【この記事の要点】
- 冬の乾燥肌や背中のかゆみは、皮膚の相談を多く受ける先生のいる漢方薬局が入口です。
- 初回で伝えるのは、①かゆい場所と広がり方 ②時期と時間帯 ③使っている薬と塗り方、の3つです。
- よくある勘違いは「ステロイドを塗っておけばいい」。使い方は皮膚科の指示で続け、塗る量と回数を漢方薬局にも伝えます。
- 全身に急に広がった、じくじくして熱をもつ、黄疸や体重減少を伴うときは、漢方薬局より先に病院へ。
- 監修:北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)/前原 信太郎 先生(太陽堂・東京都新宿区)
「背中が痒くてたまらない。手が届かないところが、いちばんかゆい」
「寝ているときも痒い。保湿しているのに、冬になると毎年くり返す」
冬のかゆみは、漢方薬局によく来る相談の一つです。中でも多いのが、背中のかゆみです。
病院で「老人性皮膚瘙痒症(ろうじんせいひふそうようしょう)」と言われ、保湿剤やステロイドを使っている方が多くいます。
結論から言うと、相談先は皮膚の相談を多く受ける先生。皮膚科の薬は使ったまま相談できます。
この記事では、初回で伝える3つのことと、「ステロイドを塗っておけばいい」という勘違いを整理します。
病院ではどう見るか|皮脂欠乏性湿疹・老人性皮膚瘙痒症と、使われる薬
皮膚科が区別する3つの状態
皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)は、皮脂と水分が減って皮膚が乾き、粉をふいたり赤くなったりする状態です。
すねや腰、背中に出やすいとされています。
老人性皮膚瘙痒症は、見た目にはっきりした発疹がないのに、かゆみだけが続く状態です。
加齢で皮膚のうるおいを保つ力が落ち、空気が乾く冬に強く出るとされています。
アトピー性皮膚炎は、ひじやひざの内側など左右対称に出て、長くくり返すのが特徴です。
血液検査で見ること|肝臓・腎臓・甲状腺・糖尿病
発疹がないのに全身がかゆいときは、血液検査をすることがあります。
肝臓・腎臓・甲状腺の病気や糖尿病でも、皮膚にかゆみが出ることがあるとされているためです。
黄疸(おうだん=皮膚や白目が黄色くなること)や体重減少を伴うときは、漢方薬局より先に病院で調べてもらってください。
使われる薬|保湿剤・ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬
保湿剤は、ヘパリン類似物質や尿素、ワセリンなどが使われます。
ステロイド外用薬は、炎症を抑える塗り薬です。強さは5段階に分かれ、塗る場所と症状の程度で皮膚科が選びます。
抗ヒスタミン薬は、かゆみを抑える飲み薬です。
ステロイドの使い方は皮膚科の指示で
強いステロイドを長く・広く塗ると、皮膚が薄くなる、感染症が起きやすくなることがあるとされています。
だからこそ皮膚科は、塗る場所・回数・期間を指導します。自己判断でやめたり増やしたりしないことが大切です。
全身に急に広がった、じくじくして熱をもつときも、まず皮膚科へ。漢方薬局は、そのあとの相談先です。
【北浦 久貴 先生からのアドバイス】
私が皮膚の相談で初回に重く見ているのは、「どこがかゆいか」と「いつかゆいか」の2つです。
皮膚は虚実(きょじつ)と陰陽(いんよう)で分けて見るため、場所と時期が分かると見方が定まります。
冬だけ出るのか、夜に強いのか、入浴後か。この違いで、考える方向が変わります。
皮膚科の薬を使っている方は、そのまま持ってきてください。量と回数も教えてもらえると助かります。
東洋医学ではどう見るか|かゆみを虚実・陰陽・血で見る
東洋医学では、かゆみを「体の状態が皮膚に出たもの」として見ます。
物差しは2つ。虚実(きょじつ=体の力が足りない側か、余って滞っている側か)と、陰陽(いんよう=冷えて乾く側か、熱をもつ側か)です。
