調べたら別の症状の薬だった?漢方薬の効能書きと相談内容が違う3つの理由【薬剤師監修】

【この記事の要点】

  • 漢方薬局でもらった漢方薬の効能書きに、自分の相談した症状が載っていないのは、よくあることです。
  • 理由は3つ。漢方薬は病名ではなく「証(体の状態)」で選ばれる/効能書きには代表的な使われ方しか載らない/困っている症状より体の土台から整える順番で選ぶことがある。
  • 市販の漢方薬の効能書きには「体力中等度で…」のような体質の条件が書かれていて、ここが病院の薬との大きな違いです。
  • 不安になったら、調べる前に「なぜこのお薬ですか」と選んだ専門家に聞くのが近道です。自己判断で別の漢方薬に替えるのは避けましょう。
  • 監修:林 泰太郎 先生(太陽堂・東京都新宿区)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)

漢方薬局で相談して、漢方薬を受け取った帰り道。名前をスマホで調べてみたら、こんなことはありませんか。

「私は不眠で相談したのに、効能には『胃もたれ』『食欲不振』と書いてある」

「頭痛の相談なのに、『月経不順』『更年期障害』の薬だった。間違えられた?」

心配になる気持ちはよく分かります。でも、効能書きと相談内容が違うのは、漢方薬ではごく自然なことです。

この記事では、全国の漢方相談店を紹介するポータルサイトの立場から、その理由を3つに分けて説明します。

病院ではどう見るか|添付文書と効能の欄のしくみ

ネットで調べたときに出てくる「効能」は、添付文書(てんぷぶんしょ)という公的な説明書に書かれた内容です。

添付文書には、国が承認した範囲で「どんなときに使うか」が書かれています。これが効能の欄です。

病院の薬は、血液検査や画像検査で病名を決め、その病名に対して承認された薬を選ぶのが基本です。

たとえば解熱鎮痛薬なら「痛み・発熱」、胃酸を抑える薬なら「胃炎・逆流性食道炎」のように、病名や症状と薬がほぼ1対1で結びついています。

この感覚のまま漢方薬の効能書きを読むと、「自分の症状が無い=間違い」と感じてしまいます。

漢方薬の効能書きには「体力」の条件がある

市販の漢方薬(第2類医薬品)の効能書きをよく見ると、症状の前に条件が書かれています。

「体力中等度以下で、疲れやすく、冷えやすいものの次の諸症」のような書き方です。

これは、「こういう体質の人の、こういう症状に」という2段構えになっているということです。

病院の薬の効能書きには、ふだんこの「体質の条件」はありません。ここが漢方薬の大きな特徴です。

病院で処方される医療用の漢方薬にも効能の欄はありますが、保険の仕組み上、病名に合わせて書かれている場合が多いとされています。

【林 泰太郎 先生からのアドバイス】

「ネットで調べたら、全然違う症状の薬でした」と、次の相談で打ち明けてくださる方がいます。

私たちは、症状の名前ではなく、その症状を生んでいる体の状態を見て漢方薬を選んでいます。

効能書きに載っていないからといって、間違いとは限りません。

気になったときは、調べる前に「なぜこのお薬ですか」と聞いてもらえると、こちらも説明しやすいです。

東洋医学ではどう見るか|効能書きと相談内容が違う3つの理由

東洋医学では、症状の名前ではなく、体全体のバランスから漢方薬を選びます。ここから3つの理由を見ていきましょう。

理由1:漢方薬は病名ではなく「証」で選ばれている

証(しょう)とは、東洋医学で見た今の体の状態のこと。冷え・疲れ・巡りの滞りなど、体質の傾向を指します。

同じ証なら、頭痛でもめまいでも生理の不調でも、同じ漢方薬が選ばれることがあります。

これを東洋医学では「異病同治(いびょうどうち)」=違う病気でも同じ手当てと呼びます。

逆に、同じ「頭痛」でも証が違えば、選ばれる漢方薬は変わります。先生ごとに見立てが変わる理由も、この証にあります。

理由2:効能書きには代表的な使われ方しか載らない

漢方薬の多くは、何百年も前から使われてきた処方です。使われ方の幅は、とても広いものです。

一方、効能の欄に書けるのは、国に承認された代表的なものだけです。

そのため、効能書きは「このお薬の使われ方の一部を切り取ったもの」と考えるほうが実態に近いです。

たとえば、効能の欄に「月経不順」「冷え症」「更年期障害」が並ぶ漢方薬が、頭痛やめまいの相談で選ばれることもあります。

「更年期障害」の文字を見てショックを受ける方もいますが、それは効能書きの代表例であって、あなたへの診断ではありません。

理由3:困っている症状より、体の土台から整える順番で選ぶことがある

東洋医学では、いちばん困っている症状を「枝葉」、その原因になっている体の状態を「根っこ」と見ることがあります。

たとえば不眠の相談でも、胃腸の弱りが眠りの浅さにつながっていると見立てれば、まず胃腸を整える漢方薬が選ばれることがあります。

この場合、効能書きには「胃もたれ」「食欲不振」と書かれていて、「不眠」の文字はありません。

「根っこから整える順番」で選ばれると、効能書きと相談内容はずれて見えるのです。

順番は体の変化を見ながら変わっていくので、途中で漢方薬が替わることもよくあります。

病院の薬と漢方薬の「効能書き」比較表

比べる点 病院の薬(西洋薬) 漢方薬
効能の欄の書き方 病名・症状が中心 体質の条件+症状の例
薬と症状の関係 ほぼ1対1 1つの薬にいろいろな使われ方
選ぶ土台 検査と病名 証(今の体の状態)
効能書きに無い症状 原則その薬は使わない 証が合えば選ばれることがある
途中で薬が替わる理由 病状や検査値の変化 証の変化・整える順番

