【この記事の要点】
- 漢方薬とお酒は、同時に飲まず、時間をあけるのが基本です。お酒をやめなければ相談できない、ということではありません。
- 病院では、お酒と薬の組み合わせを肝臓での「相互作用」として考え、健診のγ-GTP・AST・ALTの数値を目安にします。
- 東洋医学では、お酒を「体を温め、度を越すと湿熱(しつねつ)を生むもの」と見ます。飲み方は体質の見立てに関わります。
- 相談で伝えたいことは3つ。①飲む頻度と量 ②翌日の体調の変化 ③健診の肝臓の数値です。
- 監修:林 泰太郎 先生(漢方薬局 太陽堂・東京都新宿区)/武田 隆芳 先生(漢方薬局 嶺耀堂・東京都新宿区)
「漢方薬を始めたけれど、晩酌はやめないとだめ?」
「飲み会の日は、漢方薬を飛ばしたほうがいい?」
漢方薬を続けている方から、お酒についての質問はよく聞かれます。
結論から言うと、お酒と漢方薬を同時に飲まず、時間をあけるのが基本です。やめなければならないわけではありません。
大切なのは、飲む量と頻度を隠さずに薬局へ伝えることです。
この記事では、飲み合わせの考え方と、相談で伝えたい3つのことを整理します。
病院ではどう見るか|アルコールと薬の相互作用・γ-GTPなどの数値
病院では、お酒と薬の組み合わせを「相互作用(そうごさよう)」として考えます。
相互作用とは、一緒にとることで、薬の働きが強まったり弱まったりすることです。
お酒も薬も、多くは肝臓で分解されます。同じ場所で処理されるため、片方の分解が遅れることがあるとされています。
お酒と薬が体の中で出会う場所(肝臓の酵素)
アルコールは肝臓の酵素で分解され、アセトアルデヒドという物質を経て、最後は水と二酸化炭素になります。
薬の多くも、肝臓の酵素(CYP=シップと呼ばれる酵素の仲間)で分解されます。
お酒を飲んだ直後は、酵素がアルコールの処理に使われ、薬の分解が後回しになることがあるとされています。
健診で見ている肝臓の数値(γ-GTP・AST・ALT)
健康診断の血液検査では、γ-GTP(ガンマジーティーピー)・AST・ALTが肝臓の項目です。
γ-GTPはお酒の影響を受けやすい数値とされ、飲む量が増えると上がる方が多いとされています。
ASTとALTは、肝臓の細胞が傷んだときに血液へ出てくる酵素で、脂肪肝や肝炎でも上がります。
基準値は健診機関によって少し違います。手元の結果表に書かれた基準と、去年との差を見てください。
お酒との組み合わせで注意されやすいお薬
睡眠薬や抗不安薬は、お酒と一緒にとると眠気やふらつきが強く出ることがあるとされています。
解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(カロナールなど)は、日常的な飲酒で肝臓への負担が増すとされています。
糖尿病の薬、血圧の薬、抗ヒスタミン薬(かぜ薬・花粉症の薬)も、お酒との組み合わせで注意を受けることがあります。
漢方薬も医薬品なので、同じ考え方で「飲んでいるもの」に含めて考えます。
【林 泰太郎 先生からのアドバイス】
私は肝臓や腎臓の相談を受けることが多く、お酒の話は欠かさず聞いています。
聞きたいのは「やめられるか」ではなく、どのくらい・どんな頻度で・どんなときに飲むかです。
健診の結果を持ってきてもらえると、数値の動きと体の状態を一緒に見られます。
お酒のことを正直に話してもらえるほど、見立てははっきりします。遠慮なく教えてください。
東洋医学ではどう見るか|お酒は体を温め、度を越すと「湿熱」を生む
東洋医学では、お酒は「体を温めて、気(き)と血(けつ)の巡りを動かすもの」と考えられています。
一方で、度を越すと余分な熱と水分が体に残り、湿熱(しつねつ=体にたまった余分な湿気と熱)を生むとされています。
