【この記事の要点】
- 漢方薬局の掛け持ち(2軒に同時に相談すること)は禁止されていませんが、注意点があります。
- 気をつけたいのは3点。①同じ生薬が重なる ②変化の理由が分からなくなる ③費用と手間が二重になるです。
- 掛け持ちする場合は、飲んでいる漢方薬・病院の薬・サプリメントを、両方の店にもれなく伝えてください。
- 「合わないから店を変えたい」という場合は掛け持ちではなく、乗り換え(セカンドオピニオン)の話になります。
- 監修:林 泰太郎 先生(太陽堂/東京都新宿区)/武田 隆芳 先生(嶺耀堂/東京都新宿区)
「今の漢方薬局に通いながら、別の店にも相談してみたい」。
そう考えたとき、これは失礼にあたるのだろうかと迷う方は少なくありません。
結論から書きます。掛け持ちは禁止されていませんし、失礼でもありません。
ただし、体にとっても、お財布にとっても、押さえておきたい注意点があります。
「掛け持ち」と「乗り換え」は別の話
まず、言葉を分けておきます。似ているようで、進め方がまったく違うためです。
掛け持ち(はしご)は、2軒に同時に相談している状態を指します。
一方の乗り換えは、今の店をいったん区切って、別の店に移ることです。
「今の店と合わない気がする」という悩みであれば、多くの場合は乗り換えの話になります。
この記事で扱うのは、今の店に通いながら、別の店にも相談するほうの掛け持ちです。
掛け持ちで気をつけたい3つのこと
①同じ生薬が重なることがある
いちばん大切なのがこの点です。漢方薬は、複数の生薬を組み合わせて作られています。
そのため、処方名が違っても、中の生薬が一部重なることがあります。
たとえば甘草(かんぞう=多くの処方に使われる代表的な生薬)がその一つです。
2軒で別々に選ばれた漢方薬を同時に飲むと、量の見通しが立てにくくなります。
だからこそ、飲んでいるものを両方の店に伝えることが欠かせないとされています。
②変化があっても、理由が分からなくなる
2軒の漢方薬を同時に飲み始めると、体調が動いたときの読み解きが難しくなります。
楽になった場合も、合わないと感じた場合も、どちらが関係したのか判断できません。
漢方の相談は、飲んだあとの変化を見ながら組み立てを調整していく進め方が基本です。
その手がかりが二重になると、どちらの店も次の一手を出しにくくなります。
③費用と手間が二重になる
見落とされがちですが、掛け持ちは単純に月々の負担が2倍近くになります。
相談の時間も、通う手間も、それぞれの店で別に必要になります。
続けるほど差が開くため、始める前に予算の上限を決めておくと安心です。
それでも掛け持ちを考えたくなる場面
注意点はありますが、掛け持ちを考えるのが自然な場面もあります。
よくあるのは、相談したい内容が2つあり、得意分野が分かれているときです。
漢方の相談店は、呼吸器、皮膚、婦人科、メンタルなど、得意な領域がそれぞれ違います。
また、遠方の店に通っていて、近所にも相談先を持っておきたいという場合もあります。
こうしたときは、どちらの店にも掛け持ちであることを先に伝えるのが基本の形です。
伝えたうえで、飲む時間をずらす、片方は生活の助言だけにする、といった調整もできます。
よくある誤解「2軒に見てもらえば早く合うものが見つかる」
掛け持ちを考える理由として、いちばん多いのがこの考え方かもしれません。
ただ、実際には数を増やしても、早さにつながるとは限りません。
漢方の相談は、飲んだあとの変化を見て、次の組み立てに反映していく積み重ねだからです。
同時に2つの流れが動くと、その積み重ねがどちらの店でも途切れやすくなります。
結果として、同じところを二重に足踏みする形になることもあります。
早さを求めるなら、1軒に絞って経過を細かく伝えるほうが、道筋は見えやすくなります。
掛け持ち・1軒に絞る・乗り換えの比較
| 進め方 | 向いている場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 掛け持ち | 相談内容が2つあり、得意分野が違う | 生薬の重なり/費用が二重 |