まとめると、西洋薬の効能書きは「使う範囲の全部」、漢方薬の効能書きは「使われ方の代表例」です。

同じ「効能」という言葉でも、読み方のものさしが違うと知っておくと、ネットで調べたときに慌てずにすみます。

【北浦 久貴 先生からのアドバイス】

不安や自律神経の相談では、帰ってから調べて、かえって不安が増えてしまう方が少なくありません。

効能書きの言葉は、あなたに付けられた病名ではなく、そのお薬の代表的な使われ方です。

調べた内容をそのまま次の相談に持ってきてください。一緒に読み解きます。

疑問を言葉にできる関係が、相談を続けやすくすると感じています。

効能書きで不安になったときのセルフケア・確かめ方

調べて不安になったときは、次の順番で動くと落ち着いて判断できます。

  • 飲むのを自己判断でやめない・替えない:疑問があれば、まず選んだ専門家に電話やメールで聞きます
  • 「なぜこのお薬か」をメモする:相談のときに聞いた見立てを、自分の言葉で書き留めておきます
  • 体の変化を3つ記録する:眠り・お通じ・疲れの3つを、1日1行でよいので書きます
  • 効能書きの「体力」の条件を読む:自分の体質の説明として読むと、見立ての意図が見えてきます
  • 食養生は胃腸をいたわる:多くの漢方薬は胃腸から整えるので、冷たいものと夜遅い食事を控えます

なお、飲み始めてから発疹・強いだるさ・むくみなど気になる変化が出たときは、すぐに連絡してください。

持病があり病院のお薬を飲んでいる方は、漢方薬のことを主治医にも伝えておきましょう。

効能書きの読み方セルフチェック

漢方薬を調べる前に、次の点を確かめてみましょう。

  • 自分の「証(体の状態)」を、先生がどう見立てたか聞いた
  • 効能書きの言葉は「代表例」であって「診断」ではないと知っている
  • 「体力中等度」などの体質の条件が、自分に当てはまるか確かめた
  • いま困っている症状と、先に整える土台の違いを説明してもらった
  • 疑問が出たとき、次の相談で聞くか連絡する、と決めている

当てはまらない項目は、次の相談で聞く質問リストになります。遠慮せずに持っていきましょう。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 太陽堂 薬局長 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年 2025年学術発表

調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。

・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」

という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。

記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)

幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。

・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」

というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。

現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

効能書きに無い症状に漢方薬を使っても大丈夫ですか?

専門家が証を見立てて選んだものであれば、効能書きに無い症状で使われることは一般的です。

ただし、自分の判断で「この症状にはこの漢方薬」と流用するのは避けてください。

調べたら「更年期障害」と書いてありました。私は更年期なのですか?

いいえ。効能書きの言葉は、そのお薬の代表的な使われ方であって、あなたへの診断ではありません。

気になるときは、次の相談で「なぜこのお薬ですか」と聞いてみてください。

同じ名前の市販の漢方薬を、自分で買って続けてもいいですか?

名前が同じでも、生薬の量や形が違うことがあります。まず、選んでくれた専門家に相談してください。

市販薬を選ぶときは、効能書きの「体力」の条件が自分に合っているかを確かめましょう。

効能書きの「体力中等度」とは、どういう意味ですか?

体力の強さ・弱さを大まかに表した、東洋医学の「虚実(きょじつ)」に近い目安です。

「中等度以上」は比較的がっしりした体質、「中等度以下」は疲れやすく冷えやすい体質を指すことが多いです。

病院で処方された漢方薬と、ネットの効能が違います。なぜですか?

医療用の漢方薬と市販の漢方薬では、効能の欄の書き方が違うためです。

医療用は病名に合わせた書き方が多く、市販薬は体質の条件と症状の例が書かれています。

まとめ

  • 漢方薬の効能書きと相談内容が違うのは、よくあることで、間違いとは限りません。
  • 理由は、証で選ぶ・効能書きは代表例だけ・体の土台から整える順番、の3つです。
  • 市販の漢方薬の効能書きには「体力中等度」などの体質の条件があり、病院の薬とは読み方が違います。
  • 不安になったら、自己判断でやめたり替えたりせず、選んだ専門家に「なぜこのお薬か」を聞きましょう。

相談先を探すときは

漢方百名店では、「なぜこのお薬か」を分かりやすく説明してくれる全国の漢方薬局を紹介しています。

先生ごとに見立てが変わる理由や、相談でよく聞く体質の言葉、漢方薬の名前の意味もあわせて参考にしてください。

見立ての理由をていねいに話してくれるお店は、受賞店の一覧から地域を絞って探せます。