血虚(けっきょ)タイプのセルフチェック|顔色・爪・眠りのサインと相談先の選び方

【この記事の要点】

  • 血虚(けっきょ)とは、東洋医学で「血(けつ=体を養い潤すもの)が足りない状態」のことです。顔色・爪・眠りにサインが出るとされています。
  • 血虚と貧血は同じではありません。病院の貧血はヘモグロビンの数値で決まり、血虚は検査が正常でも見立てられることがあります。
  • この記事のセルフチェックは10項目。「乾く・色が薄い・夜に悪化する・不安になりやすい」が血虚の特徴とされています。
  • 相談先は、婦人科・皮膚の相談を多く受けている先生のいる店が目安です。初回には月経の状態と、健診の血液検査の結果を伝えます。
  • 監修:石田 友里 先生(漢方薬局 くら石・静岡県掛川市)/前原 信太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)

「顔色が悪いとよく言われる。でも健診では貧血ではなかった」

「爪が割れやすくて、夜は眠りが浅い。年のせい?」

こうした不調を、東洋医学では血虚(けっきょ=血が足りない状態)として見ることがあります。

結論から言うと、血虚は貧血と同じではなく、血液検査が正常でも見立てられることがある体質の見方です。

この記事では、10項目のセルフチェックと、血虚タイプの人が相談先を選ぶときの目安を整理します。

病院ではどう見るか|貧血(ヘモグロビン・フェリチン)と血虚の違い

病院で「貧血」と言うときは、血液検査のヘモグロビン(Hb)の数値で決まります。

一般に、女性で12g/dL未満、男性で13g/dL未満が貧血の目安とされています(基準は機関で少し違います)。

「隠れ貧血」とフェリチン

ヘモグロビンが正常でも、体にためてある鉄(貯蔵鉄)が減っていることがあります。これを見る数値がフェリチンです。

フェリチンが低い状態は「隠れ貧血」「鉄欠乏」と呼ばれ、健診の標準項目に入っていないことが多いとされています。

気になる方は、内科や婦人科で「フェリチンも調べてほしい」と伝えると、追加で測ってもらえることがあります。

病院で使われるお薬と、原因の調べ方

鉄欠乏性貧血には、鉄剤(フェロミア、フェログラデュメットなど)が処方されます。胃のむかつきが出る方もいるとされています。

同時に、鉄が減った原因を調べます。女性では月経の量、男女とも胃や腸からの出血が確かめられます。

黒い便が出る、月経の量が急に増えた、という方は、漢方薬局より先に病院で原因を調べてもらってください。

血虚は、こうした病院の検査と並べて使う「体質の見方」です。貧血の人は血虚と重なることが多く、逆はそうとは限りません。

【石田 友里 先生からのアドバイス】

私は不妊や更年期、PMSなど、女性の相談を多く受けています。そこで欠かさず聞くのが月経のことです。

量・色・日数・終わったあとの疲れ方。月経のあとに顔色が落ちて眠りが浅くなる方は、血虚を考えます。

健診で「貧血ではない」と言われても、体の声は別のことを言っていることがあります。

数値と体感、両方を持ってきてください。どちらも大切な材料です。

東洋医学ではどう見るか|血は「養い、潤し、心を落ち着かせる」もの

東洋医学の血(けつ)は、血液そのものより広い言葉です。全身を養い、肌や髪を潤し、心を落ち着かせる働きを含みます。

血が足りない血虚では、養われない(疲れ・立ちくらみ)、潤わない(乾燥・爪が割れる)、落ち着かない(不安・浅い眠り)の3つが出るとされています。

血は、脾(ひ=東洋医学の消化吸収の働き)が食べ物から作ると考えます。胃腸が弱いと、血も作りにくいと見ます。

血虚になりやすい場面

月経・出産・授乳は、血を直接使う出来事です。女性に血虚が多いとされるのは、このためです。

男性や閉経後の方でも、偏った食事、夜ふかし、目や頭の使いすぎは、血を消耗するとされています。

