【この記事の要点】
- 眠れない相談は、睡眠薬を飲んだままでも漢方薬局で始められます。やめてから来る必要はありません。
- 相談先は、不安や自律神経などメンタルの相談を多く受けている先生のいる漢方薬局が向いています。
- 初回で伝えることは3つ。眠れ方のタイプ、飲んでいる睡眠薬と主治医のこと、日中の様子と考え方の癖です。
- 睡眠薬を自己判断で急にやめると、反動で眠れなくなることがあるとされています。減らし方は主治医と相談してください。
- 監修:北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)/竹部 晃之 先生(いわい薬局・埼玉県さいたま市)
「寝つきが悪くて、布団に入ってから1時間以上たってしまう」
「夢ばかり見て、起きたときに現実との境目が分からない」
眠れない悩みは、漢方薬局でよく受ける相談の一つです。
結論から言うと、睡眠薬を飲んだままでも、漢方の相談は始められます。やめてから来る必要はありません。
相談先は、メンタルの相談を多く受けている先生のいる漢方薬局が向いています。
この記事では、病院と漢方薬局の見方の違い、相談先の選び方、初回で伝える3つのことを整理します。
病院ではどう見るか|不眠の3つのタイプと睡眠薬の種類
病院では、まず「どう眠れないのか」を3つのタイプに分けて聞きます。
- 入眠困難(にゅうみんこんなん):布団に入っても、なかなか寝つけない
- 中途覚醒(ちゅうとかくせい):夜中に何度も目が覚める
- 早朝覚醒(そうちょうかくせい):起きたい時刻より早く目が覚め、そのあと眠れない
気分の落ち込みや強い不安が2週間以上続くときは、先に心療内科や精神科で相談するのが一般的な流れです。
病院で使われる睡眠薬の大まかな種類
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系は、脳の興奮を抑える受容体に働き、寝つきを助けるとされています。
オレキシン受容体拮抗薬は、目を覚ましておく物質(オレキシン)の働きをブロックして、眠りに向かわせるとされています。
メラトニン受容体作動薬は、体内時計に関わるホルモン(メラトニン)の受容体に働き、眠りのリズムを整える方向で使われます。
急にやめると「反動」が出ることがある
睡眠薬を長く飲んでいる方が自己判断で急にやめると、以前より眠れなくなる「反跳性不眠(はんちょうせいふみん)」が出ることがあるとされています。
不安が強まる、手が震えるなどの離脱症状(りだつしょうじょう=薬が急に抜けたときの反応)が出る方もいるとされます。
このため、減らすときは少しずつ、主治医と相談しながら進めるのが基本です。
漢方薬局でも、睡眠薬を飲んでいる方には、最初にこの「急にやめないでください」という話をします。
【北浦 久貴 先生からのアドバイス】
私は不安や自律神経の相談を多く受けていますが、その中で眠りの話は欠かせません。
寝つけないのか、夜中に目が覚めるのかで、体のどこを見るかが変わります。
夢をよく見るか、考え込みやすい性格かどうかも、あわせてうかがいます。
睡眠薬を飲んでいることは、隠さずそのまま教えてください。飲んだままでも相談は始められます。
東洋医学ではどう見るか|心(しん)・肝・血で眠りを見る
東洋医学では、眠りを「心(しん)」「肝(かん)」「血(けつ)」の3つの働きで見ます。
心(しん=東洋医学で、意識や精神の働きと眠りをつかさどるとされる臓)が落ち着いていると、自然に眠りに入れると考えます。
肝(かん=気の流れと感情の調整を担うとされる臓)は、ストレスや考えすぎで働きが乱れやすいとされます。
血(けつ=体と心を養う栄養)が足りないと、心が落ち着かず、眠りが浅くなったり夢が多くなったりすると考えます。
寝つけない人と、途中で目が覚める人では見方が変わる
寝つけないのか、夜中に目が覚めるのかで、漢方薬局が見るところは変わります。
