【この記事の要点】
- 水滞(すいたい)とは、東洋医学で体の水分の巡りが滞り、体のどこかにたまっている状態のことです。天気に限らず一年を通して出ます。
- 朝夕のむくみ・重だるさ・舌の苔・めまい・胃の水音など、10個のサインで自分の傾向を確かめられます。
- 病院では腎臓・心臓・甲状腺の検査でむくみの原因を探します。検査で異常がないむくみや重だるさが、漢方相談の入口になります。
- 相談先は、痛みや腎臓の相談を多く受ける先生など、得意分野で選びます。初回はむくむ時間帯と一日の水分量、健診の結果を伝えます。
- 監修:前原 信太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/林 泰太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)
「夕方になると靴がきつい。朝は顔がはれぼったい」
「体が重だるくて、雨でもないのに頭がすっきりしない」
こうした「水っぽい不調」は、東洋医学では水滞(すいたい)として見ることがあります。
結論から言うと、水滞は病名ではなく、体の「水はけ」の傾向を表す言葉です。天気に限らず、一年を通して出ます。
この記事では、水滞のサイン10個のセルフチェックと、相談先を選ぶときの目安を整理します。
病院ではどう見るか|むくみの検査(腎臓・心臓・甲状腺)と利尿剤の考え方
病院でむくみを診るとき、まず探すのは「水がたまる原因になる病気があるか」です。
腎臓・心臓・甲状腺・肝臓の4つは、むくみの原因として最初に確かめられる臓器です。
血液検査と尿検査で見ている数値
腎臓は、尿検査のタンパクと、血液検査のクレアチニン・eGFR(腎臓のろ過の力を示す数値)で見ます。
心臓は、BNPという血液の数値や心エコー(超音波の検査)で、ポンプの力が落ちていないかを見ます。
甲状腺は、TSH・FT4というホルモンの数値です。働きが落ちると、むくみとだるさが出ることがあるとされています。
むくみが起きるしくみ
体の水分は、血管の中と外を行ったり来たりしています。血管の外にしみ出た水が戻りきれないと、むくみになります。
検査で異常がないむくみは「特発性」や「生活によるもの」とされ、様子を見ることが多いとされています。
利尿剤の考え方
利尿剤(フロセミドやスピロノラクトンなど)は、腎臓に働いて尿の量を増やし、体の水を減らす薬です。
心臓や腎臓の病気で水がたまっているときに使われ、カリウムなどの電解質を測りながら量を決めるのが一般的です。
一方、検査で異常がない「むくみやすい体質」に利尿剤が出ることは少なく、ここが漢方相談の入口になります。
【林 泰太郎 先生からのアドバイス】
私は腎臓や心臓の病気をお持ちの方の相談を多く受けています。むくみの相談では、まず病院の検査結果を見せてもらいます。
腎臓や心臓に病気があるときは、主治医の方針が土台で、漢方はその中で体を整える役目です。
検査で異常がないのにむくむ方は、水を動かす力の弱さを見ていきます。朝と夕方のどちらがむくむかも大事な手がかりです。
健診の結果の紙を、そのまま持ってきてください。数値の変化を一緒に追っていけます。
東洋医学ではどう見るか|水滞(すいたい)とは「水はけ」の偏り
東洋医学では、体を「気(き=体を動かす力)」「血(けつ=体を養うもの)」「水(すい=血以外の体液)」の3つで見ます。
水滞とは、この「水」の巡りが滞って、体のどこかにたまっている状態のことです。水毒(すいどく)や痰湿(たんしつ)と呼ぶこともあります。
水を動かすのは、脾(ひ=消化吸収の働き)・肺(はい)・腎(じん)の3つの働きとされています。
水滞は単独で起きるより、気の不足(気虚)や冷えと重なって出ることが多いとされています。
水滞のあらわれ方は人によって違う
足のむくみに出る人、頭の重さやめまいに出る人、胃の水音や関節の腫れぼったさに出る人がいます。