血虚は気虚(ききょ=気が足りない状態)と重なりやすく、両方あるときは気血両虚(きけつりょうきょ)と呼ばれます。

血虚・貧血・陰虚の見分け方の比較表

見るところ 血虚(東洋医学) 貧血(病院)/陰虚(東洋医学)
決め方 顔色・爪・舌・眠り・月経などの体のサインから見立てる 貧血:ヘモグロビンの数値で決まる/陰虚:潤いと熱のバランスから見立てる
代表的なサイン 顔色が白っぽい、爪が割れる、眠りが浅い、目が乾く 貧血:息切れ・動悸・だるさ/陰虚:ほてり・寝汗・のどの渇き
検査との関係 検査が正常でも血虚と見ることがある 貧血:検査で決まる/陰虚:検査では捉えにくい
対応の方向 血を補う食養生と、胃腸を整えること 貧血:鉄剤と原因の調べ/陰虚:潤いを補い、熱を冷ます

まとめると、貧血は「数値」、血虚は「サイン」、陰虚は「潤いと熱」で見るのが違いです。

【前原 信太郎 先生からのアドバイス】

私は皮膚や目の相談を受けることが多く、そこから血虚に気づくことがよくあります。

保湿しても肌が乾く、目がしょぼしょぼする、髪が細くなった。「潤い不足」は、血の不足として見ることがあります。

皮膚の相談で来た方に月経のことを聞くと、驚かれることがあります。でも、体はつながっています。

気になる症状が一つでも、全身の話として聞かせてください。

血虚タイプのサイン10個のセルフチェックと相談先の選び方

ここからが、この記事の中心です。まず10個のサインを数え、そのあとで相談先の選び方を見ていきます。

血虚のサイン10個(当てはまる数を数えてください)

サイン よくある場面
1. 顔色が白っぽい、または黄色っぽくくすむ 「顔色が悪い」と人に言われる。頬に赤みがない
2. 爪が割れやすい、薄い、縦の筋が目立つ ネイルが長持ちしない。爪の色が白っぽい
3. 眠りが浅く、夢をよく見る 寝つけても夜中に目が覚める。朝すっきりしない
4. 立ちくらみ、ふらつきがある 急に立ったとき、お風呂上がりに目の前が暗くなる
5. 目が乾く、疲れやすい、かすむ 夕方になると画面の文字が見にくい
6. 髪が細くなった、抜け毛が増えた 排水口の髪が増えた。パサつく
7. 肌が乾燥し、かゆくなる 保湿しても追いつかない。冬に悪化する
8. 手足がしびれる、こむら返りが起きる 夜中にふくらはぎがつる
9. 月経の量が少ない、色が薄い、周期が遅れる 2日で終わる。生理のあとにぐったりする(女性の場合)
10. 不安になりやすく、物忘れが増えた 理由のない不安。人の名前がすぐ出ない

結果の見方

0〜2個なら血虚の傾向は目立ちません。3〜5個なら血虚が関わっている可能性があります。

6個以上なら、血虚を中心に体を見てもらう価値があります。1番・2番・3番がそろう方は、血虚の特徴が強いとされています。

これは体質の傾向を知る目安で、病気の診断ではありません。4番や8番が強いときは、病院の検査も受けてください。

相談先を選ぶときの目安(得意分野で選ぶ)

血虚タイプの方は、婦人科(月経・不妊・更年期)や皮膚の相談を多く受けている先生のいる店を目安に選ぶとよいとされています。

月経と血虚は深く関わるため、婦人科の相談例が多い店は、月経の聞き取りに慣れています。

乾燥やかゆみが主な悩みの方は、皮膚の相談例が多い店だと、肌と血の面を一緒に見てもらいやすいとされています。

初回の相談で伝えること

伝えることは3つです。①月経の量・色・日数(女性) ②健診の血液検査の結果 ③食事と睡眠の時間です。

鉄剤を飲んでいる方は、やめずにそのまま伝えてください。鉄剤と漢方薬は、役割が違うものとして併用を考えます。

血虚に対しては、四物湯や当帰芍薬散、十全大補湯などが用いられることがありますが、どれを選ぶかは体質全体で決まります。

自宅でできるセルフケア・食養生(血を補う食材と眠り)