乾燥してかさかさ=血が足りない側
血(けつ=体を養う栄養のこと)が足りないと、皮膚にうるおいが届かず、乾いてかゆくなると考えます。
粉をふく、ひび割れる、冬になると出る。こうしたかゆみは、血が足りない「虚」の側として見ることが多いとされています。
赤く熱っぽい=熱の側
掻くと赤く広がる、熱をもつ、入浴後にひどくなる。こうしたかゆみは、熱がこもる「陽」の側として見ます。
場所と時期で見方が変わる
夜にかゆみが強くなる方は、体のうるおいが夜に足りなくなっている、と考えることがあります。
だから漢方薬局では、かゆい場所と時期(季節・時間帯)を、初回でとても詳しく聞きます。
相談先は、皮膚の相談を多く受ける先生へ
かゆみの相談は、アトピー性皮膚炎や湿疹など、皮膚の相談を多く受けている先生のいる薬局が入口になります。
かゆみの出方で変わる見方の比較表
| かゆみの出方 | 皮膚科で見ること | 漢方薬局が聞くこと |
|---|---|---|
| 背中が冬だけかゆい | 乾燥の程度と発疹の有無。保湿剤を中心に | 粉をふくか、入浴後か、暖房の部屋か(血が足りない側を考える) |
| 夜にひどくなる | 掻き壊しの有無。抗ヒスタミン薬の検討 | 何時ごろ強いか、寝汗やほてりの有無(うるおい不足を考える) |
| 赤く熱っぽい・広がる | 湿疹の程度とステロイドの強さの選択。感染の有無 | 熱をもつ場所、食事やお酒、季節に関係なく出るか(熱の側を考える) |
まとめると、皮膚科は「皮膚の状態と薬の選択」、漢方薬局は「場所と時期から体の側を見る」という違いです。
【前原 信太郎 先生からのアドバイス】
「保湿しても追いつかない」という方には、まず漢方薬を飲んでいただくことから始めます。
かゆみが強いときは、皮膚科のかゆみ止めを併用して、まずかゆみを抑えてから始めることもあります。
併用はいけないことではありません。眠れないほどのかゆみを先に落ち着かせるほうが、体を見る余裕が生まれます。
塗り薬を減らすかどうかは、皮膚科の先生と相談して決めてください。私たちは、体の側から整える手伝いをします。
皮膚が得意な先生に初回で伝える3つのこと
初回は他の症状と同じく生活や体質を幅広く聞かれますが、かゆみの相談で特に大切なのは次の3つです。
1. かゆい場所と広がり方
背中だけか、すねや腰にも出るか、全身か。左右差があるかも伝えてください。
粉をふいて乾いているか、赤く熱をもっているかは、虚実・陰陽を分ける手がかりになります。
手が届かない背中は、家族にスマートフォンで写真を撮ってもらうと、言葉で説明しなくても伝わります。
2. 時期と時間帯
冬だけ出るのか、一年中あって冬にひどくなるのか。この差は大きいです。
夜に強いか、入浴後か、暖房の部屋に入ってからか。時間帯と場面で、体のどの側を見るかが変わります。
3. 使っている薬と塗り方(併用のまま相談できます)
保湿剤の種類と、ステロイドの名前と強さを伝えてください。
1日何回・どこに・どのくらいの量を塗っているかが、相談で見たいところです。
抗ヒスタミン薬など、かゆみ止めを飲んでいる場合も、そのまま伝えてください。皮膚科の薬は併用のまま相談できます。
冬のかゆみの相談で多い勘違い|「ステロイドを塗っておけばいい」
使い方は皮膚科の指示で
ステロイドは、かゆみと炎症を抑える大切な薬です。問題は薬そのものではなく、「かゆければ塗る」を自己判断でくり返すことです。
強いものを塗りすぎると、皮膚の感染症(真菌など)の原因になることがあるとされ、皮膚科も塗り方を指導しています。
塗る量・回数・期間は、皮膚科の指示に沿って続けてください。やめるかどうかも、皮膚科と決めます。
漢方薬局では「併用しながら体質から見る」形で始めることが多い
