【この記事の要点】
- 海外や長期出張に漢方薬を持って行くときは、出発が決まった時点で漢方薬局に相談し、必要な日数と薬の形を一緒に決めます。
- 薬局に頼みたい書類は、処方内容の説明書(薬の名前・生薬名・服用量)とお薬手帳の写しの2つです。英文で用意できるかは店によって違います。
- 相談で伝えたいことは3つ。行き先と期間、飛行機での持ち方、現地で体調が変わったときの連絡手段です。
- 薬の持ち込みの決まりは国によって違います。書類があれば通ると決めつけず、行き先の大使館や税関の案内で確かめてください。
- 監修:武田 隆芳 先生(嶺耀堂・東京都新宿区)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)
「来月から3か月、海外出張になった。飲んでいる漢方薬はどうすればいい?」
「留学先に漢方薬を持って行きたいけれど、空港で止められないか不安です」
結論から言うと、出発が決まった時点で、漢方薬局に「行き先・期間・持ち方」を相談するのが近道です。
現地で同じ薬を買い足せないことが多く、持ち込みの決まりも国ごとに違うからです。
この記事では、薬局に頼みたい書類と、相談で伝えたい3つのことを整理します。
病院・調剤薬局ではどうなっているか|海外に薬を持ち出すときの書類と決まり
病院で出ている薬を海外へ持って行くときは、主治医や調剤薬局に相談する流れが一般的です。
必要になりやすいのが、英文の薬剤証明書(医師の診断書や薬剤情報提供書を英語で書いたもの)です。
英文の書類は有料で、発行に日数がかかることが多いとされています。
一般的には、本人の氏名、薬の名前(一般名)、1日の量、飲む目的、医師の署名が書かれます。
ただし、書類があれば通関できると決まっているわけではなく、最終的な判断は相手の国が行います。
国の許可が要る薬(麻薬・向精神薬)の一般論
睡眠薬や強い痛み止めなど、麻薬や向精神薬に分類される薬は、持ち出し・持ち込みに国の許可や申告が要るものがあります。
日本からの持ち出しにも手続きが要る薬があるため、該当する薬を飲んでいる方は、処方した医師に早めに確かめてください。
漢方薬の成分にも注意がいる国がある
漢方薬は植物や鉱物の生薬を組み合わせたものですが、国によっては特定の成分が規制の対象になることがあるとされています。
たとえば、麻黄(まおう)に含まれるエフェドリンは、国や地域によって扱いが違うとされています。
葛根湯や小青竜湯など、身近な処方にも麻黄が入っています。持って行く薬の生薬名を把握しておくと、調べやすくなります。
どの国で何が規制されるかは、行き先の大使館や税関の案内で確かめてください。
【武田 隆芳 先生からのアドバイス】
私は病院と調剤薬局で働いたのちに漢方の道に入り、今はオンラインでの相談を多く受けています。
海外に行く方の相談では、時差があっても連絡の取り方を先に決めておくと、現地で体調が変わったときに慌てません。
出発前の相談では、薬の名前と生薬名を書いたものを渡せるか、遠慮なく聞いてください。
出発前の一度の相談が、現地での安心につながります。
東洋医学ではどう見るか|時差と気候の変化で体調が揺れる「水土不服」
東洋医学には「水土不服(すいどふふく=土地の水や気候が体に合わず、体調を崩すこと)」という言葉があります。
慣れない土地の食べ物や水、湿度や気温の違いに体が追いつかず、胃腸や睡眠に出ると考えられてきました。
時差で眠りのリズムが乱れると、東洋医学では気(き=体を動かす力)の巡りが乱れた状態と見ます。
海外では、日本で飲んでいたときと体の状態が変わることがあるため、同じ飲み方を続けてよいかを相談で確かめると安心です。
海外滞在中に相談が多い3つの体の変化
- 胃腸の変化:水や油の違いで、お腹がゆるくなったり、もたれたりする
- 眠りの変化:時差と緊張で、寝つきが悪くなる・途中で目が覚める
- 気分の変化:言葉や環境の違いによる気疲れが、イライラや落ち込みとして出る
