胃もたれは胃だけの問題?|「どこが重いか」で変わる見方と、食事制限が的外れになる理由【薬剤師監修】

和紙風の背景に、左側に濃紺の縦帯があり、周囲を人参、生姜、シナモン、なつめなどの生薬のイラストが囲むデザイン。中央に「胃もたれは胃だけの問題?「どこが重いか」で変わる見方と、食事制限が的外れになる理由【薬剤師監修】」と書かれている。

【この記事の要点】

  • 相談では「いつから」「どこが重いか」「きっかけ」の3つをまず伺います。
  • 「胃が」と言いながら、押さえている場所が胃ではないことが少なくありません。
  • みぞおち以外に重さを感じる場合、胃以外のはたらきも含めて考えていきます。
  • 自己流の食事制限は的外れになることがあります。続くときは医療機関にもご相談ください。
  • 監修:竹部 晃之先生(いわい薬局・埼玉県さいたま市)/林 泰太郎先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)

「胃が重いんです」と言いながら、手はどこを押さえていますか

食欲の秋になると、胃の重さについての相談が増えてきます。

相談の場で、ひとつ興味深いことが起こります。

「胃がもたれて」とおっしゃりながら、手が当たっているのは胃ではない場所だったりするのです。

右のあばらの下だったり、もっと背中寄りだったり。ご本人は気づいていません。

この記事では、「胃もたれ=胃の問題」と決めてしまう前に確かめたいことを整理します。

相談では、この3つを伺います

1つ目:いつからか

この夏からなのか、何年も続いているのかで、見ていく方向が変わります。

季節の変わり目だけ出る方もいれば、一年を通して重い方もいらっしゃいます。

2つ目:どこが重いか

ここがいちばん大切な質問です。言葉ではなく、手で指してもらいます

「胃」という言葉は、おなかの上のほう全体を指す言い方として使われがちだからです。

3つ目:きっかけに心当たりがあるか

食後に強く出るのか、特定の食べ物でつらくなるのか、時間帯で違うのか。

「食後に特にひどい」「あれを食べたときにつらかった」という言葉が、よく出てきます。

重さを感じる場所を、表にしてみます

重さを感じる場所よく聞かれる言い方相談で目を向けるところ
みぞおち食後にもたれる、張る胃のはたらき、食べ物の停滞
右のあばらの下脂っこいものがつらい脂を処理する流れ
背中側・左寄り背中まで重い、鈍い消化全体の流れ

