【この記事の要点】
- 漢方内科は「病名」をもとに保険で漢方薬を処方する場所、漢方薬局は「体質」をもとに自費で漢方薬を選ぶ場所です。
- 病院の漢方薬(医療用漢方製剤)は保険で使えるエキス剤が中心で、漢方薬局では煎じ薬や調合など選べる形が広がります。
- どちらに相談するかは、病名か体質か・保険か自費か・相談の時間・お薬の形、の4つの目安で考えると迷いにくくなります。
- 両方に通うときは、お薬手帳で重なりを確かめることが大切です。持病や服薬中の方は、まず主治医に相談しましょう。
- 監修:武田 隆芳 先生(嶺耀堂・東京都新宿区)/前原 信太郎 先生(太陽堂・東京都新宿区)
「漢方を試してみたい。でも、病院の漢方内科と街の漢方薬局、どっちに行けばいいの?」
こう迷って、結局どちらにも行けていない方は少なくありません。
どちらも「漢方薬」を扱う場所ですが、選び方の土台と、お金の仕組みが違います。
この記事では、全国の漢方相談店を紹介するポータルサイトの立場から、2つの場所の違いを整理します。
どちらが優れているかではなく、「今のあなたにはどちらが合うか」を考える材料にしてください。
病院ではどう見るか|漢方内科の診察・検査・医療用漢方製剤
漢方内科とは、漢方薬を使った診療を看板にしている病院やクリニックの診療科のことです。
診察は、ふだんの内科と同じように進みます。問診のあと、血液検査や画像検査で体の状態を調べます。
そのうえで病名を決め、病名に合わせて漢方薬を処方するのが基本の流れです。
病院で出る漢方薬は「医療用漢方製剤」
病院で処方される漢方薬は、医療用漢方製剤と呼ばれ、健康保険が使えます。
保険で使える漢方エキス製剤は148処方あるとされ、「ツムラの1番」のように番号で呼ばれることも多いです。
形は、生薬を煮出して乾燥させた顆粒(エキス剤)が中心です。お湯に溶かしても、そのまま飲んでもかまいません。
保険の仕組みでは、お薬ごとに「どの病名に使うか」が決められています。病名がはっきりしているほど、処方は選びやすくなります。
費用は、診察料とお薬代を合わせて、原則3割(年齢や所得で1〜3割)の自己負担です。
一方で、保険診療は1人あたりの診察時間が限られる場合が多いとされています。体質や暮らしの話までじっくり聞いてもらうには、時間が足りないと感じる方もいます。
【武田 隆芳 先生からのアドバイス】
私は病院と調剤薬局で働いたあと、漢方の道に入りました。どちらの現場にも、それぞれの良さがあります。
病院の漢方薬は、保険で続けやすく、検査と並行して使えるのが強みです。
「病名は決まっているのに、しっくりこない」と感じたときが、薬局に相談するひとつの区切りだと思います。
病院を敵にするのではなく、両方をうまく使い分けてください。
東洋医学ではどう見るか|漢方薬局の相談で見ているもの
漢方薬局では、病名ではなく「証(しょう)」をもとに漢方薬を選びます。
証とは、東洋医学で見た今の体の状態のこと。冷えやすいか、疲れやすいか、巡りが滞りがちか、といった傾向です。
そのため、同じ「頭痛」でも、人によって選ばれる漢方薬が違うことがよくあります。
証を見立てるには時間がかかります。初回の相談に1時間ほどかける薬局が多いのは、このためです。
薬局の漢方薬は保険が使えない
漢方薬局で相談して購入する漢方薬には、健康保険が使えません。費用はすべて自己負担です。
そのぶん、保険の枠に縛られず、体質に合わせて選べるという面があります。
エキス剤だけでなく、生薬を自分で煮出す煎じ薬や、その人に合わせて生薬を組み合わせる調合も選べます。
費用の目安や、高いと感じたときの考え方は、別の記事「漢方薬局は高い?費用の相場」で詳しくまとめています。
漢方内科と漢方薬局の比較表
| 比べる点 | 漢方内科(病院) | 漢方薬局 |
|---|---|---|
| 選び方の土台 | 病名(検査と診断) | 証(体質・今の状態) |
| お金の仕組み | 健康保険(原則3割負担) | 自費(全額自己負担) |
| 相談の時間 | 限られることが多い | 初回1時間前後が多い |
| お薬の形 | エキス剤(顆粒)が中心 | エキス剤・煎じ薬・調合 |
| 検査 | 血液検査・画像検査ができる | 検査はできない(結果の持参は歓迎) |
まとめると、病名と保険で進めるのが漢方内科、体質と時間をかけて進めるのが漢方薬局です。
検査が必要な症状は病院が先、検査では見つからない不調の相談は薬局が向く場合が多いとされています。
【前原 信太郎 先生からのアドバイス】
私は調剤薬局で働いた経験があるので、病院の処方せんで漢方薬を受け取る方の様子もよく知っています。
そこで気になったのは、お薬の名前は知っていても、なぜそれが選ばれたのかを聞けていない方が多いことでした。
漢方薬局では、「なぜこのお薬か」を一緒に考える時間を大切にしています。
病院で漢方薬をもらっている方も、疑問があれば薬局で聞いてみてください。
どちらに相談する?迷ったときの4つの目安
ここからは、どちらに行くか迷ったときの4つの目安を紹介します。