国内旅行・海外短期・長期滞在の比較表|持ち方と薬局に頼むこと
| 出かけ方 | 持ち方の目安 | 薬局に頼むこと |
|---|---|---|
| 国内旅行・帰省(数日〜1週間) | 日数分+予備1〜2日分。ふだんの形のまま | 残りの日数の確認。連休中の休業日の確認 |
| 海外短期(1〜2週間) | 日数分を手荷物に。説明書を同封 | 処方内容の説明書。液体の煎じ薬ならエキス剤に替えられるかの相談 |
| 海外長期(1か月以上・出張・留学) | 滞在日数分をまとめて。生薬名の一覧を添える | 日数とまとめ買いの可否。現地からの連絡手段。途中の見直しの時期 |
まとめると、出かける期間が長いほど「書類」と「連絡手段」の重みが増し、持ち方も手荷物が中心になるということです。
【北浦 久貴 先生からのアドバイス】
私のところには、不安や自律神経の乱れで悩む方の相談が多く寄せられます。
慣れない土地での生活は、それだけで体に負担がかかります。「薬を切らすかもしれない」という心配そのものが、体調を揺らすこともあると感じています。
出発前に日数と連絡の取り方を決めておくことは、薬の準備であると同時に、心の準備でもあります。
現地で眠れない、気持ちが落ち着かないと感じたら、我慢せず連絡をください。
薬局に頼みたい書類|処方内容の説明書とお薬手帳の写し
漢方薬局で頼んでおきたい書類は、大きく2つです。
処方内容の説明書(薬の名前・生薬名・服用量)
持って行く漢方薬の名前、入っている生薬の名前、1日に飲む量と回数を書いたものです。
英文で用意できるかどうかは、店によって違います。日本語だけの店、英文の雛形を持つ店、医師の診断書を勧める店があります。
書類は薬と一緒に手荷物に入れ、写真もスマートフォンに残しておきます。
お薬手帳の写し
病院の薬と漢方薬の両方が1冊に書かれていると、「本人が続けて飲んでいる薬」であることが伝わりやすくなります。
漢方薬局で買った薬も、お薬手帳に書いてもらえるか頼んでみてください。
書類があっても「通る」とは限らない
ここまでの書類は、説明の材料であって、通関を約束するものではありません。
行き先の国の持ち込みの決まりは、出発前に大使館や税関の公式の案内で確かめるのが基本です。
出発前に漢方薬局へ伝えたい3つのこと
書類と合わせて、相談で伝えておきたいのが次の3つです。
1つ目:行き先と期間(何日分が必要か・現地で買い足せないこと)
行き先の国と地域、出発日と帰国日を伝えます。ここから、必要な日数が決まります。
海外では同じ漢方薬を現地で買い足すことは、ほぼできないと考えておきます。国内の旅行より予備を多めにする方が多いです。
長期の場合、まとめて買えるかは店の方針によります。途中で見直しの時期が来る薬は、どうするかも聞いておきます。
2つ目:飛行機での持ち方(手荷物か預け荷物か・液体の煎じ薬の扱い)
薬は、紛失や高温を避けるため、預け荷物ではなく手荷物に入れるのが基本とされています。
国際線では液体の持ち込みに量の制限があり、煎じた液体の薬は持ち込みにくい場合があります。
ふだん煎じ薬を飲んでいる方は、滞在中だけエキス剤(粉や顆粒の形)に替えられるかを相談してみてください。店によって対応が違います。
刻み生薬(乾いた植物のままの形)は、植物の検疫の対象になる国もあるとされています。
3つ目:現地での連絡手段(体調が変わったときに相談できるか)
現地で体調が変わったとき、誰に、どう連絡するかを決めておきます。
オンライン・電話・メールのどれで相談できるか、時差を考えてどの時間帯なら返事がもらえるかを聞いておくと、現地で迷いません。
現地の病院を受診したときは、持って行った書類を見せ、帰国後に漢方薬局にもその内容を伝えてください。
自宅でできる準備・出発前の整え方
出発の1〜2週間前からできる準備は、次の5つです。
- 薬を日数で数える:出発日と帰国日から、滞在日数と予備の分を書き出す