漢方薬局が「何を、どのくらい塗っているか」を聞くのは、薬を責めるためではなく、体の状態を読むためです。
「保湿しても追いつかない」方には、まず漢方薬を飲んでもらい、体の側から整えることを目指します。
かゆみが強ければ、かゆみ止めと併用してかゆみを抑えながら、体質から見ていく形で始めることが多いです。
自宅でできるセルフケア・食養生
自宅でできることは次の5つです。皮膚科の指示がある方は、そちらを優先してください。
- 熱いお湯とナイロンタオルを避ける:皮脂を落としすぎる。ぬるめの湯で、手でやさしく洗う
- 保湿は入浴後すぐ:体を拭いたら、乾く前に塗る。保湿剤は皮膚科の指示どおりの量で
- 暖房の乾燥に気をつける:加湿器や濡れタオルで部屋の湿度を保つ。電気毛布は寝る前に切る
- 辛いもの・お酒を控えめに:東洋医学では体に熱をこもらせる側とされ、かゆみが強い時期は量を見直す
- かゆみの記録をつける:場所・時間帯・塗った薬を一言メモに。初回相談の材料になる
記録は「夜10時・背中・保湿剤だけ」のような一言で、先生には十分伝わります。
相談に行く前の準備ができているか|セルフチェック
次の5つが分かっていれば、初回の相談がスムーズに進みます。
- 塗り薬の名前と強さが分かる(ステロイドの名前・保湿剤の種類)
- 1日に塗る回数と、塗っている場所が分かる
- かゆい場所と広がり方(背中だけ/すね・全身/左右差)を言える
- かゆい時間帯と場面(夜・入浴後・暖房の部屋・冬だけか)を言える
- 直近の血液検査の結果(肝臓・腎臓・甲状腺・血糖)が手元にある
全部そろわなくても相談はできます。分からない所は、相談の場で先生と一緒に確かめれば大丈夫です。
この記事の監修
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
冬になると背中がかゆいのはなぜですか?
皮脂と水分が減って皮膚が乾き、暖房でさらに乾くためとされています。
東洋医学では、血(けつ)が足りない側として見ることが多いです。
ステロイドを使っていても漢方薬局に相談できますか?
できます。やめてから来る必要はなく、併用のまま相談できます。
塗り薬の名前・強さ・1日の回数を伝えると、相談が進みやすくなります。
老人性皮膚瘙痒症と言われました。漢方薬局で相談できますか?
相談できます。皮膚の相談を多く受ける先生のいる薬局が入口です。
皮膚科の保湿剤は続けながら、かゆい場所と時期から体の側を見ていきます。
かゆみ止めの飲み薬と漢方薬は一緒に飲めますか?
一緒に飲む形で始めることは多くあります。かゆみを抑えながら、体質から見ていく進め方です。
飲んでいる薬の名前を、漢方薬局と皮膚科の両方に伝えてください。
乾燥肌のかゆみで、先に病院に行くべき目安はありますか?
全身に急に広がった、じくじくして熱をもつ、黄疸や体重減少を伴うときは、先に病院へ。
肝臓・腎臓・甲状腺の病気や糖尿病でもかゆみが出ることがあるとされ、血液検査で確かめます。
まとめ
- 冬の乾燥肌・背中のかゆみは、皮膚の相談を多く受ける先生のいる漢方薬局が入口です。
- 初回で伝えるのは、かゆい場所と広がり方・時期と時間帯・使っている薬と塗り方、の3つです。
- 「ステロイドを塗っておけばいい」は勘違い。使い方は皮膚科の指示で続け、量と回数を薬局にも伝えます。
- 皮膚科の薬は併用のまま相談できます。かゆみを抑えながら、体質から見る形で始めることが多いです。
相談先を探すときは
漢方百名店では、アトピー性皮膚炎や乾燥肌など、皮膚の相談を多く受けている全国の漢方薬局を紹介しています。
乾燥に関わる陰虚・血虚のセルフチェック、病院の薬との併用の考え方、得意分野で選ぶ基準もあわせて参考にしてください。


背中のかゆみで眠れない夜が続いているなら、塗り薬のチューブを持って、まず近くの漢方薬局に相談してみてください。
