【この記事の要点】
- 同じ症状でも薬局によって違う漢方薬が出るのは、どちらかが間違っているからではありません。
- 漢方は「症状の名前」ではなく「体質」で薬を選ぶため、見る角度が変わると選ぶものも変わります。
- 先生ごとに得意分野が違うことも理由のひとつです。同じ頭痛でも、入口が変わります。
- だからこそ、「良い薬局」より「自分の悩みに近い相談先」を選ぶことに意味があります。
- 監修:林 泰太郎(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/北浦 久貴(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)
「前の薬局と違う薬を出された」と不安になる方へ
漢方薬局を変えたとき、こんな経験をした方はいませんか。
「同じ症状を話したのに、前の店と全然違う漢方薬が出てきた」
「じゃあ、どっちが正しいの?」と不安になりますよね。
先に結論をお伝えします。どちらかが間違っている、とは限りません。
全国の漢方相談店をつなぐ当サイトには、得意分野の異なる先生が集まっています。
同じ相談内容でも、先生によって見る場所が変わることは、めずらしくありません。
今回は、その仕組みと、あなたに合う相談先の決め方をお話しします。
理由1:漢方は「症状の名前」で薬を選んでいない
一番大きな理由がこれです。
東洋医学では、「頭痛だから、この薬」という選び方をしません。
見るのは「証(しょう)」です。証とは、今のあなたの体全体の状態を表す言葉です。
同じ頭痛でも、冷えのある人と、のぼせのある人では、まったく違う状態と考えます。
つまり「頭痛の薬」は存在せず、「その人の状態に合わせた薬」があるだけなのです。
病院のお薬とは、選び方の仕組みそのものが違います。
理由2:同じ症状でも、入口が変わる
では、体全体を見るとき、どこから見るのでしょうか。
ここに先生ごとの違いが出ます。同じ「頭痛」でも、入口はこれだけ変わります。
| 入口 | まず確かめること | 整えたいと考える場所 |
|---|---|---|
| 水の巡りから見る | 雨や台風の前に悪化するか。むくみはあるか | 体内の余分な水分 |
| 血の巡りから見る | 生理周期と連動するか。肩こりや目の下のクマはあるか | 血の流れ |
| 気の高ぶりから見る | ストレスがかかると出るか。眠りは浅いか | 自律神経のバランス |
| 冷えから見る | 温めると楽になるか。手足は冷たいか | 体を温める力 |
表のとおり、同じ頭痛に対して、少なくとも4つの入口があります。入口が違えば、選ぶ漢方薬も変わります。
たとえば水の巡りに着目したときは苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などが、気の高ぶりに着目したときは抑肝散(よくかんさん)などが用いられることがあります。
ただし「頭痛にはこの薬」という組み合わせではありません。あくまで状態を見たうえでの一例です。
理由3:先生ごとに、得意分野が違う
3つ目の理由が、漢方百名店だからこそお伝えできる話です。
漢方の先生には、それぞれ長年かけて深めてきた専門分野があります。
当サイトに掲載している先生方も、これだけ違います。
| 相談の多い分野 | 担当する先生(一例) |
|---|---|
| 呼吸器・のど・鼻/腎臓・肝臓/長く続く不調 | 林 泰太郎(太陽堂・東京都新宿区) |
| 不安・自律神経/アトピーなど皮膚全般 | 北浦 久貴(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市) |
| 体の痛み/皮膚/目/不妊・婦人科 | 前原 信太郎(太陽堂・東京都新宿区) |
| 呼吸器/体の痛み/皮膚/気持ちの不調 | 武田 隆芳(嶺耀堂・東京都新宿区) |
| 不妊・不育/更年期・PMS/めまい/膝の痛み | 石田 友里(くら石・静岡県掛川市) |
| メンタル/皮膚/痛み/体重の悩み | 竹部 晃之(いわい薬局・埼玉県さいたま市) |
表を見ると、同じ「漢方の先生」でも、見てきた景色がまったく違うことがわかります。
呼吸器の相談を長く受けてきた先生と、メンタルの相談を長く受けてきた先生。
同じ「眠れない」という相談でも、最初に思い浮かべる背景が違うのは自然なことです。
これは優劣ではありません。その先生が一番深く診られる角度から入っているということです。
病院で「専門は何ですか」と聞くのと、考え方としては同じです。
整形外科と皮膚科では、同じ人を診ても着目する場所が違います。漢方も同じです。
ただ漢方の場合、看板に「〇〇科」と書かれていません。だから外からは見えにくいのです。
全国の相談店を並べて見比べられることが、ポータルサイトの役目だと考えています。
▼ 相談先を決めるためのセルフチェック
あなたの悩みが、どの分野に近いかを確かめてみてください。
- 咳・痰・鼻が長く続く。季節の変わり目に呼吸が苦しい → 呼吸器の相談が多い先生へ
- 生理周期と体調が連動する。妊活中である → 婦人科の相談が多い先生へ
- 気持ちの浮き沈みが大きい。眠れない。動悸がする → メンタル・自律神経の相談が多い先生へ
- かゆみ・湿疹が続く。市販の塗り薬でしのいでいる → 皮膚の相談が多い先生へ
- 痛みが主な悩み。鎮痛剤(ロキソニンなど)が手放せない → 痛みの相談が多い先生へ
- 病院の検査では異常なしと言われた。原因がはっきりしない → 長く続く不調の相談が多い先生へ
複数当てはまっても大丈夫です。一番つらいものから選んでください。
「合わないかも」と思ったとき、どうするか
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「じゃあ今の薬局は、私に合っていないのでは」
結論から言うと、すぐに変える必要はありません。まずは伝えてみてください。
漢方は、飲みながら少しずつ調整していくものです。1回で決まるものではありません。
「変化を感じにくい」「この症状のほうが気になる」と正直に話すことで、見立てが変わることもあります。
それでも納得がいかないときに、はじめて相談先を変えるという順番で十分です。
相談先を変えるときの手順は、こちらの記事で詳しくまとめています。

よくある質問
薬局によって漢方薬が違うのは、どちらかが間違っているからですか?
そうとは限りません。漢方は症状の名前ではなく体全体の状態で選ぶため、見る角度が変わると選ぶものも変わります。どちらも筋の通った見立て、ということがよくあります。
前の薬局で出された漢方薬を、そのまま続けてもらえますか?
相談すれば対応してもらえることが多いです。前に飲んでいたものと、そのときの感じ方を伝えると話が早くなります。お薬手帳や現物をお持ちください。
自分の悩みが、どの先生の得意分野か分かりません。
一番つらい症状を基準に選んでください。複数の不調が重なっている場合も、相談の中で整理してもらえます。分からないまま問い合わせても問題ありません。
漢方が合っているかどうかは、どのくらいで分かりますか?
感じ方には個人差があります。急な不調では数時間から数日、体質から整えるものでは3か月ほどを目安に見ていくことが多いとされています。
病院にも通っています。漢方薬局に相談してもよいですか?
問題ありません。ただし飲み合わせの確認が要りますので、お薬手帳をお持ちください。検査で異常が見つかっている場合は、病院での治療を続けながらのご相談になります。
まとめ
同じ症状でも漢方薬が違うのは、漢方が「症状の名前」ではなく「体の状態」で選ぶものだからです。
そこに、先生ごとの得意分野の違いが重なります。
だからこそ、探すべきなのは「一番良い薬局」ではなく「自分の悩みに近い相談先」です。
お近くの相談先は、信頼できる漢方薬局リストから地域別にご覧いただけます。

この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。

