漢方薬局の匂いは「カレー」と同じ?棚に並ぶ「生薬」と、キッチンの「食材」の意外な共通点

「漢方薬局の棚に並ぶ生薬ビンと、キッチンにあるカレースパイス(シナモン、ターメリックなど)を比較した画像。生薬と食材の意外な共通点を紹介する記事のサムネイル。」
目次

はじめに:薬局の扉を開けると、そこはキッチンの香り?

漢方薬局に初めて入った方が、よく驚かれることがあります。

「あれ? なんだかカレーのようなスパイシーな匂いがしませんか?」

実はその感覚、大正解なのです。

今回は、漢方百名店の中でも特に「食と健康」について熱い想いを持つ2人の先生に、その理由を語っていただきました。

  • 解説:前原 信太郎 先生(漢方薬局 太陽堂)
    • 沖縄の医師家系にルーツを持ち、現代の食生活に危機感を感じて漢方の道へ。
  • 解説:竹部 晃之 先生(有・いわい薬局)
    • 丁寧なカウンセリングで、心と体の繋がりを紐解くベテラン薬剤師。

1. カレーは「食べる漢方薬」だった?

まずは、誰もが知っているあの国民食「カレー」について。

なぜ薬局と同じ匂いがするのでしょうか? いわい薬局の竹部先生に聞いてみました。

竹部先生(いわい薬局)の解説

「正解は…中身が一緒だからです(笑)」

漢方薬局の匂いの正体、その多くは「芳香性健胃薬(ほうこうせいけんいやく)」と呼ばれる、胃腸を元気にする生薬の香りです。

実はこれ、カレーのスパイスそのものなんですよ。

竹部先生に、代表的なスパイスと漢方名の対応表を作ってもらいました。

カレースパイス漢方での名前主な働き
ターメリックウコン(鬱金)肝臓を助ける、血流を良くする
シナモンケイヒ(桂皮)体を温める、発汗を促す、風邪のひき始めに
クローブチョウジ(丁子)胃を温める、しゃっくりや吐き気を止める
フェンネルウイキョウ(ウイキョウ)お腹のガスを抜く、胃腸を整える
ジンジャーショウキョウ(生姜)消化を助ける、吐き気を抑える

つまり、カレーというのは、これら複数の胃腸薬を油で炒めて煮込んだ、最強の「食欲増進・消化促進メニュー」なんです。

夏バテで食欲がない時にカレーが食べたくなるのは、体が本能的に「胃腸を動かす薬」を求めているからなんですね。(竹部先生)

身近なスパイスと漢方薬の比較イラスト。カフェにあるおしゃれな瓶に入った「シナモンスティック」と、漢方の紙袋に入った生薬の「桂皮(けいひ)」を並べ、見た目は違っても実は同じものであることを解説している。

2. 「医食同源」スーパーは薬箱?

「カレーだけではありません」と語るのは、太陽堂の前原先生。

ご自身のルーツである沖縄には、「クスイムン(薬になる食べ物)」という言葉があるそうです。

前原先生(漢方薬局 太陽堂)の解説

「『食べる』ことは『治す』ことです」

私は以前、調剤薬局で働いていましたが、現代人の病気の多くが「食生活の乱れ」から来ているのに、薬だけで数値を下げようとする現状に限界を感じ、この道に入りました。

漢方の世界には「医食同源(いしょくどうげん)」という言葉があります。

食材と薬に境界線はありません。

  • ゴーヤ: 沖縄では夏バテの薬。体の余分な熱を冷まします(清熱)。
  • 黒糖: お腹を温め、生理痛を和らげる薬として使われます。
  • 生姜: 加熱して干せば「乾姜」という立派な救急薬になります。

体調を崩したら、まずキッチンを見直す。スーパーマーケットは、あなたの体を治すための「薬局」でもあるんですよ。

食生活の乱れが気になる方は、以下の記事で「自分の体質に合った食材」をチェックしてみてください。


3. 今日からできる!「ちょい足し」キッチン漢方

お二人の先生に、いつもの料理に「漢方の知恵」をプラスする簡単なテクニックを教えてもらいました。

竹部流:冷え性さんのための「シナモントースト」

「朝、パンだけだと体が冷えるという方は、シナモンパウダーを一振りしてください。漢方の『桂皮』の力で、毛細血管まで血が巡り、食べた直後から指先がポカポカしてきますよ」(竹部先生)

前原流:元気がない時の「山芋スープ」

「疲れが取れない時は、山芋(長芋)を食べてください。山芋は漢方では『山薬(さんやく)』と言い、滋養強壮の王様です。すりおろして味噌汁に入れるだけで、エネルギーが湧いてきます」(前原先生)


4. 【Q&A】食と漢方のよくある質問

毎日カレーを食べれば健康になりますか?

バランスが大切です。

スパイス(漢方)は「熱を作る」作用が強いものが多いので、毎日食べると体に熱がこもったり、胃が疲れたりすることもあります。週に1回など、体が欲している時に食べるのが一番です。

スーパーのスパイスと、漢方薬局の生薬は違うの?

「品質」と「強さ」が違います。

同じ名前でも、薬局のものは「医薬品」としての厳しい基準をクリアしており、有効成分の含有量が保証されています。病気を治す目的であれば、やはり薬局のものをおすすめします。


まとめ:漢方は、もっと身近で自由なもの

「漢方薬局は敷居が高い」と思われがちですが、実は皆さんが毎日キッチンで触れているものと、同じものを扱っている場所です。

  • カレーの匂いに誘われて。
  • 「これって何に効くスパイス?」と聞きに。

そんな気軽な気持ちで、お近くの漢方薬局の扉を開けてみてください。

前原先生や竹部先生のような専門家が、「今日の夕飯、これを入れると元気になるよ」なんてアドバイスをくれるかもしれません。


記事監修者 漢方薬局 太陽堂 漢方薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年 学術発表

祖父が沖縄で開業医をしていた影響もあって、薬に触れる仕事がしたいと「薬学」の道へ。

6 年間調剤薬局に勤めていましたがライフスタイルや食生活が変化する現代において、調剤(病院のお薬)だけで病気を治していく事に限界を感じ、2017年漢方薬局 太陽堂に入局。

その中で一人一人の体質に合わせて病気を改善していく漢方に出会い、その道に進み、今に至る。

記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出

2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。

・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」

という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。

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