はじめに:「天然=安全」という思い込み
漢方薬局に来られるお客様から、よくこんな言葉を耳にします。
「病院の薬は怖いけど、漢方なら草の根っこだし、副作用はないですよね?」
残念ながら、答えはNOです。
自然界には、体に良い植物もあれば、トリカブトのように毒になる植物もあります。
「効果(ベネフィット)」がある以上、必ず「副作用(リスク)」の可能性も存在します。
今回は、安心して漢方を生活に取り入れるために、あえてネガティブな「副作用」の話と、それと間違えやすい「好転反応(こうてんはんのう)」について、包み隠さずお話しします。
1. 漢方薬にも副作用はあります
「漢方の副作用」の多くは、薬そのものの毒性というよりは、「体質に合っていない(ミスマッチ)」が原因で起こります。
代表的な例をいくつか挙げてみましょう。
① 甘草(かんぞう)による「むくみ」
「甘草」は、漢方薬の7割に含まれるほどポピュラーな生薬ですが、量を摂りすぎると、体からカリウムが失われ、むくみや血圧上昇を引き起こすことがあります(偽アルドステロン症)。
現在食品の添加物の中に「甘草」が多く含まれてしまっています。
その為、必然的に「甘草」の摂取量は多くなってしまっているというのが現実的な所です…
※質の良い甘草や処理した甘草(炙甘草)であれば副作用はおこりにくいです。
② 麻黄(まおう)による「ドキドキ・不眠」
葛根湯などに入っている「麻黄」は、交感神経を刺激して体を温める強力な生薬です。
体力がない方や、胃腸が弱い方が飲むと、動悸がしたり、胃がムカムカしたり、眠れなくなったりすることがあります。
※こちらも甘草と同様に質の良い麻黄や処理した麻黄(天日干し済み)であれば副作用はおこりにくいです。
③ 大黄(だいおう)による「腹痛・下痢」
便秘薬によく使われる「大黄」は、溜まったものを出す力が強い生薬です。
量が多すぎると、ひどい腹痛や下痢を起こすことがあります。
これらは全て、自分ひとりで薬を選ぶと、こうした「ミスマッチ」が起きやすくなります。
2. 本格的な「煎じ薬」なら、副作用は極めて少ない
副作用の話をしましたが、実は私たちのような専門薬局が扱う、きちんとした品質の「生薬(煎じ薬)」を使った場合、副作用が起こることは極めて稀です。
なぜ、市販薬やエキス剤に比べて安全だと言えるのか? その理由は2つあります。
理由① 「ミスマッチ」が起きにくいから
副作用の最大の原因は「薬の選び間違い」です。
ドラッグストアや病院では、病名だけで薬が決まることが多いため、「体力がないのに強い薬が出される」といったミスマッチが起こりえます。
しかし、専門薬局では時間をかけてあなたの体質を見極めます。
「この人はこの様な体質だから、〇〇が入っていないこちらの処方にしよう」といったプロの選定眼(スクリーニング)があるため、リスクのある薬を回避できるのです。
理由② 自然な形だから「体に馴染む」
エキス剤(粉薬)は、製造過程で加工され、濃縮されています。人によってはその凝縮された成分が胃の負担になることがあります。
一方、生薬をグツグツ煮出す「煎じ薬」は、いわば「素材そのままのスープ」です。
余計な添加物が入っておらず、成分が自然な形で溶け込んでいるため、体が無理なく吸収でき、胃腸への当たりも非常に柔らかいのです。
「副作用が怖い」という繊細な体質の方こそ、既製品ではなく、質の良い生薬を使った煎じ薬をおすすめします。
3. 副作用じゃないかも?「好転反応(瞑眩)」とは
一方で、漢方には西洋医学にはない不思議な現象があります。
それが「瞑眩(めんげん)」、いわゆる好転反応です。
これは、体が良くなる過程で、一時的に毒出し(デトックス)のような反応が出ることを指します。
「薬が効いている証拠」なのですが、知らないと「副作用が出た!」と驚いて飲むのをやめてしまう方が多く、非常にもったいないのです。

よくある好転反応の例
- 皮膚症状: アトピーなどの治療中に、一时的に湿疹がひどくなる(体内の毒を外に出そうとする力)。
- 下痢・軟便: 宿便や老廃物を排泄しようとして、お腹が緩くなる。
- だるさ・眠気: 緊張していた体が緩み、急激にリラックスモードに入ることで起きる。
「副作用」と「好転反応」の見分け方
これはプロでも判断が難しいところですが、目安としては以下の通りです。
| 特徴 | 副作用(NGサイン) | 好転反応(OKサイン) |
| 時期 | 飲んですぐ、または飲み続けてしばらくして | 飲み始めの数日〜1週間以内が多い |
| 感覚 | 不快感、ただ辛いだけ | 辛いけれど、出し切った後にスッキリ感がある |
| 対処 | すぐに中止する | 量を減らして様子を見る or 続ける |
注意
自己判断は危険です。何か変だなと思ったら、すぐに薬剤師や登録販売者に連絡してください。
「それは効いている証拠ですよ」と言われるか、「すぐにやめてください」と言われるか、プロの判断を仰ぎましょう。

4. 【Q&A】副作用について、よくある質問
病院の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
基本的には大丈夫ですが、必ずお伝えください。
多くの漢方薬は西洋薬と併用可能ですが、注意が必要なケースもあります。
例えば、甘草(かんぞう)などの成分が重なってしまうと、副作用のリスクが上がります。お薬手帳を持参いただくか、服用中の薬をすべて教えていただければ、プロが飲み合わせを確認しますのでご安心ください。
植物アレルギーがあるのですが、飲めますか?
特定の植物にアレルギーがある場合は避けます。
漢方は植物由来ですので、例えば「キク科アレルギー」の方がキク科の生薬を飲むと、アレルギー反応が出ることがあります。
事前にアレルギー情報をお伝えいただければ、その植物を含まない処方を選ぶことができます。
漢方薬をずっと飲み続けて、体に蓄積しませんか?
「飲み続けるべき薬」と「短期決戦の薬」があります。
漢方には、体質改善のために長く飲む「補う薬」と、風邪薬のように症状がある時だけ飲む「出す薬」があります。
「出す薬」を漫然と飲み続けると負担になることがありますが、専門薬局では定期的なカウンセリングで「もうこの薬は卒業でいいね」「次はこっちに変えよう」と調整しますので、不要な薬が蓄積することはありません。
まとめ:リスクを避ける唯一の方法は「プロを頼ること」
漢方は、正しく使えば体に優しい魔法のような薬ですが、使い方を間違えればリスクもあります。
- あなたの体質に合わない薬を避けること。
- 副作用の少ない、良質な生薬を選ぶこと。
- 起きた症状が「副作用」か「好転反応」かを見極めること。
これらを自分一人で行うのは不可能です。
だからこそ、「かかりつけの専門家」を持つのです。
もし過去に「漢方を飲んで具合が悪くなった」という経験がある方も、それは漢方が合わなかったのではなく、「その時の薬と、あなたの相性が悪かっただけ」かもしれません。
ぜひもう一度、私たちにご相談ください。




記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)

実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬の処方はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出
2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。
・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」
という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。

