【この記事の要点】
- 陰虚(いんきょ)とは、東洋医学で体をうるおし冷ます「陰」が足りず、乾きとほてりが同時に出やすい状態のことです。
- 口や目の乾き、手足のほてり、寝汗、夜中に目が覚めるなど、10個のサインで自分の傾向を確かめられます。
- 病院では更年期のホルモン検査(FSH・エストラジオール)や、シェーグレン症候群など乾燥の病気の検査で原因を探します。
- 相談先は、更年期や皮膚の相談を多く受ける先生など得意分野で選びます。初回は乾く場所、ほてる時間帯、寝汗の有無を伝えます。
- 監修:石田 友里 先生(漢方薬局 くら石・静岡県掛川市)/武田 隆芳 先生(漢方薬局 嶺耀堂・東京都新宿区)
「夜になると手足がほてって、布団から足を出さないと眠れない」
「目も口も肌もカラカラ。でも検査では何も言われなかった」
こうした「乾いてほてる」不調は、東洋医学では陰虚(いんきょ)として見ることがあります。
結論から言うと、陰虚は体の「うるおいと冷ます力」が足りない状態で、年齢に限らず出る傾向です。
この記事では、陰虚のサイン10個のセルフチェックと、相談先を選ぶときの目安を整理します。
病院ではどう見るか|更年期のホルモン検査と乾燥の病気の検査
病院では「ほてり」と「乾燥」を別の症状として見て、それぞれ原因になる病気を探します。
ほてりは更年期や甲状腺、乾燥はシェーグレン症候群や糖尿病、薬の影響が、まず確かめられる方向です。
更年期で行われるホルモン検査
40代後半から50代のほてりでは、血液検査でFSH(卵胞刺激ホルモン)とエストラジオール(女性ホルモンの一つ)を測ります。
FSHが高く、エストラジオールが低いと、卵巣の働きが落ちている目安になるとされています。
ほてりは甲状腺の働きが高い病気(バセドウ病など)でも出るため、TSH・FT4も一緒に測ることが多いです。
乾燥で行われる検査
目と口の強い乾きが続くときは、シェーグレン症候群(自分の免疫がうるおいを出す腺を傷める病気)の検査が行われます。
涙の量を測るシルマー試験、唾液の量を測るガム試験、血液の抗体検査(抗SS-A抗体など)が代表です。
病院の薬の考え方
ドライアイには人工涙液やヒアルロン酸の目薬、ドライマウスには人工唾液や口の保湿ジェルが使われます。
更年期のほてりにはホルモン補充療法(HRT)や、医療用の漢方製剤(加味逍遙散、当帰芍薬散など)が処方されることもあります。
病院は症状ごとに手当てをし、東洋医学は乾きとほてりを一つの傾向としてまとめて見る。ここが分かれ目です。
【石田 友里 先生からのアドバイス】
私は更年期やPMS、不妊など、女性の体の相談を多く受けています。更年期のほてりの相談では、ほてりの出る時間帯を細かく聞きます。
夕方から夜にほてる、寝汗で目が覚める、手足の裏が熱いのに体の芯は冷える。こうした訴えは陰虚の傾向として見ることが多いです。
更年期は陰虚が表に出やすい時期ですが、若い方でも、夜ふかしや強いストレスが続くと同じサインが出ます。
婦人科で検査を受けた方は、その結果を持ってきてください。病院の見立てと重ねて、体質の側から整え方を考えます。
東洋医学ではどう見るか|陰虚(いんきょ)とは「うるおいと冷ます力」の不足
東洋医学では、体の働きを「陰(いん)」と「陽(よう)」の釣り合いで見ます。陰は、体をうるおし、冷まし、静める側の働きです。
陰虚とは、この陰が足りなくなって、相対的に熱が勝ってしまう状態です。火を消す水が足りないイメージです。
乾燥(口・目・肌・便)と、ほてり(手足・顔・夜間)が同時に出るのが特徴とされています。
陰が減りやすい場面
年齢を重ねること、夜ふかしや睡眠不足、長引く発熱や病気のあと、辛いものやお酒の取りすぎ、強いストレスが続くこと。
