漢方薬の名前の意味と読み方|「湯・散・丸」の違いと、名前から分かる5つのヒント【薬剤師監修】

【この記事の要点】

  • 漢方薬の名前には、飲み方の形や中心になる生薬など、中身のヒントが込められています。
  • 最後の「湯・散・丸」は、もともとの薬の形(煎じ薬・粉薬・丸薬)を表します。
  • 名前から分かるヒントは「形・中心の生薬・数字・働き・足したもの」の5つです。
  • 名前だけで薬を選ばず、体質に合うかは漢方薬局などで相談しましょう。
  • 監修:石田 友里 先生(くら石・静岡県掛川市)/北浦 久貴 先生(神皇漢方薬局・大阪府泉佐野市)

葛根湯、当帰芍薬散、八味地黄丸。

漢方薬の名前は、漢字ばかりで難しく見えますよね。

薬の袋を見ても、どれが何の薬なのか分かりにくいと感じる方も多いはずです。

でも実は、漢方薬の名前には、中身を知るヒントがたくさん詰まっています。

名前の読み方が分かると、自分が飲んでいる薬に少し親しみがわいてきます。

この記事では、「湯・散・丸」の違いと、名前から分かる5つのヒントを紹介します。

病院ではどう見るか|お薬の名前のつけ方と剤形の違い

まず、病院で出るお薬の名前のしくみから見てみましょう。

西洋薬は「成分の名前」と「商品の名前」

西洋薬には、成分の名前(一般名)と、メーカーがつけた商品名があります。

たとえば痛み止めのロキソプロフェンは成分の名前で、ロキソニンは商品名です。

病院では、病名や検査の結果をもとに、どの成分のお薬を使うかが決められます。

西洋薬の名前は「何の成分が入っているか」を表していることが多いのです。

病院の漢方薬は「処方名」と「番号」

一方、漢方薬の名前は処方名と呼ばれ、生薬の組み合わせ全体につけられた名前です。

病院で出る漢方薬は、医療用漢方エキス製剤と呼ばれます。

メーカーによっては処方名に番号がついていて、「1番」のように番号で呼ばれることもあります。

形は、顆粒(かりゅう)や細かい粒、錠剤が中心です。

市販の漢方薬の箱に書かれていること

ドラッグストアの漢方薬の箱には、処方名と「エキス顆粒」などの形が書かれています。

「満量処方」と書かれた商品もあります。

満量処方とは、国の基準で決められた1日の生薬の量の上限まで配合したもののことです。

同じ名前でも、メーカーによって生薬の量が違うことがあると覚えておきましょう。

【石田 友里 先生からのアドバイス】

相談のとき、今飲んでいる漢方薬の名前をお聞きすることがよくあります。

名前が分かると、どんな生薬が入っているかの見当がつくからです。

覚えにくい方は、箱や薬の袋を写真に撮って持ってきてください。

病院で出ている漢方薬の番号だけでも、十分な手がかりになりますよ。

東洋医学ではどう見るか|名前に込められた考え方

東洋医学では、漢方薬は何種類もの生薬を組み合わせて作られます。

その組み合わせには、君臣佐使(くんしんさし)という考え方があるとされています。

君臣佐使とは、主役の生薬と、それを助ける脇役の生薬の役割分担のことです。

名前には、この主役や、体をどう整えたいかという考え方が表れていることが多いのです。

ここからは、名前から分かる5つのヒントを順に見ていきましょう。

ヒント①最後の一文字は「もともとの形」

「湯(とう)」は、生薬を水で煮出して飲む煎じ薬のことです。

「散(さん)」は、生薬を細かい粉にしたもの、「丸(がん)」は粉を丸めたものです。

今はどれもエキス剤になっていることが多く、名前はもともとの形を表していると考えると分かりやすくなります。

ヒント②先頭の生薬は「中心になる生薬」

葛根湯の「葛根(かっこん)」は、クズという植物の根です。

このように、名前の先頭に中心になる生薬が入っている処方がよくあります。

ヒント③数字は「生薬の数」

五苓散(ごれいさん)は5種類、八味地黄丸(はちみじおうがん)は8種類の生薬からできています。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は10種類です。

数字は、組み合わせる生薬の数や、中心になる生薬の数を表すとされています。

ヒント④漢字が「働きの考え方」を表す

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は「中(胃腸)を補い、気を益す」という意味とされます。

安中散(あんちゅうさん)の「安中」は、おなかを安らかにするという考え方を表しています。

ヒント⑤「加」「加味」「合」は足したもの

加味逍遙散(かみしょうようさん)は、逍遙散という処方に生薬を加えたものです。

「合」は、2つの処方を合わせたものを表します。

元の処方との関係が名前から分かるのも、漢方薬の名前の面白いところです。

比較表|名前から分かる5つのヒント

ヒント名前のどこを見るか例
①もともとの形最後の一文字(湯・散・丸)葛根湯・安中散・八味地黄丸
②中心になる生薬名前の先頭葛根湯(葛根)
③生薬の数数字五苓散・八味地黄丸・十全大補湯
④働きの考え方補・益・安などの漢字補中益気湯・安中散
⑤足したもの加・加味・合加味逍遙散