- 袋や箱のまま持つ:中身を移し替えず、名前が分かる状態で手荷物に入れる
- 書類を写真に残す:処方内容の説明書とお薬手帳の写しをスマートフォンにも保存する
- 連絡先を控える:薬局の電話・メール・LINEなどと、受付時間を日本時間でメモする
- 行き先の決まりを調べる:大使館や税関の公式の案内で、薬の持ち込みの決まりを読む
食養生の面では、出発前の数日は夜ふかしを控え、胃腸に負担の少ない食事を心がけるとよいとされています。
出発前に確かめたいセルフチェック
出発の前に、次の項目で抜けがないか確かめてください。
- 行き先と期間を、漢方薬局に伝えた
- 滞在日数分と予備の薬を、手荷物に入れる準備ができている
- 処方内容の説明書とお薬手帳の写しを受け取り、写真にも残した
- 液体の煎じ薬を持って行く場合、別の形に替えられるか相談した
- 現地から相談する方法と、連絡がつく時間帯を確かめた
1つでも抜けがあれば、出発前にもう一度、漢方薬局に連絡してみてください。
なお、滞在中に強い腹痛や高い熱、呼吸の苦しさが出たときは、持って行った薬で様子を見ず、現地の医療機関にかかってください。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)
幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。
・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」
というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。
現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
海外に漢方薬を持って行っても大丈夫ですか?
国によって決まりが違うため、一律には言えません。行き先の大使館や税関の案内で確かめ、処方内容の説明書を薬局に頼んでおくのが基本です。
出発が決まったら、早めに漢方薬局に相談してください。
漢方薬は飛行機の手荷物に入れられますか?
粉や顆粒、錠剤の漢方薬は、手荷物に入れる方が多いです。液体の煎じ薬は、量の制限にかかることがあります。
航空会社と出発する空港の案内で確かめてください。
英文の説明書は漢方薬局で書いてもらえますか?
店によって違います。英文の雛形がある店、日本語の説明書に生薬名の英名を添える店、医師の診断書を勧める店があります。
早めに「英文で用意できますか」と聞いてみてください。
海外で漢方薬がなくなったらどうすればいいですか?
まず、ふだん相談している漢方薬局に連絡し、残りの期間の過ごし方を相談してください。
海外へ薬を送ることにも、国ごとの決まりがあります。
長期出張や留学の間、漢方薬局との相談は続けられますか?
オンラインや電話、メールで続けられる店があります。対応の形と時間帯は店によって違うので、出発前に確かめてください。
時差を考えて、連絡しやすい方法を1つ決めておくと続けやすいです。
まとめ
- 海外・長期出張に漢方薬を持って行くときは、出発が決まった時点で漢方薬局に相談するのが近道です。
- 頼みたい書類は、処方内容の説明書とお薬手帳の写しの2つ。英文で用意できるかは店によって違います。
- 伝えたいことは、行き先と期間・飛行機での持ち方・現地での連絡手段の3つです。
- 持ち込みの決まりは国によって違います。書類があっても通ると決めつけず、大使館や税関の案内で確かめてください。
相談先を探すときは
漢方百名店では、海外出張や留学の予定も含めて相談に乗ってくれる、全国の漢方薬局を紹介しています。
オンラインと店舗の違い、粉薬と煎じ薬の違い、飲み方のギモンもあわせて参考にしてください。



出発の予定が決まったら、お薬手帳を持って、ふだん相談している漢方薬局に早めに声をかけてみてください。
