家族の漢方薬を分けて飲んでもいい?同じ症状でも貸し借りしないほうがいい4つの理由【薬剤師監修】

【この記事の要点】

  • 家族の漢方薬を分けて飲むことは、同じ症状でも避けたほうがよいとされています。漢方薬は「その人の体質」に合わせて選ばれるからです。
  • 分けないほうがいい理由は4つ。体質(証)が違う、年齢と体格で量が違う、持病やほかの薬と重なる、合わなかったときに原因が分からなくなる、です。
  • 病院の薬が「処方された本人のためのもの」であるのと同じように、漢方薬も医薬品です。
  • 家族で漢方薬を取り入れたいときは、一人ずつ相談するか、相談のときに「家族も同じ悩みがある」と伝えましょう。
  • 監修:前原 信太郎 先生(太陽堂・東京都新宿区)/竹部 晃之 先生(いわい薬局・埼玉県さいたま市)

「母が飲んでいる漢方薬、調子がいいらしい。私も同じ冷え性だから、少し分けてもらおうかな」

「子どもが風邪っぽい。夫の葛根湯を、半分だけ飲ませてもいい?」

家族の誰かが漢方薬を飲んでいると、こんなふうに迷うことがあります。

結論から言うと、同じ症状でも、家族の漢方薬を分けて飲むのは避けたほうがよいとされています。

この記事では、その4つの理由と、家族で漢方薬を取り入れたいときの相談のしかたを整理します。

病院ではどう見るか|処方薬は「その人のため」に量まで決められている

病院の薬は、診察や検査をもとに、その人の病名・年齢・体重・持病を見て選ばれます。

そのため、処方された薬は、処方された本人が飲むことを前提にしています。家族に分けることは想定されていません。

薬の量は、年齢・体重・腎臓の働きで変わる

子どもの薬は、体重1kgあたりの量で計算されることが多くあります。

高齢の方は、血液検査の腎臓の数値(クレアチニン・eGFR)を見て、量を減らすことがあります。

市販薬の説明書(添付文書)にも、「15歳以上」「7歳以上15歳未満」のように、年齢ごとの量が書かれています。

飲み合わせで確認される生薬(甘草・麻黄)

漢方薬にも、持病やほかの薬との組み合わせで気をつける生薬があります。

甘草(かんぞう)は、とりすぎると血圧が上がったり、むくんだりすることがあるとされています。

麻黄(まおう)は、脈や血圧を上げる方向に働くとされ、高血圧や心臓の持病がある方は注意が要ります。

家族の中でも、持病や飲んでいる薬は一人ひとり違うため、同じ漢方薬でも気をつける点が変わります。

【前原 信太郎 先生からのアドバイス】

皮膚の相談では、同じ「かゆみ」でも、乾いているのか、赤みや熱があるのかで考え方が変わります。

親子で似た湿疹に見えても、肌の状態まで同じとは限りません。

家族の漢方薬を試す前に、ご本人の肌を見せていただけると、選び方がはっきりします。

東洋医学ではどう見るか|同じ症状でも「証」が違えば選ぶ漢方薬が変わる

東洋医学では、症状だけでなく「証(しょう)」を見て漢方薬を選びます。

証とは、その人の体質と、今の体の状態をまとめた見立てのことです。

同じ病名や症状でも、証が違えば別の漢方薬を選ぶ。これを「同病異治(どうびょういち)」と言います。

家族で体質が似ることも、違うこともある

同じ食事、同じ家で暮らしていると、体質が似てくることはあります。

ただ、年齢・性別・仕事・睡眠のリズムが違えば、同じ「冷え」でも中身が違うことが多いものです。

同じ「冷え」でも違う3つの体質タイプ

  • 気虚(ききょ)タイプ:疲れやすく、体を温める力そのものが足りない
  • 血虚(けっきょ)タイプ:顔色が悪く、手足の先まで栄養が届きにくい
  • 気滞(きたい)タイプ:ストレスで巡りが滞り、手足は冷えるのに顔はのぼせる

母は気虚タイプ、娘は気滞タイプ、ということもあります。この場合、選ばれる漢方薬は別のものになります。

家族で違いやすいポイントの比較表

違いやすいポイント なぜ違うのか 分けて飲むと起きやすいこと
体質(寒がり・暑がり、体力) 年齢・生活リズム・性別 体質に合わず、冷えやのぼせを感じる
年齢・体格 子どもと高齢者は量の考え方が違う 量が多すぎる、または少なすぎる
持病・ほかの薬 血圧・心臓・腎臓の持病、服薬の有無 甘草や麻黄が重なる
胃腸の強さ 同じ家族でも、もともとの胃腸の丈夫さが違う 胃もたれやお腹のゆるさが出る
妊娠・授乳 慎重に扱う生薬がある 主治医に伝わらないまま飲んでしまう

まとめると、家族は「症状が似ていても、体の中身は違う」と考えておくと安心です。

表の5つのうち、1つでも違いそうなら、分ける前に相談してください。

【竹部 晃之 先生からのアドバイス】

ダイエット目的の漢方薬は、家族や知人の間で「あれで体重が落ちた」と話題になりやすいものです。

たとえば防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、体力が充実していて便秘がちな方向けとされています。

