同じ症状でも漢方薬が違うのはなぜ?先生ごとに見立てが変わる理由と、自分に合う相談先の決め方【薬剤師監修】

質感のある和紙を背景に、伝統的な和漢生薬のイラスト(当帰、シャクヤク、葛根、ニンジンなど)と紺色の和柄模様の帯を左側に配した、和風で信頼感のあるデザインの解説サムネイル画像。 中央上部に大きな文字で「同じ症状でも漢方薬が違うのはなぜ?」と記載され、その上に小さく「\ 【薬剤師監修】 /」と監修情報が添えられている。 中央下部には「「見立て」が変わる理由と、自分に合う店の選び方」とサブタイトルが記載されている。 右側には、異なる先生の診断を示すアイコン(脳、人物、破線)と、自分に合うものを選ぶことを示すアイコン(ハート、人物、破線)、そして天秤のイラストがあり、それぞれのアイコンに「先生の見立て」「自分に合う」と小さなテキストが添えられている。

【この記事の要点】

  • 同じ症状でも薬局によって違う漢方薬が出るのは、どちらかが間違っているからではありません
  • 漢方は「症状の名前」ではなく「体質」で薬を選ぶため、見る角度が変わると選ぶものも変わります。
  • 先生ごとに得意分野が違うことも理由のひとつです。同じ頭痛でも、入口が変わります。
  • だからこそ、「良い薬局」より「自分の悩みに近い相談先」を選ぶことに意味があります。
  • 監修:林 泰太郎(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/北浦 久貴(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)

「前の薬局と違う薬を出された」と不安になる方へ

漢方薬局を変えたとき、こんな経験をした方はいませんか。

「同じ症状を話したのに、前の店と全然違う漢方薬が出てきた」

「じゃあ、どっちが正しいの?」と不安になりますよね。

先に結論をお伝えします。どちらかが間違っている、とは限りません。

全国の漢方相談店をつなぐ当サイトには、得意分野の異なる先生が集まっています。

同じ相談内容でも、先生によって見る場所が変わることは、めずらしくありません。

今回は、その仕組みと、あなたに合う相談先の決め方をお話しします。

理由1:漢方は「症状の名前」で薬を選んでいない

一番大きな理由がこれです。

東洋医学では、「頭痛だから、この薬」という選び方をしません

見るのは「証(しょう)」です。証とは、今のあなたの体全体の状態を表す言葉です。

同じ頭痛でも、冷えのある人と、のぼせのある人では、まったく違う状態と考えます。

つまり「頭痛の薬」は存在せず、「その人の状態に合わせた薬」があるだけなのです。

病院のお薬とは、選び方の仕組みそのものが違います。

理由2:同じ症状でも、入口が変わる

では、体全体を見るとき、どこから見るのでしょうか。

ここに先生ごとの違いが出ます。同じ「頭痛」でも、入口はこれだけ変わります。

入口まず確かめること整えたいと考える場所
水の巡りから見る雨や台風の前に悪化するか。むくみはあるか体内の余分な水分
血の巡りから見る生理周期と連動するか。肩こりや目の下のクマはあるか血の流れ
気の高ぶりから見るストレスがかかると出るか。眠りは浅いか自律神経のバランス
冷えから見る温めると楽になるか。手足は冷たいか体を温める力

表のとおり、同じ頭痛に対して、少なくとも4つの入口があります。入口が違えば、選ぶ漢方薬も変わります。

たとえば水の巡りに着目したときは苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などが、気の高ぶりに着目したときは抑肝散(よくかんさん)などが用いられることがあります。

ただし「頭痛にはこの薬」という組み合わせではありません。あくまで状態を見たうえでの一例です。

理由3:先生ごとに、得意分野が違う

3つ目の理由が、漢方百名店だからこそお伝えできる話です。

漢方の先生には、それぞれ長年かけて深めてきた専門分野があります。

当サイトに掲載している先生方も、これだけ違います。

相談の多い分野担当する先生(一例)
呼吸器・のど・鼻/腎臓・肝臓/長く続く不調林 泰太郎(太陽堂・東京都新宿区)
不安・自律神経/アトピーなど皮膚全般北浦 久貴(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)
体の痛み/皮膚/目/不妊・婦人科前原 信太郎(太陽堂・東京都新宿区)
呼吸器/体の痛み/皮膚/気持ちの不調武田 隆芳(嶺耀堂・東京都新宿区)
不妊・不育/更年期・PMS/めまい/膝の痛み石田 友里(くら石・静岡県掛川市)
メンタル/皮膚/痛み/体重の悩み竹部 晃之(いわい薬局・埼玉県さいたま市)