出る場所が違っても、東洋医学では「水の偏り」という同じ軸で見ます。ここが病院の見方との大きな違いです。
天気が崩れる前に悪化するタイプは、気象病(天気痛)として、次の記事で詳しく扱っています。

比較表|病院の「むくみ」と東洋医学の「水滞」の見方
| 見方 | 病院(西洋医学) | 東洋医学 |
|---|---|---|
| 何を見るか | 腎臓・心臓・甲状腺の検査の数値 | 舌の苔・むくむ時間帯・水分の取り方 |
| 対象になる人 | 検査で原因の病気が見つかった人 | 検査で異常がないが不調が続く人 |
| 手当ての中心 | 原因の病気への対応と利尿剤 | 水を動かす力(脾・腎)を整える |
| 変化の追い方 | 数値で追う | 体の感じ方と舌の変化で追う |
まとめると、病院は「水がたまる原因の病気」を探し、東洋医学は「水をさばく力」を見ます。
【前原 信太郎 先生からのアドバイス】
私は体の痛みや皮膚の相談を多く受けています。重だるい痛みや腫れぼったい関節の裏に、水滞が隠れていることがよくあります。
相談ではまず舌を見せてもらいます。苔が厚く白い、舌がぽってり大きい、縁に歯の跡がある、は水滞のサインとされています。
痛みの相談でも「むくみますか」「水分はどのくらい飲みますか」と聞くのは、このためです。
痛みだけ、肌だけと分けずに、体全体の水の流れとして伝えてもらえると、見立ての材料が増えます。
水滞タイプのサイン10個のセルフチェック表
次の表で、ここ1か月の自分に当てはまるものを数えてください。
| サイン | こんな様子なら当てはまる |
|---|---|
| 1 朝のむくみ | 顔やまぶたがはれぼったい。目が開けにくい |
| 2 夕方のむくみ | 靴や靴下の跡がくっきり残る。夕方に靴がきつい |
| 3 体の重だるさ | 頭に何かをかぶったような重さ。体が水を含んだように重い |
| 4 舌の苔 | 舌の苔が白く厚い。舌がぽってり大きく、縁に歯の跡がある |
| 5 めまい・ふわふわ感 | 立ち上がるとふらつく。乗り物に酔いやすい |
| 6 胃の水音 | 胃のあたりでぽちゃぽちゃ音がする。水を飲むと胃にたまる感じ |
| 7 尿の変化 | 尿の回数が少ない、または夜間に多い。量が日によって違う |
| 8 下痢・軟便 | 水っぽい便が出やすい。冷たいものでお腹を下す |
| 9 関節の腫れぼったさ | ひざや指がこわばる。腫れた感じがする |
| 10 汗と水分のかたより | 汗をかきにくいのに、水分は多めにとる。のどはあまり乾かない |
3つ以上当てはまれば水滞の傾向、6つ以上なら相談を考える目安とされています。
ただし、急に片足だけがむくむ、息切れを伴う、体重が短期間で増えるときは、先に病院で検査を受けてください。
水滞のサインが出やすい生活
冷たい飲み物、甘いもの、乳製品や脂っこいものが多い食事は、脾の働きを落とすとされています。
「水は多く飲むほど良い」と思って、一日2リットル以上を無理に飲む習慣も、水滞タイプでは見直すところです。
水滞タイプの人が相談先を選ぶときの目安
水滞のサインは、むくみ・痛み・めまい・胃腸と、いろいろな場所に出ます。相談先は、一番つらい症状の得意分野で選びます。
重だるい痛みや関節の腫れが主なら、体の痛みの相談を多く受ける先生がいる店が合いやすいとされています。
健診で腎臓の数値に指摘がある、心臓の持病があるという方は、腎臓・心臓の相談を多く受ける先生がいる店を選びます。
めまいや乗り物酔いが中心なら、めまいや自律神経の相談を多く受ける先生も選択肢です。
初回の相談で伝えること
初回に伝えたいのは5つです。むくむ時間帯、一日の水分量と飲み物の種類、便と尿の様子、天気や生理との関係、健診の結果です。
利尿剤や血圧の薬を飲んでいる方は、その名前も伝えてください。生薬との重なりを確かめる材料になります。
