【福岡・博多】漢方ひとすじ50年。古方派の私が「壁」に当たり、折衷派へ歩んだ理由|太陽堂漢薬局・木下先生

漢方百景コラム「お力になれなかった患者さんのために 漢方ひとすじ50年。壁にぶつかり、古典に救いを求めた探求の道のり」福岡・博多 太陽堂漢薬局 木下順一朗先生

【連載】漢方百景 ~先生からの月一便り~ 木下先生より

皆様、こんにちは。

福岡市博多区の「太陽堂漢薬局」で漢方相談をしております、木下順一朗です。

今回は、私がこれまで歩んできた漢方の道のりについて、少しお話しさせていただこうと思います。

■ 漢方とは? 時代とともに変化してきた流派

過去に日本には様々な医学書が渡ってきていました。7世紀の飛鳥時代からです。

17世紀の江戸時代に入り、漢の時代に書かれた『傷寒論(しょうかんろん)』を中心とする流派が生まれました。これが「古方派(こほうは)」と言われています。

漢方は「漢」の時代の「方」の意味です。つまり漢方は、日本の古方派の東洋医学の意味です。

現在の日本では、広く後世派も中医学も漢方と言われています。

私が漢方を始めた50年前、時代的に漢方と言えば古方派の時代でした。

その当時、三陰三陽を中心とする「古方派」、五行を中心とする「後世派(ごせいは)」、古方と後世派を一緒にした「折衷派(せっちゅうは)」が有りました。

折衷派は、古方を学んだ上で後世方を取り入れる流派だと考えています。

■ 「五感」を研ぎ澄まし、ボロボロになるまで読み込んだ2冊の教科書

古方派は、患者さんを「目・耳・鼻・指先」で感じる五感が大事と言われています。

お顔を見て、鼻の大きさ、目の大きさ、眉の太さ、唇の上下の厚さなどから「実証」か「虚証」か判断します。

肌を見ると水性か脂性か、咳を聞くと何証の咳か判断できるようになります。

その当時、本も少なく情報も少ない時代でした。講演会なども無かった時代です。

師匠につかないと古方の漢方は出来ませんでした。

私は教科書として2冊を教えられ、その2冊を何度も読み返しました。そこには古方派の理論が書いてありました。

今、僕の本棚にあるその2冊はボロボロになっています。

■ 50年の道のりで当たった「壁」とお力になれなかった患者さん

漢方を始めて、50処方しか使いこなせない時は、良くなる方の割合は高く感じます。

100処方以上使いこなせると、古方派として一人前に仕事ができます。

そこから200処方以上使うまで勉強をしていきます。200から250処方まで使えるようになったら、60処方まで絞り込みます。

この60処方を縦横無尽に使い、病に向き合っていくのが古方派だと教え込まれました。

京都の柴田良治先生が当時、「良くなる方は20%」と言われていました。

僕は慢性病の薬歴を調べ、多く見積もっても15%でした。

良くなられた患者さんの思い出から、「お力になれなかった患者さん」の事を考えるようになったのです。

お力になれない患者さんが多いことに、初めて気づきました。

非常に苦しく、1800年前に書かれた漢方の古典に救いを求め、解決方法を探し読み漁りました。

■ 壁からの解放|故・入江正先生との出会いと「糸練功」

漢方を始めて10年以上過ぎたころ、故・入江正先生に出会いました。今から40年近く前です。僕が30代前半でした。

入江先生は、間中喜雄先生の一番弟子だと自負されていました。

間中先生は僕が学んだ古方派ではなく、一貫堂の後世派でした。この時点から僕は、浅田宗伯などと同じ折衷派に属するようになっていきます。

僕は入江先生に「入江FTフィンガーテスト」を習い、臨床に使い、手応えが大きく変わっていきました。

漢方家であり鍼灸師であった入江先生に、「漢方で入江FTを使う」と言う宿題を出された時期です。

■ 20年かかった宿題と「糸練功」

その後、自分なりの反応穴、合数、調息、調身、調心を合せ「糸練功(しれんこう)」と名付けました。

入江先生が約100処方の臓腑配当を残されていますが、僕は300処方以上の臓と腑に分けた臓腑配当をしました。

病因である気血水の薬味の配当も、気血水による漢方処方の配当もしました。

入江先生に出された宿題に20年かかりましたが、その時は入江先生は亡くなられていました。

その後、学会にて故・入江正先生に答えを御報告することができました。

■ 伝統医学を残し、受け継いでいくために

僕は間中先生の孫弟子になります。

間中先生が創られたX交差による間中4分画診断、ツーメタルコンタクト(2MC)など、発展させて行かねばと考えています。

僕が取り組んだのは、診断ではなくX交差理論に基づく新しいアプローチです。

X交差に独特に現れるX交差穴は10年ほど前に見つけていました。1年ほど前に五行穴の経穴がX交差で反応することを見つけました。

糸練功のセンサーで労宮を上手く使うとX交差が取れます。

急性病だけでなく慢性病も、漢方でも針でも、お灸でも応用が出来る理論です。

伝統医学を残すには、誰かが残し、誰かが守り受け継いでいかねばなりません。

僕の悩みと苦しみに答えて頂いた故・入江正先生、故・間中喜雄先生へのせめてもの恩返しになればと考えています。

【次のバトンはこちら!】 次回は、埼玉県春日部市の「春日部第一薬局」、上野先生にバトンをお渡しします!


運営からの一言

漢方ひとすじ50年。ボロボロになった2冊の教科書のお話から、積み重ねてこられた時間の重さが伝わってきます。

印象に残ったのは、良くなられた方ではなく「お力になれなかった方」に目を向けたところから、先生の次の歩みが始まったというくだりです。

少しだけ、言葉の補足をします。

  • 古方派(こほうは):漢の時代の古典『傷寒論(しょうかんろん)』を中心にする、日本で生まれた流派
  • 後世派(ごせいは):五行(ごぎょう)の考え方を中心にする流派
  • 折衷派(せっちゅうは):古方を学んだうえで、後世派の処方も取り入れる流派

同じ「漢方」でも、先生によって学んできた流派や、体の見立て方は違います。

相談先を選ぶときは、その先生がどんな考え方で体を見ているのかを知ることも、大切な手がかりになります。

福岡・博多の「太陽堂漢薬局」で、伝統を受け継ぎながら探究を続ける木下先生に、じっくり相談してみませんか?

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