【この記事の要点】
- 漢方薬は、季節の変わり目に見直すことがあります。東洋医学では、季節ごとに体が受ける負担が違うと考えるからです。
- ただし、季節が変わるたびに毎回変えるわけではありません。体質の土台を整える漢方薬は、一年を通して続けることもあります。
- 冬に向けて見直しを相談したいサインは3つ。冷えによる新しい不調、乾燥による変化、今の漢方薬で体が冷える・のぼせる感じがすることです。
- 自己判断で量を変えたりやめたりせず、次の相談のときに「季節が変わって気になること」を伝えましょう。
- 監修:石田 友里 先生(くら石・静岡県掛川市)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)
「夏から同じ漢方薬を飲んでいるけれど、寒くなってきたら、このままでいいの?」
「冬になると、毎年いつもの不調が出る。季節に合わせて漢方薬を変えたほうがいい?」
漢方薬を続けていると、季節の変わり目にこんな迷いが出てきます。
結論から言うと、季節に合わせて見直すことはあるが、毎回変えるわけではない、が答えです。
この記事では、季節と漢方薬の関係と、冬に向けて相談で見直したい3つのサインを整理します。
病院ではどう見るか|病院の薬も季節で調整されることがある
季節で薬を見直すのは、漢方薬だけの考え方ではありません。病院の薬でも、季節に合わせて調整されることがあります。
血圧は冬に上がりやすく、夏に下がりやすい
寒くなると血管が縮み、血圧が上がりやすくなるとされています。
そのため、家庭での血圧の記録を見て、医師が季節ごとに血圧の薬の量を調整することがあります。
ぜんそく・花粉症・乾燥肌も、季節で薬が変わりやすい
ぜんそくは、気温差が大きい秋に症状が出やすいとされ、吸入薬の使い方を見直すことがあります。
花粉症では、花粉が飛び始める前から薬を始める「初期療法」という考え方があります。
冬は空気が乾き、皮膚科で保湿剤が増えたり、塗る回数を見直したりすることもあります。
病院の薬は、症状の出方や検査の数値を見て、季節に合わせて量や種類を整える、と考えると分かりやすいでしょう。
【石田 友里 先生からのアドバイス】
冬は、冷えと生理のリズムの関係を見直すきっかけになりやすい季節です。
寒くなってから生理痛が重くなった、周期がずれた、と感じたら、それも季節の変化として伝えてください。
「漢方薬と関係ないかも」と思うことほど、見直しの手がかりになります。
東洋医学ではどう見るか|季節ごとに体が受ける負担が違う
東洋医学では、人の体は自然とつながっていて、季節の影響を受けると考えます。
季節ごとに、負担を受けやすい臓(ぞう=東洋医学でいう体の働きのまとまり)があるとされています。
秋は空気の乾き(燥邪=そうじゃ)が「肺」に、冬は寒さ(寒邪=かんじゃ)が「腎」に負担をかけやすいと考えます。
冬に負担を受けやすい「腎」とは
東洋医学の「腎」は、腎臓だけでなく、体を温める力や、水分の調整、足腰の強さをまとめた考え方です。
冬は、手足の冷え、夜中のトイレ、腰の重さといった形で、腎の負担が表れやすいとされます。
季節で変えるもの、変えないもの
漢方相談では、その人の体質の土台と、季節で上乗せされる負担を分けて考えることがあります。
土台を整える漢方薬は一年を通して続け、季節の負担が強い時期だけ、組み合わせや量を見直す、という進め方です。
どこまで変えるかは、体質と経過によって違います。先生によって見立てが分かれることもあります。
季節ごとの体の負担と、見直しの観点の比較表
| 季節 | 負担を受けやすい臓 | 出やすい不調の例 | 相談で見直す観点 |
|---|---|---|---|
| 春 | 肝(気の巡り) | イライラ、眠りの浅さ | 気の巡りを整える |
| 夏 | 心・脾(汗と胃腸) | だるさ、食欲の低下 | 汗で失うものを補う |
| 秋 | 肺(乾燥) | のどや肌の乾き、空咳 | 潤いを補う |
| 冬 | 腎(冷え) | 手足の冷え、夜のトイレ、腰の重さ | 温める力を補う |
まとめると、季節が変わると「補うもの」が変わるため、相談のときに季節の変化を伝えることが見直しの第一歩です。
表はあくまで目安で、実際の見立ては一人ひとりの体質で変わります。
【北浦 久貴 先生からのアドバイス】
朝晩の寒暖差が大きくなる時期は、自律神経が体温を調整しようと働き続けます。
そこに冬の乾燥が重なると、肌のかゆみと気分の落ち着かなさが同時に出る方もいます。
肌と心は別々の悩みに見えても、季節の変わり目には一緒に見直すことがあります。
冬に向けて相談で見直したい3つのサイン
