漢方薬を飲んでいると健康診断や手術に影響する?伝えておきたい4つの場面【薬剤師監修】

【この記事の要点】

  • 漢方薬を飲んでいても、健康診断や手術を受けられないわけではありません。大切なのは、飲んでいることを伝えることです。
  • 伝えておきたい場面は4つ。健康診断・血液検査、内視鏡などの検査、手術・麻酔、スポーツのドーピング検査です。
  • 甘草(かんぞう)は血圧やカリウムの値に、麻黄(まおう)は脈や血圧に関わるとされ、検査や麻酔の前に確認されることがあります。
  • 自己判断でやめたり続けたりせず、お薬手帳に漢方薬も書いて、主治医と漢方薬局の両方に見せましょう。
  • 監修:武田 隆芳 先生(嶺耀堂・東京都新宿区)/竹部 晃之 先生(いわい薬局・埼玉県さいたま市)

「来月、会社の健康診断がある。漢方薬は飲んだままでいいの?」

「手術が決まった。病院の先生に、漢方薬を飲んでいると言ったほうがいい?」

漢方薬を続けていると、こうした場面で迷うことがあります。

結論から言うと、漢方薬を飲んでいても、健康診断や手術は受けられます。大切なのは「伝えること」です。

この記事では、伝えておきたい4つの場面と、誰に・いつ・何を伝えるかを整理します。

病院ではどう見るか|検査や手術の前に確認される「飲んでいるもの」

健康診断や手術の前には、問診票に「飲んでいる薬」を書く欄があります。

病院がここで知りたいのは、検査の値や麻酔に影響するものを飲んでいないかという点です。

病院の薬だけでなく、漢方薬・市販薬・サプリメントも「飲んでいるもの」に含まれます。

健康診断の血液検査で見ている数値

健康診断の血液検査では、肝臓の数値(AST・ALT・γ-GTP)や、腎臓の数値(クレアチニン・eGFR)を見ています。

カリウムなどの電解質や、血圧も、体の状態を知る基本の項目です。

飲んでいるものを書いておくと、数値に動きがあったときに、医師が原因を考える手がかりになります。

甘草と麻黄が確認されやすい理由(体の中で起きること)

甘草(かんぞう)は、多くの漢方薬に入っている生薬です。

甘草の成分(グリチルリチン)を多くとると、体に水分がたまり、カリウムが減って血圧が上がることがあるとされています。

これは偽アルドステロン症(ぎアルドステロンしょう)と呼ばれ、血液検査のカリウム値と血圧の変化で気づかれることがあります。

麻黄(まおう)に含まれるエフェドリンは、脈や血圧を上げる方向に働くとされ、麻酔の前に確認されることがあります。

手術の前に「休む」よう指示されやすいお薬

手術の前には、血液をサラサラにする薬(ワルファリン、バイアスピリンなど)を一時的に休むよう指示されることがあります。

糖尿病の薬のメトホルミンは、造影剤を使う検査の前後で一時的に中止することがあるとされています。

漢方薬やサプリメントについても、手術の数週間前から確認する病院が多いとされています。

中止するかどうかは、病院の方針と手術の内容で決まります。自己判断ではなく、指示を受けてください。

【武田 隆芳 先生からのアドバイス】

私は病院で4年、調剤薬局で8年働いてから、漢方の道に入りました。

その経験から、「飲んでいるものを全部伝える」ことの大切さを強く感じています。

漢方薬は「薬のうちに入らない」と思われがちですが、れっきとした医薬品です。

手術や検査の予定が決まったら、病院にも薬局にも、同じ情報を伝えてください。

東洋医学ではどう見るか|検査や手術の前後の体の状態

東洋医学では、手術や大きな検査を、体の「気(き)」と「血(けつ)」を使う出来事と考えます。

気は体を動かす力、血は体を養う栄養のことです。手術のあとに疲れやすいのは、この2つが減った状態と見ます。

実際に、手術のあとの体力の回復を支える目的で、病院でも漢方薬(補剤と呼ばれる種類)が使われることがあります。

漢方薬局では、検査や手術の前後に、体の状態に合わせて飲み方を見直すことがあります。

検査や手術の前後に相談が多い3つの体質タイプ

  • 気虚(ききょ)タイプ:疲れやすく、回復に時間がかかる。手術の前後は、休養と食事を優先する考え方
  • 血虚(けっきょ)タイプ:顔色が悪く、眠りが浅い。血を養う食事と、無理をしない予定の組み方
  • 水滞(すいたい)タイプ:むくみやすい。甘草の重なりに気をつけ、塩分と水分の取り方を見直す

どのタイプでも、主治医の指示が最優先です。漢方薬局は、その指示の中で体を整える手伝いをします。

漢方薬局が「伝えてほしい」と思っていること

検査や手術の予定日、主治医からの指示、病院で出ているお薬の変更です。

伝えてもらえると、生薬の重なりや、いったん休む時期、再開のタイミングを一緒に考えられます。

場面別・誰に何を伝えるかの比較表

場面 伝える相手 伝えること・気をつける生薬
健康診断・血液検査 健診の問診票/漢方薬局 飲んでいる漢方薬の名前。甘草(血圧・カリウム)
内視鏡・造影剤などの検査 検査を行う病院/漢方薬局 検査前の飲食と薬の指示。大黄など便通に関わる生薬
手術・麻酔 主治医・麻酔科/漢方薬局 休む時期と再開の時期。麻黄(脈・血圧)、甘草(カリウム)
スポーツのドーピング検査 競技団体/薬剤師・漢方薬局 競技に出ること。麻黄(エフェドリン)、附子など(ヒゲナミン)

