅でできるセルフケア・食養生
相談の前後に、自宅でできることは2つあります。味の見直しと、冷えの記録です。
苦味を控え、温める側の食材を選ぶ
東洋医学では、食材を体を温める側と冷やす側に分けて考えます。苦味・生もの・冷たい飲み物は、冷やす側に入るとされています。
温める側とされるのは、しょうが、ねぎ、にら、シナモン、羊肉などです。加熱して食べるのが基本です。
いきなり全部を変えるより、一日のコーヒーを一杯減らして、白湯や温かいほうじ茶にするくらいから始めると続きます。
※食材の性質は東洋医学の考え方で、感じ方には個人差があります。
冷えの記録を3日つける
初回相談の前に、「場所・時間帯・のぼせ」の3つを3日間メモしてみてください。スマートフォンのメモで十分です。
書き方の例は「朝・足先・のぼせなし」「夜・足先と手先・顔ほてる」。これだけで、相談の中身がぐっと具体的になります。
飲んだものを横に書き添えると、飲み物の習慣も一緒に伝えられます。
相談に行く前の準備ができているかセルフチェック
初回相談の前に、次の5項目を確かめてください。
- 冷える場所を言葉にできる(足先・手先・お腹・全身のどこか)
- 冷えが強い時間帯が分かる(朝・夕方・入浴後・寝るとき)
- のぼせや顔のほてりがあるか、ないかを答えられる
- 毎日の飲み物と杯数を思い出せる(コーヒー・お茶・冷たい飲み物)
- 生理の周期や、ストレスを感じる場面との関係を考えてみた
3つ以上当てはまれば、初回の相談で伝えることはそろっています。
なお、皮膚の色が変わって感覚がない、歩くと足が痛むといったサインがあれば、先に病院の受診を優先してください。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
冷え性は漢方薬局で相談できますか?
相談できます。冷えの相談は冬に増え、婦人科が得意な先生が受けることが多いとされています。
自律神経やメンタルの相談を多く受ける先生のところで、手先の冷えを話す方もいます。
冷え性の相談は、婦人科と内科のどちらが得意な先生がいいですか?
冷えと一緒に動く症状で選びます。生理の前後で冷えが変わるなら婦人科、お腹や全身の冷えで疲れやすいなら内臓・体力の相談が得意な先生が目安です。
迷ったら、冷えのほかに一番困っている症状で選んでください。
冷えのぼせは冷え性ですか?
冷え性の一つの出方と考えられています。顔は熱いのに足が冷たい状態で、漢方薬局の相談ではよく出る訴えです。
「のぼせがある」と初回で伝えると、見立てが進みやすくなります。
コーヒーは冷え性に悪いですか?
東洋医学では、コーヒーなど苦味のあるものは体を冷やす側に働くとされています。温かいコーヒーでも同じ考え方です。
やめるかどうかは相談で決めればよいので、まずは一日の杯数を伝えてください。
冷え性で病院に行くべきなのはどんなときですか?
皮膚の色が変わって感覚がない(凍傷の可能性)、歩くと足が痛む、指先が白や紫に変わる、といったときは先に病院へ。
甲状腺や貧血の血液検査で、冷えの原因が見つかることもあります。
まとめ
- 冷えの相談は婦人科が得意な先生が受けることが多く、自律神経の相談から入る方もいます。
- 初回で伝えるのは、冷える場所・冷える時間帯・のぼせの有無の3つです。
- よくある勘違いは飲み物。コーヒーなど苦味のあるものは、東洋医学では体を冷やす側とされています。
- 凍傷の疑い、歩くと足が痛む、指先の色が変わるときは、先に病院で検査を受けてください。
相談先を探すときは
漢方百名店では、婦人科・自律神経・内臓の相談など、得意分野の違う全国の漢方薬局を紹介しています。
冷えに関わる体質のセルフチェックや、相談で何を話すかの準備メモも、あわせて参考にしてください。


「ここが冷える」の一言と、3日分のメモがあれば十分です。冬が深まる前に、近くの漢方薬局で相談してみてください。