表を一言でまとめると、場所が変われば、見ていく先も変わるということです。

みぞおち以外を押さえている方には、胃のこと以外もあわせて伺っていきます。

もちろん、押さえた場所だけで何かが決まるわけではありません。

それでも、言葉ではなく体で示してもらうと、話の進み方が変わります

ご自宅でも、一度ゆっくり手を当てて確かめてみてください。

よくある誤解:胃だけとは限りません

おなかの上のほうには、胃のほかにもはたらいている場所があります。

脂の消化を助ける胆のうや、消化液を出す膵臓(すいぞう)も、近い場所にあります。

そのため「胃がもたれる」という感じ方の背景に、別のはたらきの低下が隠れていることがあります。

とくに脂っこいものでつらくなるという訴えは、その可能性を考える手がかりのひとつです。

もちろん、これは相談の場で決めつけられることではありません。

重さが長く続いている場合や、体重の減り方が気になる場合は、まず医療機関で調べていただくことをおすすめしています。

検査で異常が見つからなかったときは、その結果自体が相談の大事な材料になります。

市販の胃薬で変わらない、というとき

相談でよく伺うことのひとつに、「胃薬を試したかどうか」があります。

試して楽になった経験があるなら、それは胃のはたらきに関わる情報になります。

反対に、飲んでもあまり変わらなかったという経験も、同じくらい大切な情報です。

「変わらなかったので言いにくい」と黙ってしまう方がいますが、伝えてしまって大丈夫です。

そこから、胃以外のはたらきも含めて見ていく流れになることがあります。

検査で異常なしと言われたときの考え方は、こちらの記事にまとめています。

気をつけているのに変わらない、というとき

胃の重さが続く方の多くが、すでに何かしら食事に気をつけています。

ところが実際に伺ってみると、避けている食べ物が的外れなことが少なくありません

たまたま調子の悪い日に食べたものが、そのまま「悪者」になっている場合です。

その結果、本当につらくなる食べ方は続いたまま、食べられるものだけが減っていきます。

「何を食べたか」より「どう食べたか」

食べる速さ、量、時間帯、そのときの気持ち。ここが抜けていることがよくあります。

同じものでも、急いで食べた日と、ゆっくり食べた日では違うことがあります。

秋は、食欲だけが先に戻ってくることがあります

夏のあいだ、冷たいものが増えて食が細くなっていた方は多いはずです。

涼しくなると食欲は戻りますが、受け止める側の準備が追いつかないことがあります

「秋になってから急に重い」という方は、この時間差が関わっている場合があります。

夏の胃腸の疲れについては、こちらの記事でくわしく取り上げています。

まずは数日分の食事を、時間と一緒にメモしてみるところから始めるのがおすすめです。

自己流で品目を減らす前に、記録を持って相談したほうが近道になります。

気持ちと消化の関係については、こちらの記事でも取り上げています。

相談の前に、セルフチェック

答えられる項目が多いほど、相談で深いところまで進めます。

  • 重さを感じる場所を、手で指すことができる
  • いつごろから続いているか、だいたい答えられる
  • 食後どのくらいで出るか、意識したことがある
  • 脂っこいものでつらくなるかどうか、確かめた
  • 避けている食べ物が、なぜ悪者になったか説明できる
  • 食べる速さや時間帯も振り返った
  • 病院で検査を受けたかどうか、結果を伝えられる

5つ目が答えにくかった方は、その制限を一度見直す価値があります

この記事の監修

食べ方やダイエットの相談を多く受ける先生と、内臓の相談を多く受ける先生に監修いただきました。

記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出

2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。

・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」

という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表

調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。

・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」

という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。

よくある質問

胃もたれは、胃が弱っているということですか?

そうとは限りません。おなかの上のほうには胆のうや膵臓もあり、そのはたらきが背景にある場合もあります。相談ではまず、重さを感じる場所を手で指していただくところから始めます。

脂っこいものを避ければよいのでしょうか?

自己判断で減らす前に、記録を取ることをおすすめします。避けている食べ物が的外れで、食べられるものだけが減っていく方が少なくありません。数日分の食事を時間と一緒にメモして相談してみてください。

病院で異常なしと言われましたが、相談してよいですか?

問題ありません。検査で異常が見つからなかったという情報自体が、相談の材料になります。結果の紙をお持ちいただけると、話が進めやすくなります。

どんなときに、先に病院へ行くべきですか?

重さが長く続いている場合、体重の減り方が気になる場合、痛みが強い場合などは、まず医療機関にご相談ください。調べたうえで漢方の相談に進むほうが、遠回りになりません。

秋になると食べ過ぎてしまいます。相談の対象になりますか?

なります。食欲の変化も体質を見る手がかりのひとつです。食べ方の相談を多く受けている先生もいますので、遠慮なくお話しください。

まとめ:まず、どこが重いかを指してみる

「胃がもたれる」という言葉は、おなかの上のほう全体を指して使われがちです。

実際に手で指してみると、みぞおちではない場所だった、ということが起こります。

場所・いつから・きっかけ。この3つを持っていくだけで、相談の中身は変わります。

そして自己流の食事制限は、始める前に一度相談するほうが近道になります。

相談先を探すときは

漢方百名店では、全国の漢方相談店を、得意分野や相談の進め方とあわせてご紹介しています。