漢方薬局に親の代わりに相談できる?高齢の家族の漢方相談で先に伝えたい5つのこと【薬剤師監修】

和紙風の背景に、左側に濃紺の縦帯があり、周囲を人参、生姜、シナモン、なつめなどの生薬のイラストが囲むデザイン。中央に「漢方薬局に親の代わりに相談できる?高齢の家族の漢方相談で先に伝えたい5つのこと【薬剤師監修】」と書かれている。

【この記事の要点】

  • 高齢の親の漢方相談は、家族が代わりに行っても受け付けているお店があります。対応はお店ごとに違います。
  • 代わりに相談するときは「困りごと・薬・持病と検査・暮らし・本人の気持ち」の5つを先に伝えます。
  • 高齢の方は薬が多くなりがちです。お薬手帳の写真があると話が早く進みます。
  • ご本人が相談を望んでいるかどうかを、出かける前に確かめておくことが大切です。
  • 監修:林 泰太郎 先生(太陽堂/東京都新宿区)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局/大阪府泉佐野市)

「最近、母が眠れないと言っている」「父の食が細くなってきた」。

離れて暮らす親の不調に気づいても、本人は「年のせいだから」と相談に行きたがらない。そんな話はよく聞かれます。

そこで考えるのが、家族が代わりに漢方薬局へ相談できるのかということです。

結論から書くと、代わりの相談を受け付けているお店はあります。

ただし、家族が何を伝えられるかによって、相談の深さが大きく変わります。

この記事では、病院と東洋医学それぞれの見方を整理したうえで、家族が先に伝えたい5つのことをまとめます。

病院ではどう見るか|高齢の方の検査・体の変化・よく使われるお薬

病院では、年齢とともに変わる体の働きを、検査の数値で確かめながら薬を決めていきます。

よく行われるのが血液検査です。腎臓の働き(クレアチニン・eGFR)や肝臓の働き(AST・ALT)は、薬の量を決める手がかりになります。

あわせて、カリウムなどの電解質や骨密度を調べたり、もの忘れが気になる場合は認知機能の検査が行われたりします。

年齢を重ねると、腎臓や肝臓で薬を処理する力がゆるやかに落ち、薬が体に残りやすくなると考えられています。

そのため高齢の方では、若い頃と同じ量でも、ふらつきや眠気が出やすいとされています。

もう一つの特徴が、ポリファーマシー(飲む薬の種類が多くなり、体への負担が心配になる状態)です。

血圧の薬、睡眠薬、鎮痛薬(ロキソニンなど)、骨粗しょう症の薬と、診療科ごとに薬が増えていくことは珍しくありません。

病院でも漢方薬は処方されています。たとえば抑肝散(よくかんさん)などが、高齢の方に用いられることがあります。

病院の薬は、血圧や痛みといった目の前の症状や数値に狙いを定めて整えるのが得意です。

一方の漢方は、体質全体を見ていく考え方です。両方の良さを生かして併用を考える方もいます。

先生コラム① 林 泰太郎 先生「持病のある方ほど、薬の一覧が大事です」

心臓や腎臓、肝臓に持病のある方のご相談では、まず今飲んでいる薬をすべて教えていただきます。

漢方薬にも、甘草(かんぞう)のように、重なるとむくみや血圧に気をつけたい生薬があるためです。

ご家族が代わりに来られる場合は、お薬手帳と最近の血液検査の結果があると、とても助かります。

数値の流れが分かると、今の体の状態を想像しやすくなります。紙を撮った写真でも構いません。

東洋医学ではどう見るか|高齢の方の体質タイプ別の考え方

東洋医学では、年齢による変化を「悪いもの」とは捉えません。体の土台がゆるやかに移り変わる流れと考えます。

中心になるのが「腎(じん)」です。東洋医学の腎は、成長や老化、生命力の土台を担う働きを指します。

腎の力が弱まった状態を腎虚(じんきょ)と呼び、足腰の弱りや夜中のトイレなどと結びつけて考えます。

高齢の方の相談でよく見られるタイプを、4つに分けて整理します。

  • 腎虚タイプ:足腰が冷えて弱る、夜中に何度もトイレに起きる
  • 気虚(ききょ=体を動かすエネルギー不足)タイプ:食が細い、疲れやすい、声に力がない
  • 血虚(けっきょ=体を養う血の不足)タイプ:眠りが浅い、肌や髪が乾く、目が疲れる
  • 陰虚(いんきょ=体を潤す水分の不足)タイプ:口が乾く、手足がほてる、寝汗をかく

実際にはいくつかのタイプが重なっていることが多く、タイプを見極めるのは先生の役割です。

ご家族は、ふだんの様子をそのまま伝えることに集中してください。

たとえば腎虚に着目して八味地黄丸(はちみじおうがん)などが用いられることもあります。

ただし、同じ悩みでも体質によって選ばれる処方は変わります。

比較表|病院と漢方薬局、高齢の方の相談で見るところ

項目病院漢方薬局
主に見るもの検査の数値・画像・診断名体質・暮らしぶり・困りごとの全体
大事な情報血液検査や画像検査の結果食事・睡眠・トイレ・気持ちの様子
家族の代理原則は本人の受診が必要受け付けるお店もある(対応は店ごと)
得意なこと症状や数値に狙いを定めて整える体質全体から整える方向を考える