布団に入っても頭が働いて寝つけない方は、気滞(きたい=気の流れが滞った状態)が肝に出ていると見ることが多いとされます。
夜中に目が覚める、夢が多くて眠りが浅い方は、血の不足や心の落ち着きのなさを考えることがあります。
相談先は「メンタルの相談を多く受ける先生」のいる漢方薬局へ
眠れない相談は、不安や自律神経、気分の落ち込みなど、メンタルの相談を多く受けている先生のいる漢方薬局が向いています。
眠りの悩みは、心配ごとや考え込む癖、日中の緊張とつながっていることが多いためです。
漢方薬局のホームページや紹介ページで、得意分野に「不安」「自律神経」「メンタル」などの言葉があるかを見てみてください。
眠れ方のタイプ別|病院で見ること・漢方薬局が聞くことの比較表
| 眠れ方のタイプ | 病院で見ること | 漢方薬局が聞くこと |
|---|---|---|
| 寝つけない | 入眠困難。生活リズム、カフェインの量 | 布団の中で考え込むか、体の緊張、肝の気の流れ |
| 夜中に目が覚める | 中途覚醒。トイレの回数、いびきや無呼吸の有無 | 目が覚める時刻、汗や動悸、血の不足のサイン |
| 夢が多く浅い | 熟眠感の不足。日中の眠気、気分の状態 | 夢の多さと印象、考え込む性格か、感覚派か理論派か |
まとめると、病院は「眠れないタイプと薬の選び方」、漢方薬局は「眠れない背景にある体と心の状態」を見ています。両方に相談してよい悩みです。
【竹部 晃之 先生からのアドバイス】
メンタルの相談で来られる方の中に、「睡眠薬をやめてからでないと相談できない」と思っている方が少なくありません。
やめなくても、相談は始められます。最初は睡眠薬と一緒に、体と心の状態を整えていきます。
落ち着いてきたら、減らし方は主治医の先生と相談してください。私たちはその途中を支える立ち位置です。
一人で薬をやめようとしないでください。それが一番お伝えしたいことです。
眠れない相談の初回で伝える3つのこと
初回の相談では、次の3つを伝えると、先生が見立てを立てやすくなります。
1. 眠れ方のタイプと、いつからか
寝つけないのか、途中で目が覚めるのか、夢が多くて浅いのかで、先生が見るところが変わります。
布団に入ってから寝つくまでの時間、夜中に目が覚める回数と時刻を、思い出せる範囲で伝えてください。
「夢を見て、現実との境目が分からない」という感じ方も、そのまま言葉にして大丈夫です。相談ではよく聞く表現です。
いつから眠れないのか、きっかけになった出来事があれば、それも手がかりになります。
2. 飲んでいる睡眠薬と、主治医のこと
飲んでいる薬の名前と量、飲み始めてからの期間を伝えてください。お薬手帳があれば、そのまま見せるのが一番早いです。
「できればやめたい」という気持ちがあるなら、それも伝えてください。ただし、やめなくても相談はできます。
通っている病院と主治医の先生のことも伝えておくと、減らすタイミングが来たときに話がつながりやすくなります。
3. 日中の様子と、考え方の癖
眠りは夜だけの問題ではありません。日中の眠気、だるさ、集中できるか、気分の浮き沈みを伝えてください。
夢をよく見るか、考え込む性格か、感覚派か理論派かも、漢方薬局では聞くことがあります。
頭の使い方の癖は、夜の寝つきや眠りの深さとつながると考えられています。
眠れない相談で多い勘違い|「睡眠薬をやめてから来なければ」
眠れない相談で漢方薬局に来る方の中に、「睡眠薬をやめなければ漢方の相談はできない」と思っている方が多くいます。
そんなことはありません。最初は睡眠薬と併用しながら相談を始めるのが一般的です。
むしろ、相談のために自己判断で薬をやめてしまうほうが、反動で眠れなくなり、体調を崩すおそれがあります。
ある程度落ち着いてきたら、減らし方は主治医と相談してもらいます。漢方薬局が「やめていい」と判断することはありません。
もう一つの勘違いは「漢方薬に替えれば睡眠薬がいらなくなる」という期待です。そう断定できるものではありません。
自宅でできるセルフケア|1週間の睡眠の記録と寝る前の習慣
