はじめに:春、なんだか「息苦しさ」を感じていませんか?
世間は桜が咲き、新生活に向けて明るいムードに包まれる春。
でも、その裏で漢方薬局にはこんなご相談が急増します。
「理由もないのにイライラして、家族にあたってしまう」
「夜、頭が冴えて眠れない」
「新しい環境のせいか、ため息ばかり出る」
もしあなたも同じように感じているなら、どうか自分を責めないでください。それはあなたが弱いからでも、性格のせいでもありません。
漢方の世界では、春は一年で最も「心と体のバランスが乱れやすい季節」と考えられているのです。
今回は、当ポータルサイト『漢方百名店』に加盟する先生の中から、特にメンタルケアや自律神経の相談を得意とするお二人に、春の不調の正体と対策を伺いました。
- 解説:石田 友里 先生(漢方薬局 くら石)
- 解説:竹部 晃之 先生(有・いわい薬局)
なぜ春は心が乱れる?「木の芽時」と「肝(かん)」の関係
昔から、春先の体調不良は「木の芽時(このめどき)の不調」と呼ばれてきました。
なぜ春にメンタルが揺らぐのか、いわい薬局の竹部先生に漢方の視点から解説していただきます。
竹部先生(いわい薬局)の解説;「冬の間に縮こまっていたエネルギーが、一気に爆発する季節だからです」
自然界を思い浮かべてみてください。春は、冬の間じっと耐えていた草木が一斉に芽吹き、上へ上へと伸びていく季節ですよね。
人間の体も自然の一部です。春になると、体の中のエネルギー(気)が急激に体の上のほう(頭)に向かって昇り始めます。
このエネルギーをコントロールしているのが、五臓の「肝(かん)」、つまり西洋医学でいう「自律神経」です。
春はこの「肝」がフル稼働するため、オーバーヒート(肝の昂り)を起こしやすくなります。気が頭に昇りっぱなしになることで、イライラ、頭痛、めまい、不眠といった「上半身のトラブル」がドッと押し寄せるのです。
▼ 春の「肝の疲れ」チェックリスト
- ささいなことでカッとなる、または涙が出る
- 目が充血する、疲れやすい
- 肩や首の筋肉がパンパンに張る
- 寝付きが悪い、途中で何度も目が覚める
- 春一番など、風が強い日に体調を崩す
【専門家アドバイス】春の嵐を乗りこなす「食事」と「心」
では、このオーバーヒートした「肝」を鎮め、春のざわつきを穏やかにするにはどうすれば良いのでしょうか?
お二人の先生に、今日からできる養生法(セルフケア)を教えてもらいました。
竹部流:春のイライラは「酸味と香り」で散らす!
食事でおすすめなのは、『酸味』と『香り』です。
漢方では、酸っぱいものは出すぎたエネルギーを引き締め、香りの良いものは滞った気を流してくれると考えます。
朝食に柑橘類のフルーツ(レモンやグレープフルーツ)を食べたり、料理にお酢を使ったりしてみてください。また、セロリ、三つ葉、シソ、ミントなど香りの強い野菜は、イライラをスーッと静めてくれる春の特効薬ですよ
石田流:「頑張らない」を頑張る、春のストレッチ
春は『新しいことを始めなきゃ!』と無意識にプレッシャーを感じる季節です。
でも、心がざわつく時は、あえて『手放す(休む)』ことを意識してください。
体が緊張していると気は巡りません。漢方で『肝』の通り道は、体の側面(脇腹)にあるとされています。
深呼吸をしながら、両手を上にグッと伸ばして、脇腹を気持ちよく伸ばすストレッチをしてみてください。ため息をつくのも、立派なデトックス(気の巡りを良くする行為)ですから、我慢せずに『はぁ〜』と息を吐き出してくださいね。

春の不調に選ばれる、代表的な漢方薬
もちろん、セルフケアだけで追いつかない時は漢方薬の出番です。
薬局では、その人の体質(ベース)に合わせて、春の不調に以下のような漢方を使い分けます。
| 漢方薬の例 | どんな人・どんな症状に向いている? |
| 抑肝散(よくかんさん) | 神経が高ぶり、怒りっぽくなっている人。歯ぎしりや不眠がある人に。 |
| 加味逍遙散(かみしょうようさん) | イライラと落ち込みが交互に来る人。肩こりや、のぼせ(ホットフラッシュ)がある人に。 |
| 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) | 気の発散に優れている漢方薬。気の発散が大事な春に、効果が高いです。 |
※これらは一例です。「イライラするから抑肝散」と自己判断せず、専門家に体質を見極めてもらうことが大切です。
まとめ:あなたの「春のゆらぎ」を受け止める場所を探そう
春は、心も体も「衣替え」の季節。
うまく適応できなくてざわつくのは、あなたの体が一生懸命、季節の変化に合わせてチューニングを行っている証拠です。
「病院に行くほどではないけれど、毎日なんだか辛い」
「誰かにこのモヤモヤを聞いてほしい」
そんな時は、ぜひお近くの漢方薬局を頼ってください。
当サイト『漢方百名店』には、竹部先生や石田先生のように、あなたの心のこわばりを優しく解きほぐしてくれる専門家がたくさん揃っています。
本格的な夏が来る前に、漢方薬局で心と体の「春のチューニング」を済ませておきませんか?



記事監修者 (有)いわい薬局 代表薬剤師 竹部 晃之(たけべ てるゆき)

実績:国際中医専門員 / 全国実力薬局100選 7年連続選出
2005年に薬剤師となり、東京の漢方薬局で約10年間の臨床経験を積む中で、心と体の繋がりの深さを痛感。
・「もしも、不調に悩むお客様が自分の家族だったら。」
・「ただ薬を渡すだけでなく、心の奥にある不安まで受け止めたい。」
という信念のもと、創業45年を超える『いわい薬局』を継承。
現在は「メンタル・皮膚トラブル・子宝」などの相談を中心に、初回は1時間以上かけてじっくり話を聴く「カウンセリング重視」の漢方相談を行っています。
記事監修者 漢方薬局 くら石 薬局長 石田 友里(いしだ ゆり)

実績:国際中医専門員A級 / 調布漢方特区プロジェクト 薬膳講師 / 伝統漢方研究会 学術論文発表(2021年・2024年)
合気道歴25年で培った「心を整える(マインドフルネス)」視点を活かし、不妊症や更年期障害、不安神経症など、心身のバランスに関わる繊細な悩みを得意とする。
・「体だけでなく、その人の人生そのものを応援したい。」
・「カウンセリングのように、話すだけで元気になってほしい。」
という想いで、生活背景までじっくり聞き取る相談スタイルを確立。
時には人生相談のようになる深い対話を通じて、患者さんが笑顔で自分らしい人生を歩めるよう温かくサポートしています。











