【この記事の要点】
- 妊娠中・授乳中でも、漢方薬局に相談することはできます。
- 生薬の中には、妊娠中は慎重に扱うとされるものがあるため、自己判断で飲まないことが大切です。
- 相談の前提は、産婦人科の主治医の方針です。漢方の相談をすることも主治医に伝えましょう。
- 伝えたいのは「週数・今のお薬・健診で言われたこと・困っている不調」の4つです。
- 監修:石田 友里 先生(くら石・静岡県掛川市)/前原 信太郎 先生(太陽堂・東京都新宿区)
つわりがつらい。足がむくむ。夜、なかなか眠れない。
妊娠中や授乳中は、小さな不調が次々に出てきやすい時期です。
でも「赤ちゃんに影響しないかな」と思うと、市販薬に手を伸ばすのもためらいますよね。
そこで「漢方なら大丈夫?」と考える方もいます。
結論から言うと、妊娠中・授乳中でも漢方薬局への相談はできます。
ただし、漢方薬なら何でもよいわけではありません。
この記事では、相談するときの注意点と、主治医と薬剤師に伝えたい4つのことをまとめます。
病院ではどう見るか|検査・病態・使われるお薬
妊娠中の体を見守る中心は、産婦人科の妊婦健診です。
健診では、お母さんと赤ちゃんの状態を、決まった間隔で確かめていきます。
- 血液検査:貧血や血糖値、感染症の有無などを調べます。
- 尿検査:たんぱく尿や尿糖から、腎臓の働きや妊娠糖尿病のサインを見ます。
- 血圧測定:妊娠高血圧症候群の早期発見につなげます。
- 超音波検査:赤ちゃんの育ち方や、胎盤・羊水の状態を見ます。
妊娠中は、ホルモンの変化で胃腸の動きがゆるやかになるとされています。
そのため、便秘や胸やけ、むくみが起こりやすくなります。
また、血液の量が増えて薄まるため、貧血になりやすいことも知られています。
お薬では、発熱や痛みにアセトアミノフェン(カロナールなど)が使われることが多いです。
貧血には鉄剤、便秘には酸化マグネシウムなど、状態に合わせて処方されます。
一方、市販薬の中には、妊娠中の使用に注意書きがあるものもあります。
授乳中も、お薬の一部は母乳に移るとされ、使えるかどうかは薬ごとに判断されます。
迷ったときは、自己判断をせず、まず主治医か薬剤師に確認するのが基本です。
国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」のように、専門の相談窓口もあります。
【石田 友里 先生からのアドバイス】
妊娠中の相談では、まず主治医の先生がどんな方針かをうかがいます。
健診では聞きそびれてしまう、つわりや眠り、気持ちの揺れも大切なお話です。
「こんな小さなことで」と遠慮しなくて大丈夫です。
漢方をすすめる前に、食事や休み方で整えられることがないかも一緒に考えます。
東洋医学ではどう見るか|体質タイプ別の考え方
東洋医学では、妊娠中は血(けつ)が赤ちゃんを育てるために集まる時期と考えます。
そのため、お母さんの体は、いつもと違う傾きが出やすいとされています。
- 血虚(けっきょ)タイプ:血が不足しがちな状態。立ちくらみ、肌の乾燥、眠りの浅さが目安です。
- 水滞(すいたい)タイプ:水の巡りが滞った状態。つわりの吐き気や、むくみが出やすいです。
- 気滞(きたい)タイプ:気(体を動かすエネルギー)の巡りが詰まった状態。不安やイライラが強まります。
- 脾虚(ひきょ)タイプ:胃腸が弱った状態。食欲が落ち、疲れやすくなります。
昔から、妊娠中の体を支える目的で用いられてきた処方もあります。
たとえば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが、体質に合わせて用いられることがあります。
一方で、妊娠中は慎重に扱うとされる生薬もあります。
大黄(だいおう)・桃仁(とうにん)・牡丹皮(ぼたんぴ)・紅花(こうか)などが、その例です。
「自然のものだから大丈夫」とは言い切れないため、専門家に相談して選ぶことが大切です。
比較表|産婦人科と漢方薬局の役割の違い
| 項目 | 産婦人科(主治医) | 漢方薬局 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 妊婦健診・お母さんと赤ちゃんの健康管理 | 体質や小さな不調の聞き取り |
| 検査 | 血液・尿・血圧・超音波など | 行わない(健診の結果を参考にする) |
| お薬 | 処方薬を出し、妊娠中に使えるかを判断する | 主治医の方針を前提に、漢方薬を相談する |
| 相談のしかた | 健診のたびに相談する | 主治医に伝えたうえで相談する |
表のとおり、主治医が「土台」、漢方薬局は「補う役」と考えると分かりやすくなります。