これらは陰を消耗させるとされています。夜は陰を補う時間帯なので、夜ふかしの習慣は陰虚の人がまず見直したい点です。
陰虚は、腎(じん=成長・生殖・老化に関わる働き)の陰が足りない「腎陰虚」として語られることが多いです。
比較表|病院の「ほてり・乾燥」と東洋医学の「陰虚」の見方
| 見方 | 病院(西洋医学) | 東洋医学 |
|---|---|---|
| 何を見るか | ホルモン値・抗体・涙や唾液の量 | 舌の色と苔・ほてる時間帯・寝汗 |
| 対象になる人 | 更年期・シェーグレン・糖尿病などが見つかった人 | 検査で異常がないが乾きとほてりが続く人 |
| 手当ての中心 | HRT・目薬・保湿剤など症状ごと | 陰(うるおい)を補い、熱を静める |
| 変化の追い方 | 数値と症状で追う | 舌の乾きと夜のほてりで追う |
まとめると、病院は乾燥とほてりを別々に調べ、東洋医学は「うるおい不足」という一つの軸で見ます。病気が見つかれば病院の方針が土台です。
【武田 隆芳 先生からのアドバイス】
私は病院と調剤薬局で12年働いてから、漢方の道に入りました。病院の薬を飲みながら相談に来る方が多いので、両方の立場で見るようにしています。
乾いた咳が長引く、肌がかさついてかゆい、夜中に目が覚める。別々に見える訴えが、陰虚という一つの傾向でつながることがあります。
病院で保湿剤や目薬をもらっている方は、それを続けたまま相談に来てください。やめる必要はありません。
伝えてほしいのは、乾くのはどこか、ほてるのはいつか、汗は寝ている間か起きている間か、の3つです。
陰虚タイプのサイン10個のセルフチェック表
次の表で、ここ1か月の自分に当てはまるものを数えてください。
| サイン | こんな様子なら当てはまる |
|---|---|
| 1 口とのどの乾き | 水を飲んでも渇きが取れない。夜中にのどが乾いて目が覚める |
| 2 目の乾き | 目がしょぼしょぼする。目薬が手放せない |
| 3 肌と髪の乾燥 | 肌がかさつく。かかとがひび割れる。髪がぱさつく |
| 4 手足のほてり | 夕方から夜に手のひら・足の裏が熱い。布団から足を出す |
| 5 顔のほてり・のぼせ | 午後から顔が熱くなる。頬が赤くなりやすい |
| 6 寝汗 | 寝ている間に汗をかく。起きると首や胸が湿っている |
| 7 眠りの浅さ | 寝つきが悪い。夜中に目が覚めて、そのあと眠れない |
| 8 便の乾き | 便が硬くコロコロしている。量が少ない |
| 9 舌の様子 | 舌が赤く、苔が少ない。表面にひび割れがある |
| 10 夕方以降の不調 | 夕方から夜に体調が崩れやすい。微熱っぽい感じがする |
3つ以上当てはまれば陰虚の傾向、6つ以上なら相談を考える目安とされています。
ただし、急な体重減少、強い口の渇きと尿の増加、目と口の乾きが数か月続く場合は、先に病院で検査を受けてください。
陰虚のサインが出やすい生活
夜ふかし、睡眠不足、辛いもの・お酒・コーヒーの取りすぎ、長時間の画面作業、サウナや激しい運動で大量に汗をかく習慣。
これらは陰を消耗させるとされています。陰虚タイプにとって、汗をたくさんかくことは「うるおいの持ち出し」になります。
陰虚タイプの人が相談先を選ぶときの目安
陰虚のサインは、ほてり、肌の乾燥、眠りの浅さ、乾いた咳と、いろいろな場所に出ます。相談先は一番つらい症状の得意分野で選びます。
ほてりや寝汗、生理の変化が主なら、更年期や婦人科の相談を多く受ける先生がいる店が合いやすいとされています。
肌の乾燥とかゆみが主なら皮膚の相談を多く受ける先生、乾いた咳が長引くなら呼吸器の相談を多く受ける先生が目安です。
初回の相談で伝えること
初回に伝えたいのは、乾く場所、ほてる時間帯、寝汗の有無、睡眠の様子、生理やホルモンの状態の5つです。