まとめると、どの場面でも「病院と薬局の両方に、同じ情報を伝える」のが基本です。

迷ったときは、どちらか一方に決めるのではなく、両方に聞いてみてください。

【竹部 晃之 先生からのアドバイス】

私自身、サッカーやマラソンを続けています。競技をする方の相談では、飲んでいるものに麻黄などが入っていないかを確かめます。

風邪のときに飲む葛根湯にも麻黄が含まれているので、検査のある大会の前は注意が要ります。

迷ったら、公認スポーツファーマシストの資格を持つ薬剤師にも相談してみてください。

検査の対象になるかどうかは、競技団体の案内で確かめておくと安心です。

漢方薬を飲んでいることを伝えておきたい4つの場面

ここからは、場面ごとに「誰に・いつ・何を」伝えるかを見ていきます。

場面1:健康診断・血液検査

問診票の「飲んでいる薬」の欄に、漢方薬の名前も書きます。市販の漢方薬も同じです。

健診の当日は飲食の制限があります。当日に飲んでよいかは、健診の案内や受付で確かめてください。

結果が戻ったら、血圧やカリウム、肝臓の数値を漢方薬局にも見せてください。見立ての材料になります。

場面2:内視鏡・バリウム・造影剤の検査

胃や腸の検査の前には、食事と薬について細かい指示が出ます。

大黄(だいおう)など便通に関わる生薬は、腸の検査の前に確認されることがあります。

指示の紙を漢方薬局にも見せると、当日までの飲み方を一緒に確かめられます。

場面3:手術・麻酔

手術が決まったら、術前の問診で漢方薬とサプリメントも申告します。お薬手帳があると、伝え漏れを防げます。

中止の指示があれば従い、再開の時期も、手術の前に主治医に聞いておくと安心です。

手術のあとの体力の回復については、主治医の許可を得てから、漢方薬局に相談する流れが一般的です。

場面4:スポーツのドーピング検査

競技会でドーピング検査の対象になる方は、漢方薬の成分に注意が要ります。

麻黄のエフェドリンや、附子(ぶし)・呉茱萸(ごしゅゆ)などに含まれるヒゲナミンは、禁止物質に当たるとされています。

葛根湯や小青竜湯のような身近な処方にも麻黄が入っているため、大会前の風邪薬には注意してください。

公認スポーツファーマシスト(ドーピングの知識を持つ薬剤師の認定制度)に相談する方法もあります。

自宅でできる準備・お薬手帳の使い方

伝え忘れを防ぐために、ふだんからできる準備は次の5つです。

  • お薬手帳に漢方薬も書く:処方名と、飲み始めた日を書いておく
  • 袋や説明書を写真に撮る:生薬の名前が分かると、病院での確認が早い
  • 検査や手術の日程を薬局にも伝える:いったん休むかどうかを一緒に決められる
  • 結果のコピーを持参する:血圧・カリウム・肝臓の数値は見立ての材料になる
  • サプリと健康食品も書き出す:漢方薬と成分が重なることがある

食養生の面では、検査の前は指示を守ることが第一です。手術の前後は、温かく消化の良いものを、少しずつが基本とされています。

伝え忘れがないか分かるセルフチェック

次の項目で、当てはまらないものがないか確かめてください。

  • お薬手帳に、漢方薬の名前を書いている
  • 健診の問診票に、漢方薬と市販薬も書いた
  • 手術や検査の日程を、漢方薬局にも伝えた
  • 中止と再開の時期を、主治医に聞いた
  • サプリメントや健康食品も、病院と薬局に伝えた

1つでも当てはまらない項目があれば、次の受診や相談のときに伝えてみてください。

なお、検査や手術の前後に、動悸やむくみ、強いだるさが出たときは、先に受診した病院に連絡してください。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間

西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。

・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」

という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。

記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出

2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。

・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」

という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

健康診断の前日に、漢方薬をやめたほうがいいですか?

自己判断でやめる必要はありません。飲んでいることを問診票に書き、当日の飲み方は健診の案内に従ってください。

気になる方は、健診の前に漢方薬局に相談しておくと安心です。

手術の何日前から漢方薬をやめればいいですか?

病院の方針と手術の内容で違います。手術が決まった時点で、主治医に漢方薬を見せて指示を受けてください。

数週間前から確認する病院が多いとされています。

病院の先生に、漢方薬を飲んでいると言いにくいです。

お薬手帳に書いておくと、口で説明しなくても伝わります。

漢方薬も医薬品なので、医師にとっては知っておきたい情報の一つです。

部活の大会でドーピング検査があります。葛根湯は飲めますか?

葛根湯には麻黄が含まれ、そのエフェドリンが禁止物質に当たるとされています。大会前は避けるのが無難です。

公認スポーツファーマシストや、競技団体の案内で確かめてください。

手術のあと、漢方薬はいつから再開できますか?

主治医の許可が出てからが基本です。再開の時期は、手術の前に聞いておくと迷いません。

回復期の体に合わせて飲み方を見直すため、再開の前に漢方薬局にも連絡してください。

まとめ

  • 漢方薬を飲んでいても、健康診断や手術は受けられます。大切なのは、飲んでいることを伝えることです。
  • 伝えておきたい場面は、健康診断・検査・手術と麻酔・ドーピング検査の4つです。
  • 甘草は血圧とカリウム、麻黄は脈と血圧に関わるとされ、確認されやすい生薬です。
  • お薬手帳に漢方薬も書き、病院と薬局の両方に同じ情報を伝えましょう。

相談先を探すときは

漢方百名店では、病院の検査や手術の予定も含めて相談に乗ってくれる、全国の漢方薬局を紹介しています。

病院の薬との併用、甘草の注意点、副作用の見分け方、飲み方のギモンもあわせて参考にしてください。

検査や手術の予定がある方は、お薬手帳を持って、まず近くの漢方薬局に相談してみてください。