目安1:病名で動くか、体質で動くか
病名がはっきりしていて、その病名に合う漢方薬を保険で続けたいなら、漢方内科が向いています。
検査では異常が出ないのに不調が続く、いくつもの症状が重なっている、という方は漢方薬局が合いやすいとされています。
目安2:保険か、自費か
毎月の負担を軽くしたい方には、保険が使える漢方内科が現実的です。
漢方薬局は自費ですが、費用には相談の時間や、体質に合わせた調合が含まれていると考えると、比べやすくなります。
目安3:相談にかけたい時間
短い時間で済ませたい、仕事の合間に通いたい方は、通いやすい場所の漢方内科が便利です。
食事や睡眠、気持ちの波まで含めて話したい方は、時間をかけて聞く漢方薬局が向いています。
目安4:お薬の形
顆粒のエキス剤で手軽に続けたいなら、漢方内科でも漢方薬局でも選べます。
煎じ薬や、自分に合わせた調合を試したい方は、漢方薬局でしか選べません。
なお、両方に通うことは可能ですが、同じ生薬(甘草など)が重なる場合があります。お薬手帳を見せて、重なりを確かめてもらいましょう。
相談の前にできるセルフケア・準備
どちらに行く場合も、次の準備をしておくと、相談がスムーズになります。
- 検査結果を持参する:病院の血液検査の結果は、漢方薬局でも大切な手がかりになります
- お薬手帳を持参する:飲んでいるお薬やサプリをすべて書き出しておきます
- 困っている順に書く:いちばん困っている症状と、いつから続いているかをメモします
- 食事と睡眠を振り返る:冷たいものの量、寝る時間、朝の目覚めを3日ほど記録します
- 通える頻度を決めておく:月に何回、どの時間帯なら通えるかを考えておきます
食養生の基本は、どちらに通う場合も同じです。温かいものを、よくかんで、腹八分目に。これだけでも体の土台が整いやすくなります。
どちらが合うか分かるセルフチェック
当てはまる項目を数えてみてください。
- 病院で検査を受けたが、「異常なし」と言われて困っている
- いくつもの症状が重なっていて、どの科に行けばいいか分からない
- 病院で漢方薬をもらったが、なぜそのお薬なのか聞けていない
- 食事や睡眠、気持ちの波まで含めて相談したい
- 煎じ薬や、自分に合わせた調合を試してみたい
3つ以上当てはまる方は、漢方薬局で一度じっくり相談してみる価値があると考えられます。
逆に、検査をまだ受けていない強い症状や、急に悪くなった症状がある方は、先に病院を受診してください。
この記事の監修
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表
祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。
6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。
その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。
この記事を監修した先生が相談を受けているお店です。相談先を探すときの参考にしてください。


よくある質問
漢方内科と漢方薬局は、どちらが先ですか?
検査が必要な症状(強い痛み・発熱・急な変化など)は、病院が先です。
検査で異常が見つからない不調や、体質から整えたい相談は、漢方薬局から始める方も多くいます。
漢方薬局の漢方薬に保険は使えますか?
使えません。漢方薬局で相談して購入する漢方薬は、全額自己負担です。
保険で漢方薬を使いたい場合は、漢方内科など病院で処方を受ける形になります。
病院の漢方薬と薬局の漢方薬は、中身が違うのですか?
同じ名前の処方なら、もとになる生薬の組み合わせは基本的に同じです。
違いは、保険の枠で選ぶか体質で選ぶかという「選び方」と、エキス剤だけか煎じ薬や調合も選べるかという「形」にあります。
病院の漢方薬と、薬局の漢方薬を一緒に飲んでもいいですか?
自分で判断せず、両方の専門家に伝えてください。
同じ生薬(甘草など)が重なることがあるため、お薬手帳を見せて確かめてもらうことが大切です。
病院で「異常なし」と言われました。漢方薬局に行っても大丈夫ですか?
大丈夫です。むしろ、検査で異常が出ない不調の相談は、漢方薬局に多く寄せられています。
検査結果を持参すると、見立ての手がかりになります。
まとめ
- 漢方内科は病名をもとに保険で、漢方薬局は体質をもとに自費で漢方薬を選びます。
- 病院の漢方薬はエキス剤が中心、漢方薬局では煎じ薬や調合も選べます。
- 迷ったら「病名か体質か・保険か自費か・時間・お薬の形」の4つの目安で考えましょう。
- 両方に通うときは、お薬手帳で生薬の重なりを確かめてもらいましょう。
相談先を探すときは
漢方百名店では、病院の漢方薬との使い分けまで相談に乗ってくれる全国の漢方薬局を紹介しています。
病院の薬との違いや、費用の相場、ドラッグストアとの違いもあわせて参考にしてください。



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