婦人科や内科で受けた検査(FSH・エストラジオール・甲状腺・血糖)の結果があれば、紙のまま見せてください。
自宅でできるセルフケア・食養生
陰虚タイプの養生は「夜に休む・うるおすものを食べる・汗を出しすぎない」の3つが基本とされています。
- 夜12時までに寝る:陰を補う時間帯に体を休める。寝る1時間前は画面を見ない
- うるおすとされる食材を使う:白きくらげ、山いも、黒ごま、豆腐、豆乳、梨、はちみつ、れんこん
- 辛いもの・お酒・コーヒーを控える:体を乾かし熱を増やすとされる。まず2週間減らしてみる
- 汗を大量にかく習慣を見直す:長時間のサウナや熱い湯は短めに。運動はうっすら汗をかく程度
- 肌と目のうるおいを外からも守る:加湿、保湿、まばたきを意識。乾いたら我慢しない
食養生は2〜4週間続けて、夜のほてりと寝汗がどう変わったかを見るのがおすすめです。
相談に行く前のセルフチェック
相談の準備ができているか、次の5つで確かめてください。
- 上の10個のサインのうち、当てはまった番号をメモした
- 乾く場所と、ほてる時間帯、寝汗の有無を書き出した
- 婦人科や内科の検査結果(ホルモン・甲状腺・血糖)があれば手元に用意した
- 病院の薬、目薬、保湿剤、サプリの名前を書き出した
- 一番つらい症状を一つに決め、その得意分野があるお店を候補にした
5つそろっていれば、初回の相談で見立ての材料が十分に伝わります。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
陰虚とはどういう意味ですか?
東洋医学で、体をうるおし冷ます「陰」が足りず、乾きとほてりが出やすい状態のことです。
年齢を重ねること、夜ふかし、強いストレスなどで陰が減ると考えられています。
陰虚と更年期は同じですか?
同じではありません。更年期は陰虚が表に出やすい時期の一つで、若い方や男性にも陰虚の傾向は出ます。
更年期のほてりでも、冷えが強いタイプなど、陰虚とは別の見方になることがあります。
陰虚に使われる漢方薬はありますか?
東洋医学では、陰を補う処方(六味丸、知柏地黄丸、麦門冬湯など)が用いられることがあります。
ただし「ほてりにはこの薬」と1対1で決まるものではなく、冷えや胃腸の状態で選び方が変わります。
陰虚の人が食べてはいけないものはありますか?
禁止ではありませんが、辛いもの、お酒、コーヒー、揚げ物は体を乾かし熱を増やすとされ、控えめにするのが目安です。
代わりに、白きくらげや山いも、梨など、うるおすとされる食材を足します。
陰虚の相談はどんな漢方薬局に行けばいいですか?
ほてりや寝汗が主なら更年期の相談を多く受ける先生、肌の乾燥が主なら皮膚の相談を多く受ける先生がいる店が目安です。
初回には、乾く場所とほてる時間帯、寝汗の有無を伝えてください。
まとめ
- 陰虚(いんきょ)は、体をうるおし冷ます「陰」が足りず、乾きとほてりが同時に出やすい状態を表す言葉です。
- 口や目の乾き、手足のほてり、寝汗、眠りの浅さ、舌の赤さなど10個のサインのうち、3つ以上で傾向あり、6つ以上で相談の目安です。
- 病院では更年期のホルモン検査やシェーグレン症候群の検査で原因を探し、東洋医学では「うるおい不足」という一つの軸で見ます。
- 相談先は、更年期・皮膚など一番つらい症状の得意分野で選び、初回に乾く場所・ほてる時間帯・寝汗の有無を伝えます。
相談先を探すときは
漢方百名店では、ほてりや乾燥など「乾いてほてる不調」の相談を受けている、全国の漢方薬局を紹介しています。
気血水の総合チェック、相談で聞く体質の言葉、得意分野で選ぶ基準、汗の悩みの記事もあわせて参考にしてください。



セルフチェックの結果と検査の紙を持って、まず近くの漢方薬局で「うるおい」の見立てを聞いてみてください。