表のとおり、名前は「形・中心・数・働き・足したもの」の5か所に分けて読むと理解しやすくなります。

ただし、名前だけで自分に合う薬かどうかは決められません。

【北浦 久貴 先生からのアドバイス】

名前の意味を知ると、漢方薬が少し身近に感じられると思います。

ただ、「胃腸を補う名前だから自分に合いそう」と名前で選ぶのは控えてください。

同じ悩みでも、体質によって合う処方は変わります。

気になる処方があれば、その名前を持って相談に来ていただければ大丈夫です。

自宅でできるセルフケア・食養生

名前を知ると、毎日の食事や暮らしとのつながりも見えてきます。

  • 台所の食材と見比べる:生姜(しょうきょう)や桂皮(けいひ=シナモン)など、身近な食材と同じ仲間の生薬もあります。
  • お薬手帳に処方名を残す:市販の漢方薬を買ったときも、名前を書いておくと相談に役立ちます。
  • 同じ生薬の重なりに気をつける:複数の漢方薬を飲むと、甘草などが重なることがあります。
  • 体を冷やしすぎない食事を心がける:温かい汁物など、胃腸にやさしい食事を選びましょう。

身近な食材と同じ仲間でも、薬として飲む量や組み合わせは相談先で確かめましょう。

相談前のセルフチェック|薬の名前を伝える準備

当てはまる項目が多いほど、相談のときに今の状況を伝えやすくなります。

  • 今飲んでいる漢方薬の名前を言える(またはメモしてある)
  • 病院で出ている漢方薬の番号やメーカーが分かる
  • 市販の漢方薬の箱や、薬の袋の写真を用意した
  • 漢方薬以外のお薬やサプリの名前も書き出した
  • 名前だけで選んだ漢方薬を、自己判断で飲み続けていない

最後の項目は大切です。名前で選んだ薬は、一度専門家に相談してみましょう。

この記事の監修

記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)

合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。

・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」

という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。

時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。

記事監修者 神農漢方薬局 代表薬剤師 北浦 久貴(きたうら ひさき)

実績:伝統漢方研究会 関西理事 / 2023年 学術論文発表(田七人参と牡丹皮の研究)

幼少期、自身が重度のアトピー性皮膚炎に悩み、漢方薬(不思議なまずい粉)によって劇的に改善した原体験を持つ。

・「あの時の感動と、治る喜びを多くの人へ届けたい。」
・「無理なく、できることから一緒にやってみよう。」

というスタンスで、自身の経験から「皮膚トラブル」や「メンタル不調」の相談を得意とする。

現在は研究会の理事として東へ西へ奔走し技術を磨きながら、患者さんの心の荷物を下ろすような、気楽で温かいカウンセリングを行っています。

この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。

よくある質問

漢方薬の「湯」と「散」はどう違いますか?

湯はもともと煎じて飲む薬、散は粉にした薬を表します。今はどちらもエキス剤になっていることが多く、形の違いは名前に残っている形です。

同じ名前の漢方薬なら、メーカーが違っても中身は同じですか?

処方の組み合わせは同じでも、生薬の量や添加物がメーカーによって違うことがあります。切り替えるときは相談先に伝えましょう。

病院の漢方薬についている番号は何ですか?

メーカーが処方ごとにつけている番号です。番号はメーカーによって違うことがあるので、処方名とあわせて確かめましょう。

「満量処方」とは何ですか?

国の基準で決められた1日の生薬の量の上限まで配合したものです。量が多いほど良いとは限らないため、体質に合うかを相談してください。

漢方薬の名前が難しくて覚えられません。

覚えなくても大丈夫です。お薬手帳や箱の写真があれば、相談先で名前を確かめてもらえます。

まとめ

  • 漢方薬の名前には、飲み方の形や中心になる生薬など、中身のヒントが込められています。
  • 「湯・散・丸」は、煎じ薬・粉薬・丸薬というもともとの形を表します。
  • 名前は「形・中心の生薬・数字・働き・足したもの」の5か所に分けて読むと分かりやすくなります。
  • 名前だけで選ばず、体質に合うかは漢方薬局などで相談しましょう。

相談先を探すときは

漢方百名店では、処方の中身まで丁寧に説明してくれる全国の漢方薬局を紹介しています。

粉薬と煎じ薬の違いや、先生ごとに処方が変わる理由もあわせて参考にしてください。

体質に合わせて相談できるお店は、受賞店の一覧から地域を絞って探せます。