【この記事の要点】
- 漢方相談では、症状の名前を言えなくても大丈夫です。「困っている場面」を話せれば足りる場合が多いとされています。
- 相談前にそろえたい準備メモは3つ。①いつから ②どんなときに強くなるか ③一日の食事・睡眠・お通じです。
- お薬手帳・健康診断や検査の結果・基礎体温表があれば、そのまま持って行くと相談が早く進みます。
- 強い痛み、急な変化、体重の大きな増減があるときは、先に医療機関の受診をおすすめします。
- 監修:石田 友里 先生(くら石/静岡県掛川市)/前原 信太郎 先生(太陽堂/東京都新宿区)
「漢方薬局に行ってみたい。でも、何を話せばいいのか分からない」。
そう感じて、予約の一歩手前で止まってしまう方は少なくありません。
病院のように検査の数字があるわけでもなく、はっきりした病名もない。
だからこそ、何をどう説明すればいいのか分からなくなるのは自然なことです。
この記事では、相談の前に用意しておくと役立つ「3つの準備メモ」をまとめました。
「うまく説明できない」まま相談に行ってよい理由
結論から言えば、うまく説明できないままで大丈夫です。
漢方相談では、症状の名前より「困っている場面」のほうが手がかりになるとされています。
たとえば「めまい」という言葉ひとつでも、実際の困りごとは人によって違います。
朝起きた瞬間なのか、人混みの中なのか、生理の前だけなのか。
この「いつ・どこで」が分かると、東洋医学での見立てはぐっと絞りやすくなります。
漢方相談の時間が1時間前後になることが多いのも、この背景を一緒に探すためです。
つまり、言葉を整えるのは相談する側の仕事ではありません。
ただ、材料が手元にあると、その1時間の中身は濃くなりやすくなります。
相談前にそろえたい「3つの準備メモ」
用意するのはメモ用紙1枚で十分です。きれいにまとめる必要はありません。
準備メモ①:いつから、どう変わってきたか
最初に押さえたいのは「始まった時期」と「その前後にあった出来事」です。
引っ越し、転職、出産、家族の介護、感染症のあとの体調の変化などが目印になります。
「たぶん3年くらい前」「去年の夏の終わりごろ」といった大まかさで構いません。
増えているのか、減っているのか、波があるのか。その向きも書き添えておきます。
準備メモ②:どんなときに強くなり、どんなときに楽か
東洋医学では、「楽になる条件」も同じくらい大切な情報と考えられています。
温めると和らぐのか、冷やすと和らぐのか。動くと楽か、休むと楽か。
天気、時間帯、生理の周期、人と会った日かどうかも、よく手がかりになります。
「雨の前の日はだるい」「夕方から頭が重い」。この一言が見立てを分けることがあります。
準備メモ③:一日の食事・睡眠・お通じ
3つめは、体質を見るときの土台になる食事・睡眠・お通じです。
昨日一日、何を食べて何を飲んだか。思い出せる範囲でメモしておきます。
寝つく時刻、夜中に目が覚めるか、朝の目覚めの感じも書いておくと役立ちます。
お通じは、回数だけでなくかたさや形の変化まで分かると助けになります。
言いにくい内容ですが、相談の現場では日常的に確認している項目です。
準備メモがある相談と、ない相談の違い
| 場面 | メモがないとき | メモがあるとき |
|---|---|---|
| 最初の30分 | 思い出す作業に時間が流れやすい | 背景の確認まで進みやすい |
| 伝わりやすさ | 強い症状の話に寄りやすい | 軽い不調も拾ってもらいやすい |
| 2回目以降 | 変化の比較がしにくい | 前回との差を確かめやすい |
表のとおり、準備メモの価値は初回よりも2回目以降にはっきり出ます。
記録が残っていると、「どこがどう変わったか」を自分の言葉で確かめられるためです。
言葉にしなくていいこと、むしろ伝えたほうがいいこと
自分で病名を決めなくていい
調べた病名を無理に当てはめる必要はありません。かえって話が狭くなることがあります。
「自律神経の乱れだと思う」より、「夕方になると急に力が抜ける」のほうが伝わります。