次の3つに心当たりがあれば、次回の相談で「季節が変わって気になること」として伝えてください。
サイン1:寒くなって、今までなかった不調が出てきた
夏には気にならなかった手足の冷えや、夜中に何度もトイレに起きることが増えていませんか。
腰やひざの重さ、朝の起きにくさも、冬の負担が表れやすいところです。
相談のきっかけになった症状とは別の場所でも、新しく出てきた不調は見直しの手がかりになります。
サイン2:乾燥で、のど・肌・お通じが変わった
東洋医学では、空気の乾きは体の潤いも奪うと考えます。
のどがイガイガする、肌がかゆい、便が硬くなった。こうした変化が同じ時期に重なるときは、潤いが足りないサインと見ることがあります。
保湿剤や加湿器でのケアとあわせて、内側から潤いを補う考え方を相談できます。
サイン3:今の漢方薬で、体が冷える・のぼせる感じがする
漢方薬には、体を温める性質の生薬と、熱を冷ます性質の生薬があります。
黄連(おうれん)や石膏(せっこう)は冷ます側、桂皮(けいひ)や乾姜(かんきょう)は温める側の代表とされています。
暑い時期に合っていた漢方薬が、寒くなると「飲むと冷える」と感じられることがあります。自分で量を減らさず、そのまま伝えてください。
自宅でできる冬のセルフケア・食養生
東洋医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』では、冬は「早く寝て、日が昇ってから起きる」のがよいとされています。
冬の養生は、体の熱を逃がさず、ためておくことが基本です。
- 首・お腹・足首を温める:「首」がつく場所と、お腹を冷やさない
- 温める食材を足す:ねぎ、しょうが、にら、根菜を汁物や鍋に
- 黒い食材を取り入れる:黒豆、黒ごま、ひじきは、腎を養う食材とされる
- 部屋の乾燥を防ぐ:湿度40〜60%を目安に加湿する
- 汗をかきすぎない:冬の激しい運動や長風呂は、熱を逃がしやすい
食養生は、漢方薬を変えるかどうかに関係なく、今日から始められる季節のケアです。
季節の見直しが必要か分かるセルフチェック
ここ1か月を振り返って、当てはまるものを数えてみてください。
- 手足や腰が、夏より冷えるようになった
- 夜中にトイレで起きる回数が増えた
- のどや肌の乾き、便の硬さが気になる
- 今の漢方薬を飲むと、体が冷える、またはのぼせる感じがする
- 毎年この時期に出る不調がある
- 前回の相談から、季節が一つ変わった
2つ以上当てはまるなら、次の相談で季節の変化を伝えてみてください。
急な強い冷え、むくみ、動悸、血圧の大きな変化があるときは、先に医療機関を受診してください。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
漢方薬は、一年中同じものを飲み続けてもいいですか?
体質の土台を整える漢方薬は、一年を通して続けることもあります。続けるか見直すかは、相談のときに体の様子を見て決めます。
寒くなったので、自分で漢方薬の量を減らしてもいいですか?
自己判断で量を変えるのは避けてください。「飲むと冷える」などの感じ方を、そのまま薬局に伝えるのが近道です。
冬の間だけ漢方薬を飲む、という使い方はできますか?
毎年決まった季節に不調が出る方は、その時期を中心に相談することもあります。
始める時期や続ける期間は、体質と経過によって違います。
季節の変わり目に体調を崩しやすいのはなぜですか?
気温や湿度の変化に体が合わせようとして、自律神経に負担がかかるためと考えられています。
東洋医学では、季節ごとに負担を受けやすい臓が変わるとも考えます。
季節の見直しは、どのくらいの間隔で相談すればいいですか?
ふだんの相談の間隔のままで構いません。前回から季節が変わっていれば、そのときに一言伝えてください。
まとめ
- 漢方薬は季節の変わり目に見直すことがありますが、毎回変えるわけではありません。
- 東洋医学では、冬は寒さが「腎」に負担をかけやすく、冷え・夜のトイレ・腰の重さに表れやすいと考えます。
- 冬に向けて見直したいサインは、新しい冷えの不調、乾燥による変化、今の漢方薬で冷える・のぼせる感じの3つです。
- 量を自分で変えず、次の相談で季節の変化を伝えましょう。
相談先を探すときは
漢方百名店では、季節の変化も含めて相談に乗ってくれる、全国の漢方薬局を紹介しています。
通う頻度と見直しの区切り、やめどき、飲み方のギモン、体質のセルフチェックもあわせて参考にしてください。




寒くなって気になることが出てきた方は、近くの漢方薬局に、季節の変化から話してみてください。