相談に行く前に、1週間だけ眠りの記録をつけてみてください。先生に伝える材料になります。
- 布団に入った時刻と、寝ついたと思う時刻:おおよそで大丈夫
- 夜中に目が覚めた回数と時刻:トイレで起きたかどうかも
- 夢の有無と印象:怖い夢、仕事の夢、など一言で
- 日中の眠気とだるさ:昼寝をしたかも書く
- 寝る前に飲んだもの・したこと:お酒、カフェイン、スマホ
寝る前の習慣では、寝る1時間前から照明を落とし、スマホの画面から離れることが一般的にすすめられています。
食養生では、夕食は寝る3時間前までに、カフェインは午後の早い時間までが目安とされています。
相談に行く前の準備ができているかセルフチェック
次の5項目のうち、いくつ用意できているか確かめてください。
- お薬手帳、または飲んでいる睡眠薬の名前と量が分かるものがある
- 主治医の名前と、通っている病院の名前を言える
- 眠れ方のメモ(寝つけない/途中で目が覚める/夢が多い、いつから)がある
- 日中の様子(眠気・だるさ・気分)を一言で言える
- 「睡眠薬は自己判断でやめない」と決めている
3つ以上そろっていれば、初回の相談は十分に進みます。足りないものは、相談の場で先生と一緒に埋めていけます。
この記事の監修
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。
記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出
2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。
・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」
という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
睡眠薬を飲んでいても漢方薬局に相談できますか?
できます。飲んだままで相談を始めるのが一般的です。
やめる・減らすときは主治医と相談してください。漢方薬局が「やめていい」と決めることはありません。
漢方薬と睡眠薬は一緒に飲んでも大丈夫ですか?
多くの場合、併用しながら相談を進めますが、飲み合わせは薬の種類ごとに確かめる必要があります。
飲んでいる薬の名前を漢方薬局に伝え、主治医にも漢方薬を飲み始めたことを伝えてください。
眠れない相談は、どんな漢方薬局を選べばいいですか?
不安や自律神経など、メンタルの相談を多く受けている先生のいる店が向いています。
得意分野は、各店のホームページや漢方百名店の掲載店ページで確かめられます。
漢方の相談を始めたら、睡眠薬はやめられますか?
断定はできません。眠れない背景を整えながら、減らすかどうかは主治医が判断します。
「やめること」を目標にせず、まず眠りの土台を整えるという考え方です。
不眠で漢方薬局に行く前に、病院に行くべきですか?
気分の落ち込みや強い不安が2週間以上続くときは、先に心療内科や精神科に相談してください。
それ以外は、どちらから始めてもよい悩みです。両方に相談している方も多くいます。
まとめ
- 眠れない相談は、睡眠薬を飲んだままでも漢方薬局で始められます。
- 相談先は、メンタルの相談を多く受けている先生のいる漢方薬局が向いています。
- 初回で伝えるのは、眠れ方のタイプ・飲んでいる睡眠薬と主治医のこと・日中の様子と考え方の癖の3つです。
- 睡眠薬は自己判断で急にやめず、減らし方は主治医と相談してください。
相談先を探すときは
漢方百名店では、メンタルの相談を多く受けている先生のいる店を含め、全国の漢方薬局を紹介しています。
気滞のセルフチェック、病院の薬との付き合い方、相談の準備メモ、得意分野での選び方もあわせて参考にしてください。



眠れない夜が続いている方は、睡眠薬はそのままに、お薬手帳と眠れ方のメモを持って、まず近くの漢方薬局に相談してみてください。