表を見ると、同じ「漢方の先生」でも、見てきた景色がまったく違うことがわかります。

呼吸器の相談を長く受けてきた先生と、メンタルの相談を長く受けてきた先生。

同じ「眠れない」という相談でも、最初に思い浮かべる背景が違うのは自然なことです。

これは優劣ではありません。その先生が一番深く診られる角度から入っているということです。

病院で「専門は何ですか」と聞くのと、考え方としては同じです。

整形外科と皮膚科では、同じ人を診ても着目する場所が違います。漢方も同じです。

ただ漢方の場合、看板に「〇〇科」と書かれていません。だから外からは見えにくいのです。

全国の相談店を並べて見比べられることが、ポータルサイトの役目だと考えています。

▼ 相談先を決めるためのセルフチェック

あなたの悩みが、どの分野に近いかを確かめてみてください。

  • 咳・痰・鼻が長く続く。季節の変わり目に呼吸が苦しい → 呼吸器の相談が多い先生へ
  • 生理周期と体調が連動する。妊活中である → 婦人科の相談が多い先生へ
  • 気持ちの浮き沈みが大きい。眠れない。動悸がする → メンタル・自律神経の相談が多い先生へ
  • かゆみ・湿疹が続く。市販の塗り薬でしのいでいる → 皮膚の相談が多い先生へ
  • 痛みが主な悩み。鎮痛剤(ロキソニンなど)が手放せない → 痛みの相談が多い先生へ
  • 病院の検査では異常なしと言われた。原因がはっきりしない → 長く続く不調の相談が多い先生へ

複数当てはまっても大丈夫です。一番つらいものから選んでください

「合わないかも」と思ったとき、どうするか

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。

「じゃあ今の薬局は、私に合っていないのでは」

結論から言うと、すぐに変える必要はありません。まずは伝えてみてください。

漢方は、飲みながら少しずつ調整していくものです。1回で決まるものではありません

「変化を感じにくい」「この症状のほうが気になる」と正直に話すことで、見立てが変わることもあります。

それでも納得がいかないときに、はじめて相談先を変えるという順番で十分です。

相談先を変えるときの手順は、こちらの記事で詳しくまとめています。

よくある質問

薬局によって漢方薬が違うのは、どちらかが間違っているからですか?

そうとは限りません。漢方は症状の名前ではなく体全体の状態で選ぶため、見る角度が変わると選ぶものも変わります。どちらも筋の通った見立て、ということがよくあります。

前の薬局で出された漢方薬を、そのまま続けてもらえますか?

相談すれば対応してもらえることが多いです。前に飲んでいたものと、そのときの感じ方を伝えると話が早くなります。お薬手帳や現物をお持ちください。

自分の悩みが、どの先生の得意分野か分かりません。

一番つらい症状を基準に選んでください。複数の不調が重なっている場合も、相談の中で整理してもらえます。分からないまま問い合わせても問題ありません。

漢方が合っているかどうかは、どのくらいで分かりますか?

感じ方には個人差があります。急な不調では数時間から数日、体質から整えるものでは3か月ほどを目安に見ていくことが多いとされています。

病院にも通っています。漢方薬局に相談してもよいですか?

問題ありません。ただし飲み合わせの確認が要りますので、お薬手帳をお持ちください。検査で異常が見つかっている場合は、病院での治療を続けながらのご相談になります。

まとめ

同じ症状でも漢方薬が違うのは、漢方が「症状の名前」ではなく「体の状態」で選ぶものだからです。

そこに、先生ごとの得意分野の違いが重なります。

だからこそ、探すべきなのは「一番良い薬局」ではなく「自分の悩みに近い相談先」です。

お近くの相談先は、信頼できる漢方薬局リストから地域別にご覧いただけます。


この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表

調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。

・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」

という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。

記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)

幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。

・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」

というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。

現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。