胃腸が弱い方や体力のない方が飲むと、お腹がゆるくなることがあるので、人に合わせて選ぶことが大切です。

家族の漢方薬を分けて飲まないほうがいい4つの理由

ここからは、4つの理由を一つずつ見ていきます。

理由1:体質(証)が違えば、同じ漢方薬でも合わないことがある

漢方薬は、体を温める、冷ます、補う、巡らせるなど、それぞれ向きが決まっています。

葛根湯(かっこんとう)は、体力が中くらい以上で、汗が出ていない風邪のひきはじめに用いられることが多い処方です。

同じ風邪でも、汗をかいている人や胃腸が弱い人には、別の考え方が選ばれることがあります。

理由2:年齢と体格で、ちょうどいい量が違う

大人の漢方薬を「半分だけ」子どもに飲ませる、という分け方は、量の目安として正確ではありません。

市販の漢方薬の中には、「〇歳未満は服用しないこと」と書かれたものもあります。

子どもや高齢の家族には、その人の年齢と体格に合わせて、量から決めてもらうのが基本です。

理由3:持病やほかの薬と、生薬が重なることがある

甘草は、多くの漢方薬や市販の風邪薬・胃腸薬にも入っています。

家族の漢方薬を足すと、知らないうちに甘草の量が増えることがあります。血圧の薬を飲んでいる方は特に注意が要ります。

妊娠中・授乳中の方は、慎重に扱う生薬があるため、主治医と薬剤師の両方に確かめてください。

理由4:合わなかったとき、原因が分からなくなる

相談して選んだ漢方薬なら、どの薬を、いつから、どのくらい飲んだかの記録が残ります。

家族から分けてもらった漢方薬は、その記録がありません。発疹や胃の不快感が出ても、原因をたどりにくくなります。

合わないと感じたときに相談できる先があることも、自分用に選んでもらう大事な理由です。

家族で取り入れたいときの相談のしかた・家庭でできる食養生

家族で漢方薬を取り入れたいときは、次の4つを意識すると相談がスムーズです。

  • 一人ずつ相談する:家族で一緒に行き、順番に話を聞いてもらう方法もある
  • 「家族も同じ悩み」と伝える:住まいや食事の共通点は、見立ての手がかりになる
  • 来られない家族の様子はメモにする:年齢、症状、飲んでいる薬を書いて持参する
  • 余った漢方薬は自己判断で回さない:使い道は、出してもらった薬局に聞く

一方、食養生は家族で分け合いやすいケアです。温かい汁物や、旬の根菜を食卓に増やすことから始められます。

冷たい飲み物を控える、夜ふかしを減らすといった生活の見直しも、家族全員で取り組めます。

分けて飲む前に確かめたいセルフチェック

飲もうとしている人について、次の項目を確かめてください。

  • 15歳未満、または65歳以上である
  • 妊娠中、または授乳中である
  • 病院の薬を飲んでいる(血圧・心臓・腎臓の薬など)
  • 胃腸が弱く、お腹がゆるくなりやすい
  • ほかの漢方薬や、市販の風邪薬・胃腸薬も飲んでいる
  • 飲んでいる家族と、寒がり・暑がりが違う

1つでも当てはまるなら、分けて飲まずに、本人の分を相談してください。

すでに飲んでしまい、発疹・むくみ・動悸などが出たときは、飲むのをやめて医療機関か薬局に連絡してください。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表

祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。

6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。

その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。

記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出

2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。

・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」

という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

家族と同じ症状なら、同じ漢方薬を飲んでもいいですか?

おすすめしません。漢方薬は症状だけでなく体質(証)で選ぶため、同じ症状でも合う漢方薬が違うことがあります。

気になる方は、本人の体質を見てもらってから選びましょう。

大人の漢方薬を、子どもに少なめに飲ませてもいいですか?

自己判断で量を減らして飲ませるのは避けてください。年齢によっては飲めない漢方薬もあります。

子どもの漢方相談では、年齢と体格に合わせて量から決めてもらえます。

余った漢方薬を、家族にあげてもいいですか?

あげるのは控えてください。余った理由(飲み忘れ・体調の変化)も含めて、出してもらった薬局に相談するのが安心です。

夫婦や親子で、同じ漢方薬を出されることはありますか?

あります。一人ずつ見立てた結果、体質が近ければ同じ漢方薬になることもあります。

大切なのは、結果が同じでも「一人ずつ見てもらったうえで」という点です。

来られない家族の分も、一緒に相談できますか?

ご家族が代わりに相談できる薬局もあります。年齢・症状・飲んでいる薬をメモにして持参すると、話が進みやすくなります。

細かい症状は、本人と電話やビデオ通話でつないで確認することもあります。

まとめ

  • 家族の漢方薬を分けて飲むのは、同じ症状でも避けたほうがよいとされています。
  • 理由は、体質(証)・年齢と体格・持病やほかの薬・合わなかったときの原因、の4つが人によって違うからです。
  • 子ども・高齢の方・妊娠中や授乳中の方は、特に本人の分を相談してください。
  • 食養生や生活の見直しは、家族で分け合いやすいケアです。

相談先を探すときは

漢方百名店では、家族それぞれの体質に合わせて相談に乗ってくれる、全国の漢方薬局を紹介しています。

先生ごとに見立てが変わる理由、子どもの漢方、家族が代わりに相談するとき、副作用の見分け方もあわせて参考にしてください。

家族で同じ悩みがある方は、まず一人分から、近くの漢方薬局に相談してみてください。