表のとおり、病院は数値から、漢方薬局は暮らしの様子から体を見ていきます。

家族が役に立てるのは、とくに暮らしの様子を伝える部分です。

先生コラム② 北浦 久貴 先生「ご本人の気持ちを置き去りにしない」

眠れない、なんとなく不安が続くといったご相談は、ご家族から先に届くことも少なくありません。

ただ、漢方は毎日飲むものです。ご本人が「飲んでみたい」と思えるかどうかで、続けやすさが変わります。

無理に勧めるより、できるところまで一緒に、無理なことはしなくていい。そんな気持ちで向き合っていただければと思います。

ご本人が迷っているときは、まず電話で少しお話ししてみる、という進め方もあります。

家族が代わりに相談するとき、先に伝えたい5つのこと

代わりに相談する日の前に、次の5つをメモにまとめておくと、短い時間でも話が深まります。

  • ①困りごと:いつから、どんなときに、どのくらい困っているか
  • ②飲んでいる薬とサプリ:お薬手帳の写真と、市販薬・サプリの名前
  • ③持病と最近の検査:通院中の病気と、健康診断や血液検査の結果
  • ④暮らしの様子:食事の量、眠り、便通、夜中のトイレの回数
  • ⑤本人の気持ち:相談することを本人が知っているか、望んでいるか

とくに④は、離れて暮らす家族ほど抜けやすい情報です。電話のついでに聞いておくと役立ちます。

お店によっては、舌の写真を求められたり、ご本人と電話やビデオで少し話したいと言われたりすることもあります。

⑤があいまいなまま進めると、漢方薬が届いても、飲まれないまま終わってしまうことがあります。

自宅でできるセルフケア・食養生

東洋医学では、高齢の方の養生は「足す」より「冷やさない・減らさない」が基本とされています。

  • 温かい汁物を1日1回:みそ汁やスープなら、食が細くても水分と栄養をとりやすくなります
  • 冷たい飲み物は常温に:胃腸を冷やしすぎないための工夫です
  • 日中に少し歩く:日の光を浴びると、夜の眠りのリズムが整いやすいとされています
  • 夕方以降の水分は控えめに:夜中のトイレが気になる方の工夫です。日中の水分は十分にとります

医師から水分や食事の指示が出ている方は、そちらを優先してください。

家族ができるのは、こうした工夫を一緒に楽しめる形で提案することです。

代わりに相談する前の準備セルフチェック

  • □ 本人の困りごとを「いつから・どんなときに」で説明できる
  • □ お薬手帳の写真を撮った
  • □ 市販薬やサプリの名前を控えた
  • □ 最近の健康診断や血液検査の結果がある
  • □ 食事・睡眠・便通・夜のトイレの様子を聞いた
  • □ 本人が相談することを知っていて、嫌がっていない
  • □ 相談店に、代わりの相談を受けているか電話で確かめた

チェックが付かない項目があっても大丈夫です。

分かる範囲で伝え、足りない分はお店と相談しながら補っていけます

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表

調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。

・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」

という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。

記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)

幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。

・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」

というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。

現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。

よくある質問

本人が行かなくても漢方薬局で相談できますか?

ご家族の代わりの相談を受け付けているお店はあります。ただし対応はお店ごとに違うため、予約の際に「家族が代わりに相談したい」と伝えて確かめてください。

病院の薬をたくさん飲んでいても漢方の相談はできますか?

相談はできます。お薬手帳を見せて、飲んでいる薬をすべて伝えてください。漢方薬にも重なりに気をつけたい生薬があるため、薬の一覧があると先生が判断しやすくなります。

認知症の親の相談もできますか?

ご家族からの相談として受け付けているお店もあります。もの忘れの変化や気になる行動は、まず医療機関で相談することをおすすめします。そのうえで、眠りや食欲など暮らしの困りごとを漢方薬局に相談する形が考えられます。

遠方に住む親の相談はどうすればいいですか?

オンラインや電話での相談に対応しているお店もあります。ご本人が画面越しに参加できると、表情や声の様子も伝わりやすくなります。

本人が漢方薬を飲むのを嫌がったらどうしますか?

無理に飲んでもらうと、かえって続かなくなることがあります。味や飲み方の工夫について、先生に相談してみてください。

まとめ

  • 代わりの相談は、受け付けるお店もある。対応は店ごとなので、予約のときに確かめます。
  • 先に伝えたいのは5つ。困りごと・薬・持病と検査・暮らし・本人の気持ちです。
  • お薬手帳と検査結果の写真があると、持病のある方の相談が進みやすくなります。
  • 本人の気持ちを置き去りにしない。「飲んでみたい」と思えることが、続けやすさにつながります。

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