「むくみ」と一言で言わず、「夕方に靴がきつい」「朝は顔がはれる」と具体的に言うと、見立てが早くなります。
自宅でできるセルフケア・食養生
水滞タイプの養生は「入れすぎない・冷やさない・動かす」の3つが基本とされています。
- 水分は一気に飲まず、常温か温かいものを少しずつ:のどの渇きに合わせて飲み、寝る前の大量の水は控える
- 冷たいもの・甘いもの・乳製品を減らす:脾の働きを落とすとされる食べ物を、まず2週間控えてみる
- 水はけを助けるとされる食材を使う:はとむぎ、小豆、とうもろこし、冬瓜、きゅうり、しょうが
- 汗をかく習慣をつくる:早歩き20分、湯船に10分。汗と尿で水を外に出す
- 足を高くして休む・ふくらはぎを動かす:座り仕事の合間に、かかとの上げ下げを20回
食養生は2〜4週間続けて、朝のむくみや舌の苔がどう変わったかを見るのがおすすめです。
相談に行く前のセルフチェック
相談の準備ができているか、次の5つで確かめてください。
- 上の10個のサインのうち、当てはまった番号をメモした
- むくむ時間帯と、一日の水分量(だいたいの量と種類)を書き出した
- 直近の健康診断の結果、または病院の検査結果を手元に用意した
- 飲んでいる薬・サプリ・市販薬の名前を書き出した
- 一番つらい症状を一つに決め、その得意分野があるお店を候補にした
5つそろっていれば、初回の相談で見立ての材料が十分に伝わります。そろっていなくても、分かる範囲で伝えれば大丈夫です。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問
水滞とむくみは同じですか?
同じではありません。むくみは水滞のサインの一つで、水滞はめまいや重だるさ、胃の水音なども含む広い傾向を指します。
目に見えるむくみがなくても、水滞の傾向がある方もいます。
水滞の人は水を飲まないほうがいいですか?
飲まないのではなく、「一気に・冷たく・多すぎる」飲み方を見直すのが基本とされています。のどの渇きに合わせて、常温を少しずつ飲んでください。
極端な水分制限は体に負担になるため、持病がある方は主治医に確かめてください。
水滞に使われる漢方薬はありますか?
東洋医学では、水の巡りに着目した処方(五苓散、苓桂朮甘湯、防已黄耆湯など)が用いられることがあります。
ただし「むくみにはこの薬」と1対1で決まるものではなく、体質や冷えの有無で選び方が変わります。
水滞タイプは太りやすいですか?
「水太り」と呼ばれる、むくみで体重が増えやすい傾向はあるとされています。
体重より、朝夕の差や靴の跡で確かめるのが目安です。
水滞の相談はどんな漢方薬局に行けばいいですか?
一番つらい症状の得意分野で選びます。痛みが主なら痛みの相談を多く受ける先生、腎臓の数値が気になるなら腎臓の相談を多く受ける先生がいる店が目安です。
初回には、むくむ時間帯と一日の水分量、健診の結果を伝えてください。
まとめ
- 水滞(すいたい)は、体の水の巡りが滞って偏っている状態を表す言葉で、天気に限らず一年を通して出ます。
- 朝夕のむくみ、重だるさ、舌の苔、めまい、胃の水音など10個のサインのうち、3つ以上で傾向あり、6つ以上で相談の目安です。
- 病院では腎臓・心臓・甲状腺の検査で原因を探し、東洋医学では水をさばく力(脾・腎)を見ます。
- 相談先は、痛み・腎臓など一番つらい症状の得意分野で選び、初回にむくむ時間帯・水分量・健診の結果を伝えます。
相談先を探すときは
漢方百名店では、むくみや重だるさなど「水っぽい不調」の相談を受けている、全国の漢方薬局を紹介しています。
気血水の総合チェック、相談で聞く体質の言葉、得意分野で選ぶ基準、めまいの記事もあわせて参考にしてください。



セルフチェックの結果と健診の紙を持って、まず近くの漢方薬局で「水はけ」の見立てを聞いてみてください。