| 1軒に絞る | 体質から立て直したい | 合うまでに時間がかかることがある |
| 乗り換え | 説明や相性に納得できない | 経過の引き継ぎが必要 |
表のとおり、悩みが1つなら1軒に絞るほうが進みやすいと考えられています。
掛け持ちが向くのは、相談したい内容そのものが分かれているときだと言えます。
2軒に相談する前に確認したい4つのこと
1. 飲んでいるものを、もれなく両方に伝える
漢方薬の名前、病院の薬、サプリメントまで含めて一覧にしておきます。
写真を撮って見せるだけでも構いません。伝え忘れがいちばん困るためです。
2. 掛け持ちであることを、最初に言う
後から分かるより、最初に伝えておくほうがお互いに動きやすくなります。
気まずさを感じる必要はありません。相談店にとっては珍しい話ではないためです。
3. いつまで続けるか、期限を決めておく
掛け持ちは、そのままにすると年単位で続いてしまいがちです。
「2〜3か月試して1軒に絞る」といった区切りを、あらかじめ決めておきます。
4. 記録を1か所にまとめる
2軒分の内容を別々に覚えておくのは大変です。ノート1冊にまとめてしまいます。
日付、飲んだもの、体調の動きを並べておくと、絞り込むときの判断材料になります。
なお、持病があり病院に通っている方は、かかりつけの医師にも伝えておくと安心です。
掛け持ちを考える前のセルフチェック
次の6つを確かめてみてください。あてはまる数で、進め方の目安が見えてきます。
- 相談したい悩みが、はっきり2つに分かれている
- 今の店に「合わない」と感じているわけではない
- 飲んでいるものを一覧にして説明できる
- 2軒分の費用を、無理なく続けられる
- 掛け持ちであることを、両方に伝えるつもりがある
- いつまで試すか、期限を決められる
チェックが5つ以上なら、掛け持ちという選び方も現実的だと考えられます。
2つ以下の場合は、今の店に気持ちを伝え直すほうが近道かもしれません。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
よくある質問
漢方薬局の掛け持ちは失礼になりませんか?
失礼にはあたりません。相談店にとっては珍しい話ではなく、最初に伝えてもらえるほうが助かる場合が多いとされています。黙って続けるより、掛け持ちであることを先に共有してください。
2軒の漢方薬を同時に飲んでも大丈夫ですか?
自己判断で重ねて飲むことはおすすめできません。処方名が違っても、中に入っている生薬が一部重なることがあるためです。飲んでいるものを両方の店に伝え、飲み方の調整について相談してください。
病院で処方された漢方薬と、薬局の漢方薬の掛け持ちはどうですか?
この場合も考え方は同じです。お薬手帳を持参して、薬局側に病院の処方内容を伝えてください。あわせて、漢方相談店に通っていることを、かかりつけの医師にも伝えておくと安心です。
掛け持ちはいつまで続けていいですか?
あらかじめ期限を決めておく方法がすすめられます。目安としては2〜3か月ほど試し、そのあとどちらか1軒に絞る形です。期限を決めないままだと、費用も手間も二重のまま続いてしまいます。
今の店に不満があるときも掛け持ちがいいですか?
その場合は掛け持ちではなく、乗り換え(セカンドオピニオン)として考えるほうが整理しやすくなります。まずは今の店に疑問を伝え直し、それでも納得できないときに移る、という順番が一般的です。
まとめ
- 掛け持ちは禁止ではない。ただし生薬の重なり・判断のしにくさ・費用の3点に注意します。
- 向くのは悩みが2つに分かれているとき。悩みが1つなら1軒に絞るほうが進みやすくなります。
- 飲んでいるものは、もれなく両方に伝える。写真や一覧を見せる方法で構いません。
- 期限と記録を決めてから始める。2〜3か月を目安に、1軒へ絞る形が整理しやすくなります。
相談先を探すときは
掛け持ちか乗り換えかで迷うときは、次の記事もあわせてご覧ください。




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