湿熱は、胃もたれ・口の苦み・寝汗・肌の赤みやかゆみなどとして表れると見ます。
同じ量を飲んでも、体質によって出方が違うため、相談では飲み方と体質をあわせて見ます。
お酒の影響が出やすい3つの体質タイプ
- 湿熱(しつねつ)タイプ:顔が赤くなりやすく、脂っこいものとお酒が好き。翌日に胃が重く、便がすっきりしない
- 気滞(きたい=気の流れが滞った状態)タイプ:ストレスがあると飲む量が増える。イライラやため息が多い
- 気虚(ききょ=気が足りない状態)タイプ:少量でも翌日に疲れが残る。飲むとすぐ眠くなる
漢方薬とお酒の「時間をあける」考え方
漢方薬の多くは食前や食間に飲みます。お酒は食事と一緒のことが多いので、飲む時間は自然に離れます。
晩酌の日は、漢方薬を夕食前に飲み、寝る前の分をどうするかは薬局に確かめておくと迷いません。
生薬の中には、酒で蒸したり酒で加工するものもあります(例:酒で蒸した地黄)。お酒と生薬は昔から近い関係です。
だからこそ「一緒に飲んでも平気」ではなく、「量と時間を整えて付き合う」が基本と考えます。
病院の薬と漢方薬、お酒との付き合い方の比較表
| 見るところ | 病院の薬(処方薬・市販薬) | 漢方薬 |
|---|---|---|
| 体の中で起きること | 肝臓の酵素で分解が重なる。眠気・血糖の変動 | 同じく肝臓で分解。湿熱が増え、体質の見立てが変わる |
| 確かめる数値 | γ-GTP・AST・ALT、血糖、血圧 | 同じ数値を薬局にも見せる。舌・脈・胃腸の状態 |
| 飲むときの基本 | 同時に飲まない。説明書と薬剤師の指示 | 同時に飲まない。時間をあけ、量と頻度を相談で伝える |
| 注意が強いもの | 睡眠薬・抗不安薬・アセトアミノフェン | 甘草や麻黄が多い処方、附子を含む処方は飲み方を確かめる |
まとめると、「同時に飲まない」「数値を見る」「飲む量を隠さない」はどちらにも共通です。
漢方薬ならではの点は、お酒の飲み方が体質の見立てそのものに関わるところです。
【武田 隆芳 先生からのアドバイス】
私は病院と調剤薬局で働いてから漢方の道に入りました。病院の薬でも、お酒の確認は欠かせないものでした。
漢方薬も同じです。「漢方だからお酒と一緒でも平気」という思い込みは、いちど外してほしいと思います。
とくに眠りや気分の相談で漢方薬を飲む方は、お酒との組み合わせで眠気が強く出ることがあります。
飲み会の予定がある日の飲み方は、前もって聞いてください。答えは一人ひとり違います。
お酒について漢方相談で伝えたい3つのこと
ここからは、漢方相談で先生に伝えてほしい3つのことを、順に見ていきます。
1つ目:飲む頻度と量(週に何日・1回にどのくらい)
「お酒は飲みますか」と聞かれたら、「週に何日・1回にビール何本」のように数で伝えると、はっきり伝わります。
「たしなむ程度」「付き合いで」という言い方は、人によって中身が大きく違います。
純アルコール20g(ビール中びん1本ほど)が1日の目安とされていますが、相談では実際の量をそのまま話してください。
飲まない日が週に何日あるか、飲む時間帯(夕食どきか、寝る直前か)も見立ての材料になります。
2つ目:翌日の体調の変化
翌日に残るもの(頭の重さ・胃もたれ・むくみ・下痢)は、体がお酒をどう処理しているかのサインです。
以前より残りやすくなった、量は同じでも翌日がつらい、という変化はとくに伝えてください。
漢方薬を始めてから翌日の感じ方が変わったときも話してください。見立てを見直す手がかりになります。
3つ目:健診の肝臓の数値
健康診断や人間ドックの結果は、γ-GTP・AST・ALTの3つと、去年との差が分かる形で持参してください。