「関係ないかも」と思ったことこそ伝える
手足の冷え、口の渇き、爪の割れ、汗のかき方。本題と無関係に見える情報も材料になります。
東洋医学は、体全体のつながりから状態を組み立てる考え方だからです。
生活の事情も、判断の材料になる
夜勤がある、小さな子どもがいる、通えるのは月1回まで。こうした事情も伝えて構いません。
続けられる形に合わせて考えていくため、生活の制約は隠さないほうが得です。
なお、強い痛み、急に始まった症状、体重の大きな増減があるときは事情が変わります。
その場合は、まず医療機関で調べてもらうことをおすすめします。
初回で全部を話しきれなくても大丈夫
「用意したのに、緊張して半分も話せなかった」。これもよくあることです。
そんなときは、メモをそのまま見せて構いません。読み上げる必要はありません。
漢方相談は、1回で完結するものではなく、何回か重ねて調整していく形が一般的です。
初回で言い忘れたことは、2回目に伝えれば十分に間に合います。
むしろ、飲み始めてから気づく変化のほうが、次の見直しでは大きな材料になります。
「思ったより眠れた」「夕方のだるさが軽い日があった」。その程度の実感で構いません。
同じメモ用紙に日付を足していくと、そのまま経過の記録になります。
スマートフォンのメモ帳でも同じことができます。使いやすいほうを選んでください。
相談前のセルフチェック(持ち物と準備)
出かける前に、次の7つを確かめてみてください。全部そろわなくても問題ありません。
- いちばん困っている場面を、ひとつ選んである
- 始まった時期と、その前後の出来事を書いた
- 強くなる条件・楽になる条件をメモした
- 昨日の食事と飲み物を思い出して書いた
- 睡眠とお通じの様子をメモした
- お薬手帳・サプリメントの一覧を用意した
- 健康診断や検査の結果、基礎体温表があれば持った
チェックが3つ以上ついていれば、相談の材料としては十分と考えてよいでしょう。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
よくある質問
漢方薬局では何を話せばいいですか?
いちばん困っている場面をひとつ話すだけで始められます。症状名が分からなくても構いません。始まった時期、強くなる条件、食事・睡眠・お通じの様子が加わると、より具体的に話が進みます。
相談に持って行くものはありますか?
お薬手帳と、飲んでいるサプリメントの一覧があると役立ちます。健康診断や病院の検査結果、女性の方は基礎体温表があれば、そのまま持参してください。無い場合でも相談はできます。
症状がいくつもあるときは、どれを話せばいいですか?
まず「いちばん困っている一つ」を先に伝えてください。そのうえで、残りを箇条書きで渡すと整理しやすくなります。関係が薄そうに見える不調も、体質を見るうえで手がかりになる場合が多いとされています。
話すのが苦手でも相談できますか?
できます。相談は質問に答えていく形で進むことが多く、自分から順序立てて説明する必要はありません。メモを見せながら話す、書いた紙をそのまま渡す、という方法もよく使われています。
病院で「異常なし」と言われた状態でも相談していいですか?
相談は可能です。検査で数値に表れない不調を、東洋医学では体全体のバランスから捉えます。ただし強い痛みや急な変化があるときは、先に医療機関で調べてもらうことをおすすめします。
まとめ
- 説明できないままで行ってよい。症状名より「困っている場面」が手がかりになります。
- 準備メモは3つ。いつから/強くなる条件と楽な条件/食事・睡眠・お通じ。
- 関係なさそうな不調ほど伝える。体全体のつながりから状態を組み立てるためです。
- 生活の事情も材料になる。続けられる形に合わせて考えていくためです。
相談先を探すときは
準備が整ったら、次は話をていねいに聞いてくれる相談先を選ぶ段階です。
相談の流れや、時間の使われ方は、次の記事でくわしく紹介しています。




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