血虚の養生の合言葉は「赤と黒の食材」と「早く寝る」です。自宅でできる工夫は次の5つです。

  • 赤い食材・黒い食材をとる:なつめ・クコの実・にんじん・黒ごま・黒きくらげ・ひじき。血を補うとされる
  • たんぱく質を毎食入れる:卵・赤身の肉・レバー・魚・豆。血の材料になる
  • 23時までに布団に入る:東洋医学では夜に血が養われるとされる
  • 目を休める時間を作る:画面を見続けると血を消耗するとされる。1時間に1回、遠くを見る
  • 冷たいもの・生野菜ばかりにしない:胃腸が弱ると血が作られにくい。温かい汁物を添える

食養生では、ダイエットで食事を抜く習慣は、血虚を深めやすいとされています。量より中身を整えてください。

相談に行く目安のセルフチェック

10個のサインとは別に、生活への影響で相談の目安を見てください。

  • 顔色の悪さや爪の割れが、半年以上続いている
  • 健診で貧血ではないと言われたが、立ちくらみや疲れが残っている
  • 眠りの浅さで、日中の集中が続かない
  • 月経のあとに、数日間ぐったりする(女性の場合)
  • 保湿や目薬では、乾燥が追いつかなくなった

2つ以上当てはまる方は、体質の面から見てもらう時期です。

なお、黒い便、月経の量の急な増加、強い動悸や息切れがあるときは、病院で原因を調べるのが先です。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)

合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。

・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」

という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。

時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表

祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。

6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。

その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

血虚とはどういう意味ですか?

東洋医学で、血(体を養い潤し、心を落ち着かせるもの)が足りない状態のことです。

顔色が白っぽい、爪が割れる、眠りが浅い、目や肌が乾く、といったサインで見立てます。

血虚と貧血は何が違いますか?

貧血は血液検査のヘモグロビンの数値で決まります。血虚は体のサインから見立てる東洋医学の言葉です。

貧血の人は血虚と重なることが多いですが、検査が正常でも血虚と見ることがあります。

血虚に良い食べ物は何ですか?

なつめ・クコの実・にんじん・黒ごま・黒きくらげなど、赤と黒の食材が血を補うとされています。

卵や赤身の肉、レバーなどのたんぱく質も材料になります。食事を抜くダイエットは血虚を深めやすいとされています。

血虚に使われる漢方薬は何ですか?

四物湯・当帰芍薬散・十全大補湯などが用いられることがあります。ただし、どれを選ぶかは体質全体で決まります。

鉄剤を飲んでいる方は、やめずに伝えてください。役割が違うものとして併用を考えます。

血虚の相談は、どんな漢方薬局に行けばいいですか?

婦人科(月経・不妊・更年期)や皮膚の相談を多く受けている先生のいる店が目安です。紹介ページの相談例を見てください。

初回には、月経の状態と健診の血液検査の結果を持参すると、見立てが進みやすいとされています。

まとめ

  • 血虚とは、血が足りない状態です。顔色・爪・眠りにサインが出て、「乾く・色が薄い・夜に悪化する」が特徴です。
  • 血虚と貧血は同じではありません。貧血はヘモグロビンの数値、血虚は体のサインで見ます。黒い便や月経の急な増加は病院へ。
  • 10個のサインのうち3〜5個なら血虚が関わる可能性、6個以上なら血虚を中心に見てもらう目安です。
  • 相談先は、婦人科・皮膚の相談を多く受けている先生のいる店。初回には月経の状態と血液検査の結果を伝えましょう。

相談先を探すときは

漢方百名店では、婦人科や皮膚の相談を多く受けている先生のいる、全国の漢方薬局を紹介しています。

気血水の総合チェック、体質の言葉10選、生薬とキッチンの食材、得意分野で選ぶ基準の記事もあわせて参考にしてください。

顔色や爪が気になる方は、10個のサインの結果と健診の結果を持って、近くの漢方薬局に相談してみてください。