数値が基準の中でも、前の年から上がり続けていれば、飲み方の見直しを一緒に考える材料になります。
基準を超えた項目があるときは、病院の再検査が先です。薬局はその結果を踏まえて、体質の面から支えます。
肝臓の数値は、お酒だけでなく脂肪肝や薬の影響でも動きます。思い当たることは全部伝えてください。
自宅でできるセルフケア・食養生
お酒と上手に付き合うために、自宅でできる工夫は次の5つです。
- 休肝日を決める:週に2日、できれば続けて空ける日を作るとよいとされています
- 飲む前に食べる:空腹で飲まない。豆腐・枝豆・野菜から始める
- 同じ量の水を飲む:お酒1杯に水1杯。翌日のむくみと頭の重さに備える
- 寝る直前の酒を控える:眠りが浅くなりやすいとされる。寝る2〜3時間前までに
- 翌朝は温かい汁物:胃腸を休ませる。冷たいものを一気に飲まない
食養生では、湿熱を外に出すとされる食材(大根・緑豆・はと麦・きゅうり)が用いられます。
二日酔いのときに五苓散や黄連解毒湯が用いられることもありますが、体質で選び方が変わります。薬局で確かめてください。
お酒と漢方薬の付き合い方セルフチェック
次の項目で、当てはまるものを数えてください。
- 漢方薬とお酒を、同じタイミングで飲むことがある
- 週に飲む日数と1回の量を、薬局に伝えていない
- 以前より、翌日に残りやすくなった
- 健診のγ-GTPやAST・ALTが、去年より上がっている
- ストレスがあると、飲む量が増える
2つ以上当てはまる方は、次の相談で飲み方を話題にしてみてください。
なお、やめようとすると手が震える、朝から飲みたくなる、という状態は、病院(内科・精神科)での相談が先です。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
漢方薬とお酒は一緒に飲んでも大丈夫ですか?
同時に飲まず、時間をあけるのが基本です。お酒をやめなければならないわけではありません。
飲む量と頻度を薬局に伝え、自分の処方での飲み方を確かめてください。
飲み会の日は、漢方薬を飛ばしたほうがいいですか?
自己判断で飛ばす前に、薬局に聞いてください。夕食前の分は飲み、寝る前の分だけ調整する、という答えが多いとされています。
お酒でγ-GTPが高いと言われました。漢方薬局に相談できますか?
相談できます。ただし、再検査や受診の指示が出ているときは、そちらが先です。
結果の紙を持参すると、数値の動きを見ながら、飲み方と体質の面から一緒に考えられます。
二日酔いに漢方薬は使えますか?
五苓散や黄連解毒湯などが用いられることがありますが、体質によって選び方が変わります。
市販品を買う前に、ふだん飲んでいる漢方薬との重なりも含めて、薬剤師に相談してください。
お酒をやめないと、漢方相談は受けられませんか?
受けられます。先生が知りたいのは「やめるかどうか」ではなく、実際の飲み方です。
隠さず伝えるほど見立てがはっきりし、飲み方の工夫も一緒に考えやすくなります。
まとめ
- 漢方薬とお酒は、同時に飲まず、時間をあけるのが基本です。やめなければならないわけではありません。
- 病院では肝臓での相互作用とγ-GTP・AST・ALTを、東洋医学では湿熱と体質を見ます。
- 相談で伝えたいのは、飲む頻度と量・翌日の体調の変化・健診の肝臓の数値の3つです。
- 「漢方だから平気」と決めず、飲み会の日の飲み方は前もって薬局に聞いてみましょう。
相談先を探すときは
漢方百名店では、お酒の習慣も含めて相談に乗ってくれる、全国の漢方薬局を紹介しています。
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晩酌を続けながら漢方薬を飲みたい方は、健診の結果を持って、近くの漢方薬局に相談してみてください。