漢方薬局は検査をしないため、健診の結果や主治医の話を共有することが大切です。
【前原 信太郎 先生からのアドバイス】
妊娠中・授乳中の方には、まずお薬手帳を見せていただくようお願いしています。
調剤薬局で働いていたころから、飲み合わせの確認の大切さを感じてきました。
葉酸や鉄のサプリも、飲んでいるものはすべて教えてください。
漢方を使わないほうがよいと考えるときは、正直にそうお伝えします。
主治医と薬剤師に伝えたい4つのこと
相談をスムーズにするために、次の4つをメモにまとめておくと安心です。
同じメモを、主治医と漢方薬局の両方に見せるのがおすすめです。
1|妊娠週数と出産予定日(授乳中なら赤ちゃんの月齢)
妊娠の時期によって、気をつけたいことが変わるとされています。
授乳中の方は、赤ちゃんの月齢と、授乳の回数もあわせて伝えましょう。
2|今飲んでいるお薬・サプリのすべて
処方薬だけでなく、市販薬や葉酸・鉄などのサプリも含めて伝えます。
お薬手帳と、サプリの箱や写真を持っていくと確かめやすくなります。
3|妊婦健診で言われていること
「貧血気味」「血圧が少し高め」「むくみに注意」など、健診での指摘を伝えます。
母子手帳を持っていくと、記録を見ながら話せます。
4|いちばん困っている不調と、毎日のようす
つわり、むくみ、眠り、気分の落ち込みなど、困っている順に書き出します。
「いつから・どんなときに・どのくらい」まで書けると、体質を考える手がかりになります。
自宅でできるセルフケア・食養生
- 少しずつ、回数を分けて食べる:つわりの時期は、食べられるものを少量ずつで大丈夫です。
- お腹と足首を冷やさない:腹巻きや靴下で、体の中心と足元を温めましょう。
- 血を補う食材を意識する:小松菜・赤身の肉や魚・大豆製品などを取り入れましょう。
- 温かい汁物をとる:胃腸をいたわりながら、水分もとれます。
- 横になれる時間をつくる:疲れを感じたら、家事の手を止めて休むことも養生です。
食事の制限や体重の指導を受けている方は、主治医や助産師の指示を優先してください。
冷たい飲み物のとりすぎは、胃腸を冷やし、むくみにつながると考えられています。
相談前のセルフチェック
当てはまる項目が多いほど、漢方薬局に相談するときの準備が整っています。
- 妊娠週数(または赤ちゃんの月齢)をすぐ答えられる
- お薬手帳と、飲んでいるサプリが分かるものを用意した
- 妊婦健診で言われたことをメモした
- いちばん困っている不調と、その様子を書き出した
- 漢方の相談をすることを、主治医に伝えた(または伝える予定がある)
- 出血・強いお腹の張り・激しい頭痛などがあるときは、まず産婦人科に連絡すると決めている
最後の項目は特に大切です。急な体調の変化は、漢方薬局ではなく産婦人科へ連絡しましょう。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
妊娠中に漢方薬を飲んでも大丈夫ですか?
一概には言えません。生薬によっては妊娠中に慎重に扱うものもあるため、自己判断で飲まず、主治医と薬剤師に相談して決めることが大切です。
ドラッグストアの漢方薬を妊娠中に飲んでもいいですか?
市販の漢方薬の多くは、説明書に「妊婦または妊娠していると思われる人は相談すること」と書かれています。購入前に薬剤師へ相談しましょう。
授乳中でも漢方の相談はできますか?
できます。お薬の一部は母乳に移るとされているため、赤ちゃんの月齢や授乳の回数を伝えたうえで相談してください。
妊活中から漢方薬局に相談してもいいですか?
相談できます。妊娠が分かったら、その時点ですぐに相談先へ伝えましょう。飲んでいる漢方薬を続けるかどうかを見直すためです。
漢方薬局に行くことを、主治医に伝えたほうがいいですか?
はい、伝えておくと安心です。主治医の方針を知ったうえで相談できるので、お互いの情報がそろいやすくなります。
まとめ
- 妊娠中・授乳中でも、漢方薬局への相談はできます。
- 妊娠中に慎重に扱う生薬もあるため、自己判断で飲まないことが大切です。
- 相談の前提は主治医の方針。漢方の相談をすることも伝えておきましょう。
- 週数・今のお薬・健診で言われたこと・困っている不調の4つをメモにして持っていきましょう。
相談先を探すときは
漢方百名店では、婦人科や妊活の相談を多く受けている全国の漢方薬局を紹介しています。
相談の準備や、病院のお薬との併用の考え方もあわせて参考にしてください。




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